母猫に見放された未熟児の子猫 手厚い看護と自身の生命力で成長、今では“破壊魔”に

 キジトラ猫のSUN(雌)は、50gの超未熟児で生まれ、兄妹猫を亡くした。小さく弱々しい姿に母猫からも見放されたSUNを救ったのは、飼い主となる女性の献身的な看護と、SUN自身の強い生命力だった。

(末尾に写真特集があります)

痩せた野良猫が生んだ未熟児

「SUN(雌)との出会いは今年の初夏。姉が通勤中に出会った野良猫を気にかけたのがきっかけでした」。そう話すのは、都内で両親、愛犬のもこ(チワプー・雄)と暮らすりーりーさん。

 2020年6月、りーりーさんの姉は、通勤路にうずくまる痩せた野良猫に出会った。気にしつつも一度は通り過ぎたが、猫は帰り道も、次の日の朝も同じ場所にうずくまっている。「このままでは死んでしまうのでは?」と心配になった姉が猫を保護して動物病院に連れて行くと、妊娠が発覚。それから数日後、猫はりーりーさんの姉の自宅で子猫を生んだ。

未熟児で産まれた子猫
未熟児で生まれたSUNは、通常の子猫の半分ほどの50gしかなかった(りーりーさん提供)

「早産だったのか、生まれた子猫は通常の100g前後よりも半分ほど小さな50gの超未熟児。まるでハムスターのような小ささで、4匹生まれたうちの3匹はすぐに亡くなってしまいました。母猫は、生き残った1匹を一度は口に加えて運ぼうとしましたが、生命力を見限ってしまったのか、すぐに子猫を離して自分の毛づくろいをはじめた。子猫は育児放棄されてしまったんです」

強い生命力で生き延びたSUN

 母猫の初乳を口にできなかった子猫は、どんどん衰弱して行く。一人暮らしのため、つきっきりで子猫をみることができない姉は、実家で両親と暮らすりーりーさんを呼び、生まれて間もない子猫を託した。

「流れで引き取ったものの、赤ちゃん猫のお世話なんてはじめて。まして50gの超未熟児では医療にもかけられませんでした。なんとか生き延びさせなくてはと、ネットでお世話の方法を調べて、改めて大変さを知ったんです」
 生まれたての子猫は、3時間おきにミルクを与えなくてはいけない。りーりーさんは、母親と交代で昼夜を問わずに子猫に授乳した。あまりの弱々しさに、目を離すたびに「死んでしまうのでは」と落ち着かず、生きているのを確認するたび、ほっとしたという。

ミルクを飲む子猫
ネットや病院で子猫の世話の方法を調べ、母親と交代でつきっきりで育てた(りーりーさん提供)

 りーりーさんたちの必死の看護のかいあって、子猫は最初の1カ月をなんとか生き延びた。しかし、ネットでSUNと似た未熟児の事例を調べていたりーりーさんは、その後も気を抜けなかったという。

「未熟児で生まれ、初乳も飲めなかった子猫が2カ月まで順調に育つケースはほとんど見つかりませんでした。だから、なんの障害も残らず2カ月まで生き延びられた時は、本当に生命力の強い子だと感心したんです」

 りーりーさんは、SUNが2度のワクチン接種を終えた時、ようやく命の危機を乗り越えたと感じた。

元気に飛び回る姿に感慨

 りーりーさんと姉は、子猫が力強く育っていけるようにと、アニメ『もののけ姫』の野生的でたくましいヒロインの名前から、「SUN(サン)」と名付けた。現在SUNは4カ月。未熟児で生まれたのがうそのようにやんちゃざかりだ。

「棚の上に乗っては、インテリアをかたっぱしから落としていく破壊魔です(笑)猫に害のない観葉植物を育てていましたが、それらも食べてしまうので手の届く場所に置けなくなりました」

棚の上の子猫
インテリアをかんだり、棚の上に飛び乗ってものを落とすというやんちゃなSUN(りーりーさん提供)

 もともと動物は好きだというりーりーさんだが、SUNを迎えるまでは完全な“犬派”だったという。「生きているうちに猫を飼うことはないと思っていましたね(笑)SUNもはじめは、『離乳したら姉のところに返そう』と思っていたのですが、自分の手の中で成長を感じていると手放せなくなり、親を説得して私が飼うことになりました。猫を飼うのは初めてなので予想外なことばかりだけど、ぴょんぴょん跳びはねてやんちゃに遊んでいる姿を見ると、猫の可愛さを知ると同時に、こんなに元気になってくれて……という感慨があります」

お兄ちゃん犬と仲良しに

 りーりーさんは、自身のインスタグラムで、先住犬のもこ(チワプー・雄)とSUNとの日常をアップしている。

「SUNを引き取った当時は、つきっきりで見てあげなければ死んでしまうような状況だったので、生後半年の子犬だったもこはひどくやきもちを焼きました。当時もこはトイレを練習中で、やっとペットシーツにすることを覚え始めたところだったのですが、私がSUNにミルクを与えていると、気を引きたくてところかまわずおしっこをするように。今振り返ると、未熟児のSUNと、もこのおしっこの後始末でてんてこまいの毎日でしたね」

 2匹は現在、兄妹のようにじゃれあったり、寄り添って眠るようになるほど打ち解けた。「2匹とも、成長して以前ほど手がかからなくなったのもあり、私も犬と猫との生活を手放しで楽しめるようになりました(笑)最近は、SUNがもこにぴったりとくっついて眠る姿を見るのが癒やしです」とりーりーさん。

くっつく犬と猫
兄妹げんかも激しいが、寝るときはくっついているというSUNともこ(りーりーさん提供)

「SUNが頑張って命の危機を乗り越えたから、今の生活がある。名前の通り、たくましい子に育ってくれました」。そう話すりーりーさんのひざで遊んで欲しそうにじゃれつくSUNの様子は、大好きな母猫に甘えているかのようだ。

 猫飼い界隈ではよく「猫は、家族になる人を選んでその人の前に現れる」という話がささやかれる。痩せた体で出産を乗り越えた母猫は、その後りーりさんの姉のもとで飼い猫としての人生をスタートさせた。SUNも、母猫のおなかの中で、りーりーさんの家族になることを決めていたのだろうか。


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原田さつき
広告制作会社でコピーライターとして勤務したのち、フリーランスライターに。SEO記事や取材記事、コピーライティング案件など幅広く活動。動物好きの家庭で育ち、これまで2匹の犬、5匹の猫と暮らした。1児と保護猫の母。猫のための家を建てるのが夢。

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