愛猫の手にあるハート模様に思うこと いとしくてついついギュッ
チャッピーの手にはハートがある。私はずっと気づくことがなく、ある日妻の撮った写真を見て初めてその事実を知った。5年ほど前だろうか。
チャッピーはいま15歳。随分と長く気づいていなかったことになる。ちなみに、写真に写るカップを見ていただくとわかるが、実は妻にはその模様はチョウに見えている。活発に動き回る猫の手に飛び立たないチョウがとまっているというのは実に魅力的なあり方だが、わたしの中ではハート。根が凡庸なのだ。
まあ、どちらにしてもただの模様だ。でも、チャッピーの手をじっと見ていたらふと、海外の有名な振付師の言葉を思い出した。
その人は、ダンサーをオーディションするとき必ず言ったそうだ。「私のそばに来て、手の指先を見せて」。そうすると、その形、長さ、爪の形、様々なディテールのニュアンスに、その人に至るまでの、亡くなった過去の人々の存在を感じることができるというのだ。より深くその人を知る手段ということか。
それから時々、チャッピーの三毛の模様をじっと見る。鼻横の黒い部分、それがイタリアの形に似てるなあとか、チャッピーは静岡の御前崎で戦後最大級の台風の最中、ずぶ濡れで風に吹かれていたのを妻が保護したのだが、はぐれてしまった母やきっといたであろう姉妹のことを考え、そしてさらに遠い昔のもっと多くの猫たちに思いが至る。
チャッピーは15歳にしては、まだ、とても元気だが、随分と足腰は弱ってきた。最近は私の寝ているベッドに上がってくるのもやっとだ。そんなこともあり、見つめていると、この三色模様はこれから未来永劫何匹の三毛が生まれて来ようとも、二度と同じことにはならないと思い始め、愛おしさについ抱きしめてしまったりする。めんどくさそうに抱かれ、少しすると人ごとのように離れるチャッピー。
チャッピー、ほんますんません。
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