ボブに合掌 元ホームレスの飼い主と猫との出会い…実話に基づいた映画をもう一度

© 2016 STREET CAT FILM DISTRIBUTION LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.

 6月15日に、世界中で愛された茶トラの猫、ボブが天に召されました。ボブの死を、Facebookの公式ページで発表したのは、飼い主で作家のジェームズ・ボウエンです。

 元野良猫のボブは、ホームレスだったボウエンさんの人生を変えた救世主となりました。人生のどん底にいたボウエンさんと出会ったボブは、その後、彼にとってかけがえのない相棒となります。そして、ボウエンさんは、2人(1人と1匹)の物語を綴った書籍を出版し、たちまち時の人となりました。

ドラッグに溺れ、茶トラのボブと出会う

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 この実話を基にした映画が、『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』。日本で公開されたのは2017年ですが、今でも猫の愛好家たちに支持されている珠玉の1作です。

 主人公は、ロンドンでプロのミュージシャンを目指しながらも夢に破れ、薬物依存に苦しんでいる青年ジェームズ(ルーク・トレッダウェイ)。路上でギターを手に、歌を歌って日銭を稼ぐ生活をしていますが、その日の食べ物にもありつけない時もあるという悲惨な生活を送っていました。

 ジェームズが頼りたいと思う父親は、すでに再婚して新しい妻子と暮らしているため、彼を自分の家族として受け入れることができません。なぜなら、妻や娘たちは、ジェームズがドラッグに溺れていることを知っているからです。

 とはいえ、ジェームズは、ドラッグを断ちたいという強い意志を持ち、ドラッグ更生プログラムを受けています。そして、ようやく彼の担当者ヴァル(ジョアンヌ・フロガット)の計らいで、アパートの1室に入居できることになりました。そこにやってきたのが、茶トラのボブです。

 ボブと名付けたのは、知り合った隣人のベティ(ルタ・ゲドミンタス)です。ボブがケガをしていることに気づいたジェームズは、ベティに教えてもらった、無料で診断してくれる動物の診療所にボブを連れていきますが、薬代は有料と聞いて、彼はなけなしの持ち金をはたき、ボブの薬を買いました。

 それ以来、ジェームズとボブは、家族のように仲良く生活を共にしていきます。ジェームズが路上で歌う時も、常にボブが寄り添い、ホームレスなど生活困窮者を自立支援するための「ビッグ・イシュー」を道で販売する際も、ボブが肩に乗っていることで、ジェームズの持ち分は飛ぶように売れていきます。だんだん生活が明るい方向に進むなか、ある悲しい出来事が、ジェームズを襲います。

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人や猫に対して思いやりをもって接する

 本作が、他の猫映画と異なる点は、ボブが本人、いや“本猫”役で出演している点です。タイトルにもある、ジェームズとハイタッチしているのももちろん本物のボブ。撮影には、ジェームズ・ボウエン自身が立ち合ったそうです。ちなみに、ボブのギャランティは、WhiskasのキャットミルクとKRAFTのチーズだったとか。

 日本公開時には、映画のキャンペーンで、ボブと揃ってジェームズ・ボウエンも来日しました。その時にジェームズは、ボブの年齢を考え、激しいアクションシーンは、代役の猫がこなしたけど、ほとんどのシーンはボブ自身が演じていると明かしました。だからこそ、本当に自然体で無謀なショットを収めることができたのではないかと。

 また、本作がとても心に響く上質な作品に仕上がったのは、ボブの好演だけではなく、ジェームズ・ボウエンのすばらしい人となりによるところも大きかった気がします。彼は、どんなに生活苦におかれても、常に人や猫に対して思いやりをもって接することができる“善人”でした。

 自分よりも、ボブのことを気遣い、ボブの薬を購入したし、ジャンキー仲間が、ジェームズに助けを求めてきた時も、決して彼を邪険に扱うことはなく「絶対に薬を買ってはダメ」と念を押したうえで、少ないながらもお金を渡しました。つまり彼の心は決して貧しくなくて、むしろとても豊かだったんです。

 そう思うと、ボブは、美しい心をもったジェームズを、希望のある未来へと導いてくれた神様のような存在に思えてきます。いまはもうこの世にはいないボブですが、今でもきっと、天から愛する主人であるジェームズを見守ってくれているのではないでしょうか。

世界的ベストセラーになった原作

 映画を観て、ジェームズとボブについてもっと知りたくなった方は、ぜひジェームズ・ボウエンが書いた原作も手にとってみませんか?

 原作は、世界的ベストセラーとなった「ボブという名のストリート・キャット」です。2012年3月にイギリスで出版されると、ザ・サンデー・タイムズ紙のベストセラー・リストに76週間連続でランクインされ、大いに話題を呼びました。

 その後、アメリカ、中国、日本をはじめとする30を越える地域で出版され、世界的なロングセラーとなっています。

 日本版は「ボブという名のストリート・キャット」のほか、その続編「ボブがくれた世界」と、ジェームズがボブと暮らした十数年のなかで、ボブから学んだ人生哲学を写真と共に紹介する「ボブが教えてくれたこと」と、3冊の本が辰巳出版から発行されています。

 気になった方はぜひ、映画と合わせてお楽しみください。

ボブという名のストリート・キャット 書影
ボブという名のストリート・キャット(辰巳出版)

ボブという名のストリート・キャット

ボブがくれた世界 ぼくらの小さな冒険 書影
ボブがくれた世界 ぼくらの小さな冒険(辰巳出版)

ボブがくれた世界 ぼくらの小さな冒険

ボブが教えてくれたこと 書影
ボブが教えてくれたこと(辰巳出版)

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山崎伸子
ライター、ときどき編集者、カメラマン。映画やドラマのインタビューやコラムをメインに執筆。趣味は旅行、酒場&酒蔵巡り、パンダグッズ集め。好きな映画と座右の銘は『ライフ・イズ・ビューティフル』。実家に帰るとやんちゃなわんこが二足歩行でお出迎え。

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