「アニマルウェルフェアアワード」を創設 動物たちのためになる行動を
2020年4月、アニマルライツセンターは、日本でアニマルウェルフェアに貢献した企業を評価する取り組みとしてアニマルウェルフェアアワードを創設した。
アニマルウェルフェアに貢献するために
このアニマルウェルフェアアワードでは、動物の飼育方法を改善していくこととともに、苦しむ動物の数自体を減らすこともアニマルウェルフェアに大きく貢献するものと捉えている。
単純に飼育環境が良いということではなく、アニマルウェルフェアを広める上での協力的な対応や、社会をリードする姿勢も含め、日本の畜産動物を守る活動を行う動物保護団体の視点で、できるだけ大きなインパクトを与えたと考えられる取り組みを評価した。
平飼い卵の販売を開始
鶏賞:イオン株式会社
2020年にイオンはプライベートブランドのケージフリー(平飼い)卵の販売を開始した。また、2020年中に販売店舗をふやし、さらに2022年までに全国に展開していくことをメディア、つまりは消費者にむけて約束している。
採卵鶏を苦しめるケージ飼育をやめ、平飼いに切り替えるというケージフリーの流れは年々国内でも大きくなっている。平飼い卵の需要は増加を続けており、大規模な平飼い養鶏場も増えてきた。
これは卵の量が多くなることを意味しているのではなく、「良いものを少量」という考え方に切り替わっていくことを意味している。すぐにケージフリーの卵に切り替えられることは理想ではあるが、そうではなく、2025年など切り替え終了時期の目標を定めて、徐々に移行することで、生産者は新たな設備投資に踏み切ることができる。
アニマルウェルフェアは誰か一人、またはどこかの1社がやればかなえられるものではなく、社会全体で取り組んでいくものなのだという認識を持ち、消費者、流通、生産全体がバランスを取る必要がある。その鍵になるのは消費者のニーズだ。イオンがケージフリーの卵を増やすことは、消費者が実現したことである。そしてそれを形にしてくれたイオンが、次の生産を動かすだろう。
将来、すべての鶏がケージから解放されている社会、これを目指して、次なる企業が切り替えを宣言することを願う。
すべての商品をエッグフリーに
鶏賞:株式会社ラッシュジャパン
2019年にラッシュジャパンは全商品から卵をとりのぞき、エッグフリー商品にする選択をした。
ラッシュジャパンはこれまでもケージフリー卵を選択していたが、そこにとどまらず、さらに動物たちへの苦しみを減らすためにエッグフリーの選択をしたことを、私たちは評価した。
日本はメキシコについで2番目に多く卵を食べる国民であり、食べすぎている。苦しむ鶏の数を減らすことは、健康にも寄与できる。
一般的に売られている卵一個には250㎎ものコレステロールが含まれているが、これは厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で示された基準値を超えてしまっている。他の食材でもコレステロールを摂取することを考えると、卵はもっと減らす必要がある。
2015年版で厚生労働省はこの摂取基準値を撤廃したが、それはいくらでも卵を食べていいということではなく、「コレステロールの摂取量は低めに抑えることが好ましいものと考えられるものの、目標量を算定するのに十分な科学的根拠が得られなかったため、目標量の算定は控えた(2015年度版より)」ためである。
そして十分な科学的根拠が得られた2020年版から、コレステロールは一日200㎎未満という基準値が設けられたのだ。
私たちは卵の使用を減らしていくことを”エッグスマート”と呼び、ケージフリーと同じように企業への実現をお願いしているところである。
ガスで鶏の意識を失わせる方法を採用
鶏賞:貞光食糧工業株式会社
貞光食糧工業は、ガスで鶏の意識を失わせる方式を採用している食鳥処理場だ。現在鶏の屠畜方法として、ガススタニング(ガスによる気絶処理)が最善策の一つであり、世界中が移行していっている。
ガススタニングをいち早く導入し、かつ、この方式を広めたいとする動物保護団体に対しその知見を共有してくれたことを評価した。
屠畜方法を動物保護団体が評価?!と驚かれるかもしれない。しかし、毎年7~8億羽の鶏が実際には屠畜されており、見て見ぬふりをして良いことではない。これは食べる食べないの問題以前の、暴力を一刻も早くなくさなくてはならないという緊急課題だ。
特に日本は、意識のあるまま首を切るという、鶏たちを最大限苦しめる方法をとる食鳥処理場が多いのだ。この方法は多くの国が禁止している。世界で最も一般的な、電気水槽で気絶させる業者すら日本は少ない。
このような動物への配慮がいまだにない企業に対し、ガスが段階的に充填されるより苦しみの少ない方式のスタニング方法への切り替えを促している。
母豚を閉じ込めないと約束
豚賞:ホライズンファームズ株式会社
2020年にホライズンファームズは日本で初めて、母豚を身動きが出来ない檻「ストール」に閉じ込めないということを消費者に約束した。動物保護団体を通して食肉流通業者がストールフリー宣言する心境の複雑さを何カ月も真剣に悩みぬいた結果、宣言の公開に踏み切ってくれた。
世界中が母豚を拘束して飼育する妊娠ストール飼育を廃止していく中、日本はあきらかに後れをとっている。日本に生まれてしまった豚はあまりに不幸だ。
人工的な妊娠を繰り返させられ、お母さん豚たちが拘束され運動一つできない、前に一歩動けるかどうかの中で、目の前の鉄棒をかみ続けるなどの異常行動を取りながら、苦悩の毎日を送る。
この解決策として、豚たちを群れで自由に動き回れる状態で飼育するより自然な方法があり、このほうが健康で、子豚の死亡率も改善する。当たり前の飼育に戻すとも言える。これを実現するためには、消費者、そして流通を担う企業が、拘束飼育にNOと言わなくてはならないのだ。
なんであれ、「初」になることは勇気のいることだ。それでも、動物たちや社会の未来を考え、初のストールフリー宣言をしてくれたことに心から感謝している。
植物性たんぱく質を使った手頃な価格の商品
豚賞:イケア・ジャパン株式会社
2019年にIKEAは多くの植物性たんぱく質を使った、安価な商品を発売した。植物性ホットドッグ『ベジドッグ (100円)』はCOP24(第24回気候変動枠組み条約締約国会議)でも提供されており、環境にも優しく、そしてなにより豚の苦しみを明確に減少させてくれる商品だ。さらに多くの人に手に取りやすい価格設定であるという点も効果的だ。
今では植物性たんぱく質の開発、販促は広まっており、大手食肉企業も大豆でできたハムやハンバーグやナゲットを売り出している。この流れが今後一層広まることは確実だ。なぜなら動物性たんぱく質=畜産物が地球の持続可能性を著しく奪うものだからだ。
IKEAはベターチキンと呼ばれるアニマルウェルフェアの高い鶏肉に切り替えることもすでに宣言しており、飼育改善にも取り組んでいる。飼育改善と植物性たんぱく質への移行を並行し、強くアニマルウェルフェアをリードする姿勢を高く評価した。
アニマルウェルフェア向上へ前向きな動き
アワードは獲得しなかったものの、ここ数年、多くの企業がアニマルウェルフェアを向上させる取り組みを前向きに捉え始めている。またアニマルウェルフェアについて私たちとの話し合いに応じる企業も多くあった。
ともに社会を良くするという気持ちを持って、何か一つでも動物のためになる行動をしてくれたすべての企業、団体に心から感謝したい。
そして消費者として、良い取り組みをきちんと公表しながら進める企業を、ぜひとも応援してほしい。
【前の回】 餓死させられた14万羽の鶏 繰り返さないために出来ることは
(次回は10月12日に公開予定です)
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