番頭猫たちとゆっくり、のんびり 猫好きが集う銭湯は楽園だった

 東京は足立区西新井にある銭湯「湯処じんのび」。石川県奥能登地方で「ゆっくり、のんびり、くつろぎ」という意味の名がつけられたこの湯では、番頭役の猫たちが訪れた人をもてなし、身も心もほっこり温めている。

「じんのび」は昭和36年創業、50年以上の歴史を持つ。都内では珍しいという、自慢の屋根なし露天風呂をはじめ、風呂上がりの一杯が楽しめる休憩スペースに、別階に併設したカラオケルームなど、充実の施設がそろった銭湯だが、ここに通う人たちのお目当てはそれだけではない。

 忘れてはいけないのが、3匹の番頭猫、三毛猫「ケイ」(メス・12歳)、キジ白「しんたろう」(オス・推定14歳)、黒猫「のり巻き」(メス・カ月)。みんな銭湯の周辺で保護された猫たちだ。

女将さんの田中花子さん

創業当時の看板ペットは、なんと猿だった

「じんのび」は田中さん一家で切り盛りしている。2代目女将、田中花子さんは、小さい頃から犬や猫が捨てられていたら、ついつい拾ってしまう動物好き。銭湯の隣にある公園で子猫が捨てられては保護し、野良猫が住み着いては保護し……を繰り返し、約35年間、途切れることなく猫と暮らしてきた。

 多い時には家におよそ25匹の猫がいたというが、まだ「TNR」という言葉もない時代から、田中さんは野良猫をエサで釣って捕まえては不妊手術をして、地域の野良猫が増えないよう気を配った。「そんなたいそうなことではない」と笑うが、いわば地域猫活動の草分け的存在だ。

 そんな猫一家だけに、昔から番頭猫がいたのかと思いきや、創業当時は、なんとスピッツにオウムにテナガザル……と、まるで桃太郎の家来のような個性的な面々が看板ペットだったとか。

「お猿さんやオウムは、船乗りをしている親戚が連れてきました。普段は檻に入れて飼っていましたが、お天気のいいときには隣の公園に連れて行ったりして、お客さんからもかわいがられていましたよ」

初代番頭猫の「シマ」。大切に飾られていた晩年の写真

伝説の初代番頭猫、その後任を務める3匹

 猫が番頭を務めるようになったのは、テナガザルが亡くなった後、今からおよそ30年前。初代の番頭猫「シマ」を保護したことがきっかけだった。

 まだへその緒がついた状態で近所で拾われ、2、3時間おきに授乳が欠かせなかった「シマ」を家に置いていくわけにもいかず、やむなく店に連れてきたのが始まりだった。

 21歳で大往生するまで、立派に番頭を務め上げた「シマ」。今でも「伝説の番頭猫」として店内に写真が飾られ、田中さんも娘の商代さんも「いい猫でした」と振り返る。

 その跡を継ぎ、2代目の座についたのが「ケイ」だ。「シマ」と同じように、生後1~2カ月のとき、隣の公園に兄弟猫と捨てられていたところを保護された。実は田中さん宅では自宅部分にも5匹の保護猫が暮らしているが、「ケイ」はそのうちの1匹と仲が悪く、両者を離すために銭湯暮らしとなった。若干シャイな性格で、にぎやかなお客さん、とりわけ子どもの接客が苦手だという。

 一方、3代目の番頭「しんたろう」は、近所をうろついていた元野良猫。6年ほど前、真夏の暑い日にクーラーで冷えた玄関ドアにぺたーっとへたり込み、何日も居座り続けたため、根負けして迎え入れた。田中さんに抱っこしてもらうのが大好きな甘えん坊だが、自分が家猫になったあと、ひとりぼっちになった野良仲間を、世話を頼むかのように連れてくる男気ある一面も。「ケイ」とは逆に、子どもの接客もお手のものだ。

しんたろう(左)と、ケイ(右)。大人猫2匹は仲良くまったり過ごしている

 そして4代目「のり巻き」が加わったのは、つい昨年のこと。両目がふさがった状態で、親猫にも見放された小さな黒猫を放っておけず保護した。

「公園はカラスがとても多くて、やられたらかわいそうだと思って捕まえました。病院に連れて行ったあと、一度は親元に戻しましたが、やっぱりひとりぼっちにされたので、結局うちの子にしました。生後1カ月くらいでしたが、連れてきても全然親を探さない子で、見放されたことをわかっていたのかもしれません」

 そんな過去を乗り越え、遊び好きで天真爛漫な猫に成長した「のり巻き」は、一家の末っ子そのもの。その愛くるしさで、今や銭湯で一番の人気猫になった。お湯を怖がることもなく、お客さんと一緒に風呂場について入ろうとする。「のり巻き」にとって番頭猫は、まさに“天職”なのかもしれない。

4代目ののり巻き。今では目もすっかりキレイになり美人猫に

猫を飼えないお客さんの大切な憩いの場に

 3匹に会いたくて足しげく通う猫好きな常連客も多いそうで、猫たちのためにおもちゃ持参でやって来る女性客や、自分で撮影した3匹の写真をわざわざプリントして持って来てくれるファンもいる。

 また、銭湯という場所柄、年配のお客さんも多いが、その人たちにとっても、大好きな猫たちとふれあえる貴重な場所になっていると、田中さんは教えてくれた。

「『うちの猫が死んじゃったからまた飼いたいけど、年を取っちゃったから、これ以上は飼えない』とおっしゃる方が、結構いらっしゃって。そういう方も、ここで猫たちとのふれあいを楽しんでくださっているみたいですね」

 お風呂で疲れた体をほぐし、猫たちのふれあいで心を癒やしてくれる「湯処じんのび」。その名にふさわしく、ゆっくりのんびりくつろげるこの場所は、田中さん一家に助けられた猫たちにとっても、猫好きのお客さんにとっても、オアシスのような場所だった。

湯処じんのび
住所:東京都足立区西新井6-43-4
電話番号:03-3890-8417
営業時間:14:00~24:00(日曜は12:00~)
休業日:月曜日
老舗ペット番組「ポチたま」とsippoがコラボ!
2月22日の「猫の日」、BSテレ東、改め「BSキャッ東」でオンエアされるペット番組「ポチたまペット大集合!ほっこりニャンコてんこ盛り2時間SP」と、sippoがコラボしました。
「湯処じんのび」の番頭猫たちに密着した模様が紹介されるほか、写真集『みんなイヌ・みんなネコ』の保護犬・保護猫たちの写真も多数登場。ぜひお見逃しなく!
放送日時:2月22日(土)20:00~
放送局:BSテレ東京
https://www.bs-tvtokyo.co.jp/pochitamasp2020/

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