犬や猫の繁殖・販売業者への数値規制 なぜ必要?今後の焦点は?
「議連として議論を積み重ねたもの。(環境省令に)反映をするようお願いしたい」
超党派の「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」(会長=尾辻秀久参院議員)が4月3日、独自にまとめた、犬猫の繁殖・販売業に対する数値規制案を小泉進次郎環境相に提出。取りまとめにあたった動物愛護法プロジェクトチーム座長の牧原秀樹衆院議員はそう、小泉環境相に要望した。
狭いケージに入れっぱなしで飼育
背景には、一部の繁殖業者やペットショップで、劣悪飼育の問題がなくならないことがある。
これまでに私が取材した繁殖業者でも、ほとんど身動きできない狭いケージを3段、4段と積み重ね、一つのケージに犬を1、2頭入れっぱなしにして飼育している事例は少なくなかった。ケージの床は金網になっていて、糞尿をした場合には金網の下に敷いてあるトレーに落ちる。
犬たちがケージから出られるのは、交配や出産の時くらい。おしりにタコができたり、脚が曲がってしまったりする犬も珍しくない。こうした環境から解放されるのは、ようやく繁殖できる年齢を超えたとき。関東地方南部で約150匹の繁殖犬を抱える業者は「1カ月に1回はケージから出す」と説明したが、この業者は、私が取材したなかでは良心的なほうだった。
50の重点項目をベースとする基準案
環境省がいまになって数値規制の制定を急いでいるのは、昨年6月に議員立法で行われた動物愛護法の改正で、「できる限り具体的な」飼養管理基準を環境省令で設けるよう、定められたためだ。超党派議連が、8週齢規制の導入とともに強くこだわった改正事項だった。
超党派議連としては、業者による犬猫の取り扱いを、動物福祉にかなったものにしたい。そのため法改正後、半年にわたり、優良業者や有識者らにヒアリングを重ね、海外事例も調査したうえで、50の重点項目をベースとする基準案を作ったのだ。
主な案としては、次のようなものが盛り込まれている。
- ケージの広さは小型犬で最低2平方メートル
- ケージの中に置く犬の寝床の大きさは、体長の1.5倍以上の長さと体高の1.3倍以上の幅が必要
- 寝床と活動場所がわかれている場合、犬が起きている時間の50%以上は、自由に運動スペースに出られる構造にする
- 従業員1人あたりの上限飼育数は、繁殖業者では繁殖犬15匹、繁殖猫25匹。ペットショップでは犬20匹、猫25匹
- 出産は犬猫とも生涯に6回まで
これらの議連案が環境省令に盛り込まれれば、日本における犬猫の繁殖・販売業は大きく改善する。劣悪な飼育環境に苦しめられている繁殖用の犬猫たちを、ようやく救えることになる。同時に、心身ともに健康な子犬・子猫を消費者が購入できるようになることにつながり、社会全体にとっても大きなメリットがある。
環境省の素案まもなく提示
今後は、環境省が、議連案をどこまで環境省令に反映するかが焦点になる。環境省による審議会や検討会の場でのヒアリングでは、「動物との共生を考える連絡会」(代表=青木貢一・獣医師)など動物愛護団体からは、一部事項についてより高い水準の要望が出された。
一方でペット関連の業界団体が作る「犬猫適正飼養推進協議会」(会長=石山恒・ペットフード協会会長)は、より低い水準の提案を行っている。
小泉環境相は、冒頭の超党派議連からの要望に対して、「私も問題意識を持っており、(動物愛護管理)室長らと何度も議論をしながら、いかに環境省が動物愛護の精神にのっとった対応ができるか、しっかりと作っていこうと話をしている。(議連案をまとめた)ご苦労に一つでも報いることができるように、取り組んでいきたい」と答えた。環境省が、昨年6月の動物愛護法改正にあたって示された立法者の意思に沿った判断を下すことを期待したい。
環境省の素案は間もなく示される予定で、数値規制が盛り込まれた環境省令は来年6月に施行される。
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