犬の肛門そばに腫瘍 悪性メラノーマか肛門囊アポクリン腺がんも

:14歳の愛犬の肛門(こうもん)のそばに昨年、直径1センチほどの黒いできものができました。その後、できものは三つに増え、かたまりとして大きくなってきています。どんな治療法があるでしょうか?(岡山県・女性)

:切除が一般的、完治難しい場合も

 肛門のそばの腫瘍(しゅよう)とのことなので、悪性メラノーマか肛門囊(のう)アポクリン腺がんの可能性があります。

 まずメラノーマですが、毛に覆われた場所にできていれば良性の可能性が高く、肛門や唇など皮膚と粘膜の接合部にできるものは悪性の場合が多い。悪性だと急激に増殖することが多く、転移もします。

 また肛門囊アポクリン腺がんは、臭いの強い分泌物がたまる「肛門囊」に存在するアポクリン腺から発生します。犬に多く見られ、猫での発生はまれです。元気がなくなったり、多飲多尿の症状が出たりすることなどもあります。肺や脾臓(ひぞう)に転移しやすいがんです。

 治療はいずれも、患部とその周辺の外科的な切除が一般的です。ただ、悪性メラノーマは進行が早く、手術をしても完治は難しいです。肛門囊アポクリン腺がんであれば侵されたリンパ節の切除も必要で、こちらも再発率が高い。もし肛門周囲腺腫であれば良性で、手術後は良好な状態に回復することが期待できますが、切除して病理検査をしなければわかりません。

 厄介なのは、手術をしないと、悪性メラノーマは増殖して肛門をふさぎ、肛門囊アポクリン腺がんは直腸に広がり、排便が難しくなるケースがあることです。犬の年齢や健康状態、術後の平均余命、飼い主さんの経済事情など総合的な判断が求められるわけで、獣医師と、内科的治療の可能性も含めてよく相談することをおすすめします。

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山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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