多頭飼育崩壊で家に犬60匹 NPO、保護施設建設に支援求める

東江さんが最初に訪ねた頃、犬たちは満足にエサを与えられず飢えていた(にゃいるどはーと提供)
東江さんが最初に訪ねた頃、犬たちは満足にエサを与えられず飢えていた(にゃいるどはーと提供)

 飼い主のいない猫たちの保護活動を続けてきたNPO法人「にゃいるどはーと」(埼玉県朝霞市)が、「多頭飼育崩壊」によって過酷な環境下で飼育されている犬たちの保護に乗り出しました。新しい飼い主が見つかるまでの保護施設を建てるため、クラウドファンディングで資金を募っています。

 にゃいるどはーと代表の東江(あがりえ)ルミ子さん(51)が昨年4月、埼玉県吉見町内にある60代の老夫婦の家に入ると、1匹の中型犬が、幼齢犬を頭からくわえている姿が目に飛び込んできた。東江さんがやって来たことに驚いたのか、中型犬はすぐに幼齢犬を放したが、すでに頭がもぎ取られていたという。東江さんはこう振り返る。

「地獄でした。多頭飼育による繁殖地獄です」

 東江さんがこの多頭飼育崩壊の現場を初めて訪ねたのは、昨年2月のこと。2階建ての家屋の1階部分は犬たちに占拠されたような状態で、放置されたままの糞尿(ふんにょう)の臭いが充満していた。屋外や離れにも犬がいた。数えてみると、計63匹にのぼった。老夫婦が10年ほど前に拾った雄犬と雌犬をペアで、不妊・去勢手術をしないまま飼っていたところ、増えてしまったという。

1階には約40匹の犬がいて、占拠されたような状態だった(にゃいるどはーと提供)
1階には約40匹の犬がいて、占拠されたような状態だった(にゃいるどはーと提供)

 満足にエサも与えられていない状態だったため、東江さんらボランティアが入って徐々に改善。狂犬病予防注射やワクチン接種もすすめていった。

 老夫婦は地元保健所の指導で2018年ごろから、オスとメスとを分けて飼育するようにしていたが、徹底できていなかった。このため昨年春、「繁殖地獄」に陥ってしまった。東江さんが確認できただけでも約20匹のメス犬が出産。一部の子犬は成犬に殺されたが、新たに39匹の子犬を抱えることになった。

 東江さんたちは、すべての子犬に不妊・去勢手術をし、ワクチン接種を行い、マイクロチップを装着して、35匹に新しい飼い主を見つけた。ほかの4匹も一時預かりのボランティアのもとで暮らしている。だが60匹あまりの成犬はまだ、過酷な環境下に残されている。東江さんは言う。

「中型の成犬なので、すべての犬たちに新たな飼い主を見つけてあげるには時間がかかる。まずはいまの環境から脱出させてあげなければいけない。そのための保護施設を作りたい」

保護施設の建設予定地(にゃいるどはーと提供)
保護施設の建設予定地(にゃいるどはーと提供)

 土地はすでに確保したという。しかし施設の囲いや犬たちの寝床を設置する費用、えさ代のほかリードや首輪の購入費など、当面300万円程度の資金が必要になると見込んでいる。そのため、朝日新聞社が運営するクラウドファンディング・サイト「A-port」で、24日まで資金を募っている。

「多頭飼育崩壊に陥ると、適正に飼育できない犬や猫がいきなり大量に出るため、自治体や動物愛護団体の既存の施設では抱えきれないことが多い。今回の犬たちをすべて譲渡し終わった後は、そういった事態に対応できる施設として運営していきたい」と、東江さんは話している。

(太田匡彦)

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