「強さは欠点じゃない」 暴れん坊パグ、世界を知り、強くて優しい“カッコいい男”に

 遊びたい一心から興奮が止まらず、家族に体当たりと噛みを炸裂していた月齢5カ月のパグのピグくん。UG DOGSアトラスタワー中目黒店(文中UG)で1週間の社会化お泊まりをすることに。その大暴れぶりに、高橋信行店長からある称号を授与され……。

 激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ!

「強さは欠点じゃない。正義にもなる!」

(前回のお話はこちら

(末尾に写真特集があります)

 UGの群れに放たれた途端、暴れまくるピグくん。ほかの犬たちを蹴散らす様子に、高橋店長は「群れをぶっ壊すクラッシャーが現れたな、と」と振り返る。

「でも、どっしりしていて存在に重みがある。自分を持ちすぎているので、お泊まりで現実を知ってもらおうと思いました」

 クラッシャーの称号をもらったピグくん。社会化お泊まりの間、同じくハイパーな子犬同士、強い先輩ワンコたちと激しく遊びまくった。

 店長とのお散歩も大ハッスル。カウンセリングのときにお母さんがリードを持つと、いつもの通りのロケットダッシュのジグザグ歩きだったが、店長に交代するとものの数分でまっすぐ歩けるように。

社会化お泊まり中に他の犬とお散歩に行く前のパグ「ピグくん」
仲間とのお散歩。ピグくんだけ顔がよく見えないのは、他の子のごはんを横取りしようとして店長の雷が落ち、いじけているからだとか(UG DOGS提供)

「ピグは興奮して目に入るものすべてに反応していた。なので前だけを見て歩こう!とリードを通して伝え、導きました。ピグのお母さんもそうでしたが、多くの飼い主さんは優しいのでどうしても犬に合わせてしまう。また、ピグは力も強いので女性のお母さんは引っ張られ、ピグのペースになっていたのです」と店長。そしてこう続ける。

「お散歩がうまくできない理由はいくつかあり、犬によって違います。僕がピグにした方法がすべてのお散歩が苦手な子に適しているわけではない。そこを見極める必要があります」

「遊ばなくていい」のアドバイスに驚き

 ピグくんは群れという犬社会を経験し、自分よりも強い犬がいることを知った。思い切り遊んで体力を発散し、お泊まり2日目には立ったままうたた寝するほどに。お散歩ではまっすぐ歩くことを学び、フセ待てでクールダウンとガマンも覚えた。1週間後お迎えに行ったお母さん、すっかり落ち着いたピグくんの姿に感動したという。

座ったままうたた寝するピグくん。かわいすぎます(UG DOGS提供)

 喜ぶお母さんに、しかし店長は釘をさす。「ピグは強い。このままで終わるはずがない。甘やかしたりルールを曖昧にしたりせず、エネルギーはお散歩でしっかり解放すること」。もう一つのアドバイス「遊ばなくていい」にお母さんは驚く。

「ネットなどには発散のためにたくさん遊んだ方がいいという情報が多かったので、意外でした。でも店長から『遊んで興奮させられて、それで怒られる。ピグは何も悪くないですよね?』と言われ、目からウロコが落ちました」

うたた寝するパグ「ピグくん」
社会化お泊まり最終日、お迎えに来たお母さんの腕の中でウトウト(UG DOGS提供)

他の飼い主の厳しい言葉に、心が折れた

 帰ってきてからはお散歩に力を入れる日々。お泊まり前は手が離せないときはケージに入れっぱなしだったが、リビングにも出せるように。意思疎通も少しずつできるようになった。

 家族からすればかなり落ち着いたが、それでもピグくんはピグくん。その強さを否定されるような出来事が続いた。地元のドッグランでピグくんが「追っかけっこしよう!」と駆け寄ると、相手の犬が怖がり、その飼い主から「こんな犬ドッグランに向いてない。一度噛まれなきゃわかんないわよ!」。お散歩の途中に仲良しのワンコとワンプロする様子を見た別の飼い主には「あの子は危険だから、うちの子とは絶対に遊ばせない」。

 ピグくんはハイパーだが、決して相手を傷つけたりはしない。お母さんは誰よりもそれをわかっていた。しかし、投げつけられた厳しい言葉に、頑張っていた心が、折れた。

「もっといい子に育てないと……。どんどん追い詰められてしまいました」

柴犬の友だちとパグ「ピグくん」
社会化お泊まり中に初めてできたガールフレンドの柴女子との2ショット(UG DOGS提供)

「ピグはいいヤツ。何があっても、オレは味方」

 社会化お泊まりから3カ月あまり。シャンプーでピグくんをUGに連れてきたお母さんの様子がおかしいことに気づいた高橋店長は、ことの顛末を聞き「喝!」。その日のInstagramに店長の思いが綴られている。

「ピグと誰を比べているのか?  パグはパグでしょう。このキャラクターだから面白いし、可愛いのです。(中略)誰に何を言われたのか知りませんが、飼い主がブレるとブーちゃん達は傷付くんでね、疑わないであげてください」

「『ピグはいいヤツです。何があっても、たとえお母さんがピグを疑ったとしても、オレはピグの味方だから』と店長に言われ、家族である私がピグを信じてあげられなかったことが情けなくなり、涙が止まらなかった。店長に飛ばされたゲキのおかげで、いい子に育てなきゃというプレッシャーから解放されました」

強くて優しい、カッコいい男に成長

 2歳を迎えたピグくんは今もパワフルだ。しかし、5歳になった息子さんとオモチャの取り合いっこをして、自ら負けてあげることも。「最初は弟だったピグが、今ではお兄ちゃんのように。ガマンが続くと夫に体当たりしていますが(笑)」。家族のお腹の上に身を委ね、イビキをかきながら爆睡する姿は最強に愛おしいという。お母さんは感慨深げにこう呟いた。

「紆余曲折があったけれど、ピグを信じて少しずつ頑張り、ピグも少しずつ落ち着いていきました。イノシシ飼っちゃった!? と本気で悩んだことも今では笑える思い出に。外では気を使うこともありますが、元気でハイパーなのがピグの魅力です」

飼い主の男の子とパグ「ピグくん」
最初は怖がっていた息子さんも、今ではこんなにふれあえるように(飼い主さん提供)

 ピグくんは毎月シャンプーでUGにやって来ては、遊び方を知らない子犬の相手をしながら自身も楽しそうに遊んでいる。「しっかりとほかの犬を見る力がある。強いけれど決して攻撃はしない。そして、ピュアで優しい。ピグはどっしりとしたカッコいい男に成長しました。高倉健さんみたいな、ね」と高橋店長は笑い、こう続けた。

「悩んでいる飼い主さんはどうしてもわが子の欠点ばかりを見てしまう。ご家族もピグの強さに悩みましたが、強さは必ずしも欠点にはならない。正義にもなり得る。それをピグが教えてくれた。ハイパーな子が数日で変わる『特効薬』はありません。まずは1歳になるまで犬も飼い主も一緒にがんばる。その時間と経験と思い出があるからこそ、本当の家族になれる。家族みんなが心から笑顔になれるのです」

高橋信行店長 プロフィール
物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、最近家族になったジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。
UG DOGS アトラスタワー中目黒店
住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/
店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。

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中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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この特集について
だから犬って最高だ!
「育犬ノイローゼ」に陥った飼い主が藁をもつかむ思いで全国からやってくる「駆け込み寺」=UG DOGSアトラスタワー中目黒店。ハイパーな子犬たちと悩める飼い主を相手に日々奮闘する店長・高橋信行さんの実録ルポ。
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