大の猫好き広告カメラマン 妻に勧められて2匹の愛猫を本気で撮り始めた
東京・浅草に住む広告カメラマンの吉田哲士さん(52)は、昔から大の猫好き。最近、家族のすすめもあって、愛猫たちを“本気”で撮りはじめた。インスタにアップされた写真は美しく、独特の世界観がある。猫との関係や撮り方を知りたくて、会いにいってみた。
隅田川沿いのマンション。「どうぞ」と吉田さんに案内されて居間にあがると、黒猫が驚いたようにこちらを見上げた。少し離れた窓辺にボブテイルの白猫がいる。
「黒が3歳のチトで、白が2歳半のテト。それぞれペットサイトを通じて譲渡してもらったメスの保護猫です。テトがこじらせたので、今、2匹の仲は微妙です(笑)」
にこやかに猫の紹介をする吉田さんは、広告写真専門の会社にカメラマンとして勤め、ふだんは商品や人物などを撮影している。
そんな吉田さんがインスタに初めて愛猫を載せたのは2年前。最初はスマホで撮ってアプリで見栄えをよくする程度だったが、春からミラーレスで“真剣”に撮るようになった。
「コロナで家にいる時間が多くなった時に、『うちの猫を撮ればいいのに』と妻にすすめられたんです」
子どもの頃から猫がそばに
そもそも、吉田さんの猫歴は長い。子どもの頃から家で飼い、結婚後もすぐに保護猫を迎えたそうだ。
「チトたちを迎える前にも、リール-という猫を飼っていました。17歳半まで生きたんですよ。家族にとって大きな存在でした」
リールーは、吉田さんの長男(15歳)が生まれる前からいた白黒模様のメス猫だ。
「息子が赤ちゃんの時は、誰?というようにフーフー怒ってたけど、ずっと寄り添って生きてくれましたね。息子の中学受験の合格発表の翌日に、合格を見届けるようにして亡くなったんです。息子は今まで見たこともないくらい、大泣きして……」
リールーが旅立った後、「猫はもうしばらくいいかな」と吉田さんは思ったが、しばらくすると妻と長男が、「また飼おうよ」と言い出した。猫不在の家の中で、吉田さんの様子が“変わってしまった”からなのだという。
吉田さんの妻がその当時を振り返る。
「猫がいなくなった途端、夫が私と息子にすごく話しかけてくるようなって。それまではリール-に向かって話していたのが、こちらにダイレクトになったんです。これは次の子を迎えてワンクッションおかないとうるさくて大変だ、と思いました(笑)」
今度は2匹飼いがいいねと家族みなで話し、まずは黒猫のチトを、そして対象的な色の白猫テトを3カ月後に迎えたのだった。
チトは内向的、テトは天真爛漫。毛の色だけでなくキャラクターも正反対の2匹がおいかけっこをすると、室内は一気に華やいだ。
ぴたっとポーズも
吉田さんは餌係として、朝晩、2匹に食事をあげた。そのせいか吉田さんによく懐いた。
「子猫の頃は2匹一緒のことが多くて、ツーショットがよく撮れました。でも、寝る時にぐいぐい入って来るテトのことをチトが嫌がるようになり、1匹ずつの写真が増えました」
テトはやんちゃだったが、賢さはピカイチ。飛び上がってドアノブに手をかけ、頭突きして扉をこじ開けたり。遊ぶ時も真剣そのもので、集中力があった。
テトを見ているうちに、吉田さんは少し凝った写真を撮りたくなった。6畳ほどの部屋の壁に大きな白布を垂らし、床に光沢感のあるプラ製の障子紙を敷いた。そこに籐かごやつぼを置くと、テトは喜んで登ったり入ったりした。ぴたっとポーズも決めてくれる。
「少し動きのあるものを撮りたくて、ジャンプをさせようと思いました。テトをカメラ前に誘導するため、ひもに小さなぬいぐるみをくくりつけて、ひたすら片手で振り回しながら遊ばせ、長めのリモートコード(レリーズ)でシャッターを切るんです……あまり遊ぶとテトも疲れて動きが鈍くなるのですが(笑)」
広角28mmのレンズを使い、ISO感度は400。シャッター速度は1/125で、ピントはマニュアルフォーカスに。ストロボは小型の電池式を3灯(背景に2灯、カメラ位置の横から1灯)使用し、ワイヤレスで発光させるようにした。
「ピントの合う範囲を広くするように絞りはF11にセット、ストロボ光がメインライトなのでジャンプした瞬間が“静止”して映ります。撮影後はライトルーム、フォトショップのソフトで画像処理をします」
写真がフォトコン入賞
自分の撮った愛猫の写真は人々の目にどう映るのだろうか…。吉田さんは、テトを遊ばせながら撮った1枚を、「Sony αシリーズinstagramフォトコンテスト」に応募してみた。タイトルは「追っかけっ子」とした。
すると、この写真が優秀賞に選ばれた。
〈猫の愛らしい瞬間を捉えた写真にほっこりしました。踊るような猫の後ろ姿とおもちゃのクネッとして紐が可愛いを通り越して芸術的で美しいとも思いました。なのにこんなに躍動感があって凄いですね…〉と審査講評は上々。
家族にも「いいね、もっと撮ったら?」と好評だった。すると吉田さんの“猫撮り欲”もどんどん増してきた。
「猫のインスタはこれからもどんどんあげたいし、いつか、『壺猫』なんていうタイトルで写真集が出せたらうれしいですね」
猫好きなおとうさんは、テトを抱いて目を細めた。
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