迷える愛犬と飼い主の救世主 「UG DOGS」激アツ店長を育てた2匹の“息子”達
愛犬との関係に悩む飼い主たちが全国からカウンセリングに訪れるUG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)。激アツ店長こと高橋信行さんって一体どんな人? なぜ犬たちの気持ちがわかり、多くの飼い主たちから信頼されているの? 高橋さんの胸アツ半生と、店長を支えた「息子たち」の絆の物語。
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。「プライドを持って『プロのペットショップ店員』でありたい!」
「プロとして恥ずかしくない仕事がしたい」
「動物園かムツゴロウ王国で働く!」
それが、物心ついたころからの高橋店長の「夢」だった。
「動物園が大好きで、インスタントのコンパクトカメラでライオンや象を撮ることに夢中になっていました」
東京の動物専門学校へ進むことを決めたころには、世界のさまざまな犬種が紹介されている本を買っては隅から隅まで読みあさった。「ほぼ丸暗記して、立派な犬マニア、犬オタクになっていました」と店長は笑う。
上京し学校に通うようになってからも、さまざまな犬の本を読みふけった。「なぜ人は犬を飼うんだろう? かわいがられる犬がいる一方で、なぜ捨てられる犬がいるんだろう? と考えるようになりました」。
在学中から学校の母体であるペットショップでアルバイトを始めたこともあり、勉強のためとほかのショップものぞいてみたところ、愕然としたという。
「学生時代、友達に誘われ世界的なファッションブランドのお店に行ったことがあるのですが、そのブランドの販売員は商品の知識も扱いも素晴らしく、これがプロなのか! と感動しました。ところが、ペットショップで売られている犬や猫も数万円、数十万円と決して安くないのに、知識を伝えることよりも売ることを優先していることに『それでいいのか⁉』と疑問を持ちました。
犬種にはそれぞれの特性がある。その知識もなく理解もせず、正しい情報を伝えることなく売ってしまうと、飼い始めてから『こんなはずじゃなかった』というミスマッチが生じてしまう。最悪の場合、それで手放されてしまう子犬もいます」
まだ駆け出しのバイト店員ではあったが、高橋青年はこう誓ったという。
「自分はプロとして恥ずかしくない仕事をしたい」
吐き捨てられたひと言に、激アツスイッチON
その後、アルバイト先の店長が独立。その店で働くように。3年ほど経ち自分でも犬を育ててみたいと思っていたとき、大型のペットショップで一匹のウェルシュコーギーに出会う。
店内に設置したケージに子犬が3匹入れられていたが、ほかの犬が無邪気に遊んでいるのに、そのコーギーは仲間に入ることなく隅っこでじっとしていた。「ただ、ものすごく強い目をしていた」と店長は振り返る。
その目が忘れられず、1カ月悩んで再び店を訪れると、コーギーは売れ残っていた。よく見れば皮膚病があり足の関節はグラグラ。栄養状態もよくない。人に愛敬を振りまいたりもせず、あまり子犬らしくない。
その様子に別の客がこう吐き捨てた。「こんな犬、売れないわよ」。その言葉に店長の激アツスイッチが入る。
「この犬、オレが買います! 気づいたら店員にそう言い放っていました。勝手にレッテルを貼られているのがなんだか悔しかった」
コーギーの子犬は「ジャック」と名付けた。こうして始まった店長とジャックの親子生活。しかし、働き始めてまだ数年で収入も少なく、暮らしは楽ではなかった。
「自分もひもじい思いをする中、飼いきれなかったらどうしようといつも不安だった」。ジャックはコーギーらしい賢く強い犬だったので、きちんとしつけなければというプレッシャーもあった。「正直、1歳を迎えるまではしんどかった。楽しむ余裕がありませんでした」と店長は当時に思いを巡らす。
しかし、お金がない分、時間は有り余るほどあった。だから散歩ばかりした。2時間、3時間とただただ歩きまくる日も。結果として、それがジャックの有り余るエネルギーを解放し、リードを通して信頼関係を築いていったという。
「トレーニングについてはもちろん、フードのことなども一から勉強しました。自分の責任で飼ったのだからちゃんとやらないとという思いが強かった。それがショップ店員としての成長につながったと思います。ジャックはいつも僕のそばにいてくれる心強い相棒であり、いろんなことを教えてくれる先生でもあった」
子犬が幸せになれるかまで見極めるのがプロ
その後、埼玉県のペットショップに転職。その店ではブリーダーから直接引き受けた子犬を販売しており、チワワやダックスフントが多かったという。「同じ犬種の子犬をたくさん見たことで、犬種による性質を学べたのと同時に、同じ犬種でもそれぞれ性格が違うことも実感できた」と店長。
「ほしい」という客にそのまま売ることはなく、客の性格や家族構成を聞いた上で子犬との相性を考え、合わないと判断した場合は「売れない」と断ることもあったという。
「十数年一緒に暮らすわけだから、相性はとても大切。犬に詳しいことはもちろん、家族として幸せに暮らしていけるかまでを見て売ることがプロのショップ店員の仕事だと考えるようになりました。それは今も変わらない」
さらに、多くのペットショップやブリーダーでは生後2カ月ほどで売ってしまうが、店長は犬同士のふれあいを通して犬のルールを学ぶ「社会化」を重要視し、社会化をした上で受け渡すことにこだわった。
「売る側の立場で言えば、子犬らしいかわいい時期が一番売りやすい。でも、子犬の時間は短く取り戻せない。犬の一生をも左右するこの時間を大切にしたかった」
天真爛漫な“次男”犬「ボルドー」にメロメロ
このころ、高橋店長は「次男」を迎えた。当時の顧客の家で生まれたフレンチブルドッグ。ブリーダーに高額で引き取ってもらえるはずだったが、その約束が反故になったので引き取って、と頼まれたのだ。「ブリーダーとの一連のやりとりには納得がいかなかったものの、子犬に罪はない。フレンチブルドッグに興味もあり、一匹はうちの子にしようと決めたのです」
フレブルの子犬は「ボルドー」と命名。当初、飼い主と離れると吠えたりする「分離不安」にはかなり悩まされた。
「ジャックとの散歩から帰ってきたら、ご近所さんから『お宅からすごい声が聞こえてるよ』と言われ……。それからはブヒブヒキャーキャー騒ぐ『子豚』を小脇に抱えてお散歩に出るように(笑)」
ジャック兄貴のおかげで分離不安も解消したボルドーは、平和主義で天真爛漫。天使のようにピュアでとにかく優しい男の子。鼻ぺちゃのブサカワなルックスもたまらなく愛おしいボルドーに、店長はメロメロに。愛犬との向き合い方も変わった。
「ジャックに対しては責任感もあり支配的に接し、それがうまくいったことでトレーニングの腕も磨くことができた。そういう経緯もあって、当時の僕は指示を聞かない犬を見下すようなところがあった。痛いヤツでした。それがボルドーと暮らし始め、わが子がかわいくて仕方ない、ただの愛犬家になっていきました」
お散歩についても見直すきっかけに。
「ジャックは常に僕のことを見て指示を待ち、ペースを合わせてくれた。一方ボルドーは前だけを見て、心から楽しそうにルンルン歩く。その様子に、そうか、お散歩は楽しんでもいいじゃん! と思うようになりました」
店長は続ける。
お散歩が上手にできないというのは、UGに来る子犬のお悩みベスト3に入るという。「エネルギーが発散できていない、怖がっているなど、子犬によって理由が違うので、それぞれに合わせてトレーニングしていきますが、最終的には飼い主さんと犬が一緒に楽しく歩けるようになることが目標。今思えば、お散歩の大切さをジャックが、さらにお散歩を楽しむことの喜びはボルドーが教えてくれたのです」
埼玉のショップでは店長に。忙しくも充実した日々がすぎていった。しかし、あの未曾有の出来事が、高橋店長に新しい一歩を踏み出させる。
(後編に続く)
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。
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