『ボブという名の猫2』公開前に見ておきたい 猫とミュージシャンの心に染みる名作
世界中で愛された猫とミュージシャンの実話を映画化した『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』(16)の続編の邦題が、『ボブという名の猫2 幸せのギフト』(2021年公開予定)となったようです。その公開が待たれるなか、もう1本、ミュージシャンと同じ茶トラの猫をフィーチャーした少しビターな映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(13)をご紹介します。
静かに心に染み渡る名作
『ボブという名の猫』では、ホームレスのストリート・ミュージシャンと猫との絶妙な名コンビにほっこりした方も多いはず。
ボブたちの物語が“陽”の映画だとすれば、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』は、さながら“陰”の映画といったところでしょうか。ある意味、人生におけるやるせない現実を生々しく描いた作品でもあります。
本作が日本で公開されたのは2014年ですが、閉塞(へいそく)感に満ちたコロナ禍で見直してみると、また違うシンパシーを感じてしまいそう。
こちらも実在のミュージシャンをモデルにした作品ですし、主人公が奏でるメローな歌、実に無防備な猫のかわいさという点は、『ボブという名の猫』シリーズとも共通しますが、本作はどちらかというと、静かに心に染み渡る1作となっています。
自由気ままな猫と、夢を追いかけるアーティスト
舞台は1960年代のニューヨーク。鳴かず飛ばずの若手フォークシンガー(オスカー・アイザック)が、友人たちの家を渡り歩くという1週間を、時にユーモラスに、時にシニカルに描いていきます。そんな彼のそばにいるのが、茶トラの猫です。
実在のフォークシンガー、デイブ・ヴァン・ロンクの物語を下敷きにしているので、美談をテコ入れすることなく、夢を追いかけるアーティストの苦悩と葛藤を浮き彫りにしていきます。そのぶん、常に自由気ままに家を出入りする猫との対比が印象深いかと。
茶トラの猫がオスカーに値するほどの熱演を見せる
メガホンをとったのは『ノーカントリー』(07)で米アカデミー賞作品賞や監督賞など計4部門を受賞した名匠コーエン兄弟。サスペンスやフィルム・ノワールものを得意としたコーエン兄弟ですが、本作でも何げない日常における心のざわめきを丁寧に紡いでいます。
アカデミー賞の常連監督であるコーエン兄弟は、常にキャストから自然体の演技を引き出し、たくさんのオスカーへと導いてきました。本作でも「スター・ウォーズ」シリーズで知られるオスカー・アイザックの繊細な演技と熱唱が実に見事。また、どうやらコーエン兄弟は猫の演出も同じくらい達者なことが判明しました。
茶トラの猫が実にフォトジェニックで、実に生き生きしています。猫がひざに抱かれてリラックスする姿や、軽やかに家から飛び出す様はもちろん、車に置き去りにされる時に見せる非常に寂しげな表情は、まさにオスカーに値する熱演ではないかと。
第66回カンヌ国際映画祭でも、コンペティション部門で上映され、審査員特別グランプリを獲得した本作。映画ファンだけではなく、音楽や猫好きの方にも好評を博しましたので、ぜひこの機会にご覧ください。
インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌
監督・脚本:ジョエル・コーエン イーサン・コーエン 出演:オスカー・アイザック キャリー・マリガン ジョン・グッドマン ギャレット・ヘドランド ジャスティン・ティンバーレイクほか
『ボブという名の猫2 幸せのギフト』は、2021年 新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー。
監督:チャールズ・マーティン・スミス 出演:ルーク・トレッダウェイ クリスティーナ・トンテリ=ヤング ファルダット・シャーマ アンナ・ウィルソン=ジョーンズほか
© 2020 A Gift From Bob Production Ltd. All Rights Reserved.
公式サイト
ボブという名の猫 幸せのハイタッチ
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発売:コムストック・グループ 販売:ポニーキャニオン
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