世界34カ国めぐりみつめた人々の猫への優しさ 岩合さん写真集

「スタンド・バイ・ニャー」(岩合光昭/辰巳出版)イタリアのオス猫とロシアから来た主人
「スタンド・バイ・ニャー」(岩合光昭/辰巳出版)イタリアのオス猫とロシアから来た主人

 動物写真家の岩合光昭さんが世界各地で出会った、美しくも自然な猫と人の姿を収め写真集「スタンド・バイ・ニャー」(辰巳出版)が発売された。写真は、アフリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、アジア、南北アメリカの五大陸・34カ国で撮影されている。

(末尾に写真特集があります)

心情を映したタイトル

 タイトル「スタンド・バイ・ニャー」は、歌や映画で知られる「スタンド・バイ・ミー」)をヒントにしたものだという。

 英語のstand by には、そばにいる、力になる、などの意味があるが、岩合さんは日頃から、「ネコがそばにいてくれたらひとりも闇夜も怖くない、逆に困ったネコがいたら何をおいてもそばにいてやりたい」と思っているそう。まさに心情を映し出したタイトルだ。

「スタンド・バイ・ニャー」(岩合光昭/辰巳出版)アラブ首長国連邦の砂丘に住む猫たちを世話する夫婦
「スタンド・バイ・ニャー」(岩合光昭/辰巳出版)アラブ首長国連邦の砂丘に住む猫たちを世話する夫婦

――本書を企画した辰巳出版の斎藤実さんが、いきさつとコンセプトについて話す。

 「雑誌『猫びより』で創刊以来お世話になっているデザイナーの山口至剛さんが、『岩合さんが海外で撮影した、猫と人が一緒に写っている写真がすばらしい』とおっしゃっていたのが始まりです。事実、すばらしい写真が多いですし、考えてみたら猫と人の関係性をテーマにした岩合さんの写真集は、今までなかったんです」

――猫と人の寄り添う姿がごく自然で、親近感も覚えます。

「猫を抱いていればどこの国の子供も笑顔になりますし、ちょっと不本意そうな顔をする猫も子供の好きにさせています。日本でもよく見られる光景ですね。そうかと思えば、ルーマニアやタイのおばあさんが刺繍をしている横で猫がくつろいで寝ていたり、猫が仕事の邪魔をしているのをおおらかに受け流す人がいたり…。

 どの写真からも人々の猫へのさりげない優しさと愛情が感じられるし、猫と人が共有する場の空気が伝わってくると思います」

――海外のことを知る写真集としても楽しめますね。

「34カ国の土地の文化や、自然環境を反映した衣装と家屋、さまざまな街並みや自然が見られます。そこに地元の猫と人が写っていれば、土地土地の日常性がより濃密にリアリティーを伴って伝わってくるでしょう。リアルな旅行気分を味わうには、最高の写真集だと自負しています」

「スタンド・バイ・ニャー」(岩合光昭/辰巳出版)先代の愛猫の足あとをタトゥーにしたノルウェーの少女
「スタンド・バイ・ニャー」(岩合光昭/辰巳出版)先代の愛猫の足あとをタトゥーにしたノルウェーの少女

愛猫の足あとをタトゥーに

――印象的なエピソードはありますか?

「写真集の内容がほぼ固まった頃、他に忘れられない猫と人はいますか?と岩合さんに尋ねたところ、(本書にも出る)ノルウェーの少女のことを教えていただきました。少女は、亡くなった先代の愛猫を悼んで自分の足にタトゥーを入れたそうです。こよなく愛した猫の足跡を模したもので、岩合さんは“少女の猫への愛情”にいたく感動されたそうです。ノルウェーと日本では社会通念も違いますが、愛猫を失う辛さは同じですね」

 遠い国々の猫たちに思いをはせつつ、美しく尊い猫と人の関係を改めて感じることのできる一冊だ。

『スタンド・バイ・ニャー』
写真・文:岩合光昭
発行:辰巳出版
定価:1600円+税
B5サイズ、128ページ、オールカラー
(書影をクリックするとアマゾンにとびます)

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は19歳の黒猫イヌオと、5歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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