毛色に引き寄せられて迎えた2匹の愛猫 先代の猫の分までいとおしくて
先日のこと。愛猫のキジトラ男子はっぴー(3歳)が、近寄ってきて鳴きました。
なにか言いたげに
黒猫イヌオ(17歳)と違い、はっぴーは(ウンチハイの時以外)ほぼ鳴かないのですが、その日は珍しく、繰り返しニャーニャー!私をじっと見つめて何か言いたげです。
「なあに?まじまじみると、本当に君はきれいなキジ柄だ」
そう言って見つめ返すうちに、先代のキジトラ女子、ルナを思いだしました。
ああ!そうだったよ、今日は……。
その日はルナの、6度目の命日だったのです。
朝からばたばた忙しくしていたのですが、はっぴーが、「忘れてませんかぁ?」と言ってくれた気がしました。
弾けていたキジトラ女子
ルナは、自分で保護した野良の子でした。当時、実家にはベガというキジトラがいて、その毛色になじみと親近感があり、自分で飼うつもりでした。
ところが保護後、病院に連れていくと聴覚などの障害がわかりました。
「脳にも問題があり、1年くらいしか生きられないかもしれない。介護も必要になるかもしれないけど覚悟はある?」
そう獣医さんに言われ、覚悟を決めて飼い始めたのです。でも心配をよそに、ルナはたくましく、すくすく育ちました。
ルナは、まるで足りない機能を補うように運動能力が優れ、何でも踏み台にして勢いよく高い所や離れた所に飛ぶ。そのはずみで踏み台が倒れてガラス戸が割れたり、カップに指をかけてぶん回したり、じゃじゃ馬というかヤンチャというか……。
“いたずらっぷり”が弾けていました。
耳が悪いので急に体に触ると驚きましたが、とにかく何にでも興味を持つ。
キジトラは原種のリビアヤマネコに似て“野性の本能”が色濃く残り、食いしん坊でもある、といわれます。ルナは確かに活動的でよく食べました(はっぴーもそうですが)。
当時一緒に住んでいた黒猫のクロは繊細で、私にしか心を許しませんでした。でもルナは病院も来客もお出かけも平気。お風呂に入ったり、服を着たりするのもへいちゃらでした。
可愛い顔がどんどん変わって
何といっても可愛い顔をしていて、「絵に描いたみたい」とか「キュート」と友だちにいわれるのもうれしく、デジカメで写真を撮りまくったものでした。
ルナは保護時の「余命1年宣告」がうそのように、“ずーっと元気”でいてくれました。ところが、10歳を超えてから、体調をがたがた崩しました。
13歳の頃に副鼻腔(ふくびくう)炎がひどくなり目が腫れ、14歳の頃に緑内障で見えづらくなり、15歳の頃には、口腔(こうくう)内にがんが見つかりました。
がんの発覚後、「(何もしなければ)あと3カ月」と宣告されました。先生と相談し、全身の検査を経て、がん摘出のため“下顎切除”という大きなオペに踏み切りました。
「顔が変わるのはつらいと思うけど、大丈夫?介助も必要になります」
「大丈夫です、どんな姿でもルナちゃんですから」
そんな先生とのやりとりを思いだします。
あごを半分切除したあと、本当にルナの顔は変わりました。顔全体が小さくなり、口が閉まらずペコちゃんのように舌は出しっぱなし。副鼻腔炎の影響でまぶたも腫れて……。
自力での食事が難しいので、朝晩の食事は直接、口にいれてあげました。すると、ルナはすごい勢いでぱくぱく食べてくれました。
もともと耳が悪かったのに、目が見えなくなり、口まで不自由になり、大変な三重苦ですが、生命力は見上げたものでした。日を浴びるのが好きで、いつも窓辺にいたっけなあ。
ルナはすごくがんばり、余命の3カ月を超えて、1年半くらい生きました。
じつは、ルナの命日は、「バレンタインデー」なのです。
なぜその日?と思ったこともありました。でも日が経つにつれ、皆が愛を告げる日、私はずっと一緒にいてくれた可愛いルナを、空に贈った(解き放した)と思うようになりました。
ルナが旅立った後、(目も悪くなり場所が変わると不自由だろうと)17年ずっと住み続けた家から、引っ越しをしました。
同じ色の先代猫と今の猫
前の猫を亡くした後、思い出すのがつらいから、違う毛色や模様を迎えたという話を聞いたことがあります。
うちでは、黒猫のクロがいなくなった後に黒猫イヌオを迎え、キジトラのルナがいなくなった後に、キジトラのはっぴーを迎えました。
イヌオは、ご縁のあった(保護活動等をする)佐良直美さんに「クロがいなくなってさみしい」と話したところ、「黒猫の子がいますよ」と紹介して下さいました。一方、はっぴーは、仕事で出向いた譲渡会で会い、なんとも“懐かしい気持ち”になって一緒に暮らしたくなったのでした。
毛色に引き寄せられたのです。
この黒猫とキジトラの組み合わせ、ふとした時に、デジャブーを起こします。同じポーズをしたり、並んで外を見たり。そうすると、“ダブル”でいとしくなります。
目にしている2匹でなく、先代の子とあわせてまるで4匹を抱きしめているように……。
今になって思えば、ルナの晩年の闘病は大変で、自分も必死でした(少し記憶がとんでいるほど)。がんの手術後の写真はフォルダーにしまったまま、ほとんど見ることができません。ルナも、“元気な時の顔”を思い出してほしいと思うので、飾る写真も病気前のものです。
保護した日、月がきれいだったから名前が「ルナ(ラテン語の月)」。きっとルナは、あの好奇心と運動能力で、空を駆け回っていることでしょう。
「来年のバレンタインは、誰かにあげるチョコより先に、ルナのこと思い出すからね」
空を見上げてルナのことを思ったら、あら不思議……。はっぴーがぴたっと鳴くのをやめたのでした。
【関連記事】愛猫の“へそ天”を振り返る 大胆な「猫の開き」や待ってましたのバンザイも
4歳になった愛猫に贈った爪研ぎ 外で暮らす猫たちの幸せを願った商品だった
忘れっぽくなった母と「猫クイズ」 少しでも長く母と愛猫の時間が続くことを願う
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。