不器用な男女と白ネコに胸キュン ネコ好き監督が描く『パリのどこかで、あなたと』
今月ご紹介するネコオシの映画は、『スパニッシュ・アパートメント』(01)や『おかえり、ブルゴーニュへ』(17)などで、何げない日常のきらめきや揺らぎを実に生き生きと、そしてチャーミングに切りとってきたセドリック・クラピッシュ監督最新作『パリのどこかで、あなたと』です。
ネコ好きで有名な監督の新作映画
クラピッシュ監督といえば、本作と同じくパリが舞台のロマンチックコメディー『猫が行方不明』(96)でも、ネコ好きのハートを射止めました。今回はそこまでネコの登場シーンは多くありませんが、ここぞというところで、人間をとりこにするラブリーなシーンにうなります。
ちなみに『猫が行方不明』は黒ネコでしたが、今回はなんとも愛くるしい白ネコが登場します。
本作で描かれるのは、パリの隣り合うアパートメントで、ひとり暮らしをしている30歳のメラニーとレミーの物語。都会で暮らすアラサーならではの“独身男女あるある”のエピソードが非常にリアルで、大いに共感を呼びそうです。
演じているのは、クラピッシュ監督の『おかえりブルゴーニュへ』で姉弟役を演じていたアナ・ジラルドとフランソワ・シヴィルです。
メラニーは、がんの免疫治療の研究者で、大きなプロジェクトを任され、少しプレッシャーを感じているよう。私生活では、同棲していた元恋人と破局して以来、ただただ仕事に忙殺される日々を過ごしています。
一方、倉庫で働くレミーは、同僚がリストラされたなかで、自分だけが別の部署に異動されたことに罪悪感とストレスを抱えているようです。その影響からか、メラニーはいくら寝ても寝足りない過眠症に、レミーのほうは、逆に不眠症となってしまったため、2人はそれぞれセラピーに通い始めます。
ネコの前だとつい無防備に…
メラニーの孤独はSNSでは埋められず、マッチングアプリで一夜限りの恋を繰り返すも、まったく恋を進展させることができません。また、レミーも職場で出会った女性ジェナにアプローチするも、空回りしてばかり。そんななか、レミーは突如、白ネコをもらい受けることになりました。
半ば強引に白ネコを飼うことになったレミーですが、「チビちゃん」と呼ぶネコの可愛さにメロメロ状態に。白ネコを抱いた途端、自身の“鬱(うつ)”を吹っ飛ばすがごとく、満面の笑みを見せるレミー。クラビッシュ監督の手慣れた演出(ネコ使い)も功を奏し、ネコとじゃれ合うレミーの表情がたまりません。
また、ネコもかなりのやり手(!?)で、レミーの心をわしづかみ。その後、このネコは「ナゲット」というユニークな名前をつけられるのですが、その理由は映画を観てのお楽しみということで。
そして、このナゲットが、実はレミーとメラニーの橋渡しをする役目を果たすことに。ひょんなことから、レミーの家を飛び出したナゲットを見つけたメラニーが、自宅に招き入れ、レミーとおなじくネコの魅力にほだされてしまいます。
ちなみに、ナゲットがいなくなったあと、寂しさのあまり、ネコの動画を観て癒やされているレミーにも胸キュンです。
あんなに男女の恋愛につまずきまくっている2人が、ネコ1匹にはあそこまで無防備に、愛情を注げるのかと、あらためてびっくり。とはいえ、ネコ好きな方は、おそらく「そうだよね」とうなずくこと間違いなし。このネコは2人のかたくなな心をほぐし、ふれあいの大切さを教えてくれているような気がしました。
コロナ禍で大事なことに気づかされた
そのあと、メラニーとレニーは、それぞれに様々な出会いを経て、自分自身の過去と対抗しながら、勇気を出して人と向き合っていきます。セラピーの先生に言われた「君には生きる権利がある。幸せになる権利もある」という言葉もかみしめていくことに。
いまだに世界中がコロナ禍で、日本でも第3波が来ています。人と人の関係性が希薄になりがちな昨今ですが、本作での「人生には何だって起きる」「人に近寄ることを恐れないで」と言った台詞の一つひとつが非常に心に染みわたります。
ネコ好きな方はもちろん、今コロナ禍を生きている幅広い世代の人たちに観てほしい1作です。

- 『パリのどこかで、あなたと』は12月11日(金)より全国ロードショー
- 監督:セドリック・クラピッシュ 脚本:セドリック・クラピッシュ、サンティアゴ・アミゴレーナ
出演:アナ・ジラルド、フランソワ・シヴィル、シモン・アブカリアンほか
配給:シネメディア
©2019 / CE QUI ME MEUT MOTION PICTURE - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA
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