保護猫カフェの愛と責任と楽しさ 日々を丁寧に過ごすコツ〈犬童一心監督コラム〉

漫画『いっしょに帰ろう』とチャッピー

 動物を主人公にした映画の準備を始めた。まだ内容はここに書けないが、今動物を取り上げることの意味と映画の楽しさをうまく併せ持ったものにしたいと思う。かつての動物映画が、「かわいい!」と「動物がそんな芸を!」に寄りかかり過ぎていたことは、大島弓子さん原作、ドラマ版「グーグーだって猫である」(2014)の時も意識していた。今はさらに現在のペット事情も意識しながら、虚構に向かいたいと思う。

保護猫カフェでの出会い

 そんな最中、ある漫画書籍の帯を頼まれた。蘭木流子(らんき・りゅうこ)さんによる「いっしょに帰ろう」。タイトルの横には「保護猫カフェで出会った新しい家族の物語」とある。

 カップルや独り身、子どものいる家庭、それぞれが「保護猫カフェ」で心動かされる猫と出会い、共に住み始めるまでのエピソードを日々の出来事として子細に描いている。

 漫画の中で、ある夫婦が、猫を飼いたいと思いどこから迎えるか?と調べた時「ペットショップ」「ブリーダー」「譲渡先募集サイト」「保健所」という選択肢に続いて、「保護猫カフェ」というものがあるのを見つける。ご存じの方も多いと思うが、普通に猫カフェとして利用しながら、気に入った猫がいたら譲渡への応募ができるシステム。

 夫婦は気にいった猫と出会い、引き取りたいと思うのだが、そこから始まるカフェ側の譲渡希望者への審査、行った先での猫の健康と過ごしやすさへの細かな配慮に驚かされる。舞台になる保護猫カフェは実在のお店で、そこでのシステムと店長の姿勢を見ていくこととなるのだが、そうか、そんな風にしっかり地に足をつけ、未来への展望を持ってやっているのだと感動してしまう。

 描かれるどの出会いも、カフェ側も引き取る側も、その真摯(しんし)な態度ゆえに一筋縄でいかなかったりもするのだが、それを一つずつ果たし受け入れていく人たちの日常がとても尊いものに見えてくる。動物モノの漫画であるだけでなく、日々を丁寧にどう考えどう過ごすのかということ、その姿勢や態度の大切さを描く作品にもなっている。

祈りに似た言葉

 私の書いた本の帯はこんな風になった。

 「いっしょに帰ろう」その言葉には、いっぱいの思いが詰まってる。
 祈りに似た言葉だと思った。
 保護猫カフェ、そこには愛と責任と楽しさが一緒にあって、
 そんな風に日々を過ごせたらというコツをいっぱい教えてもらった。
 世界がほんの少しずつ良くなっていく。心からそう思えた。

漫画『いっしょに帰ろう』とチャッピー

 保護猫カフェに関してのマニュアルとしても読めるし、動物をおもんぱかることの大切さも腑(ふ)に落ちるし、これから猫を、いや、動物といっしょに過ごしたいと思う方には、とてもオススメしたいです。

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犬童一心
1960年東京生まれ。映画監督。主な監督作品に「金魚の一生」「二人が喋ってる。」「金髪の草原」「ジョゼと虎と魚たち」「メゾン・ド・ヒミコ」「のぼうの城」など

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この連載について
遠い目をした猫
「グーグーだって猫である」などを撮った映画監督で、愛猫家の犬童一心さんがつづる猫にまつわるコラムです。
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