お寺を荒らしていたおとな猫 高齢者に引き取られ穏やかに暮らす

人懐っこいマルコ

 奈良県内の猫が集まるお寺。境内で暮らしながら、寺公認というわけではなく、むしろ寺にすれば本堂を荒らす厄介者でもあった。そんな猫の1匹が足をけがしたことをきっかけに保護された。おとな猫だったが、幸運にも引き取り手が現れた。

(末尾に写真特集があります)

 奈良県内で「Life for cats in NARA」という団体をつくって、地域猫やTNRの活動の推進や啓発に取り組んでいる前澤睦(むつみ)さん。ある時、地域猫のボランティアをしている知人から「お寺に足をけがした猫がいるが、どうしたらいいだろう」と相談を受けた。

 その寺で猫を飼っているわけではないが、境内にはたくさんの猫がいた。その中でも片足の悪い猫は、エサをあげても、寺の本堂に入ってお供え物を食べて荒らすので、住職は随分迷惑に思っていたそうだ。

 前澤さんが寺に行くと、確かに左後ろ脚の悪い猫がいた。とても人懐っこいため、虐待目的の人間がさらっていく可能性もあった。2018年11月、前澤さんは仲間と一緒に車に積んでいた捕獲器でその猫を保護した。脚を触ると、腫れて熱を持っていた。

人懐っこいけど、遠慮がちな猫

 捕獲器の扉を開けると、中の猫はすぐにすり寄ってきた。動物病院で診てもらうと、推定6~7歳、オスだった。脚の熱や腫れは、抗生剤を飲ませると治まった。

 猫は譲渡先を探しながら前澤さん宅で過ごすことになった。名前はアニメ「母をたずねて三千里」にちなんで、「マルコ」と名付けられた。

保護当時、足をけがしていた

 マルコくんはおっとりした性格で、前澤さん宅のほかの猫に対していつも少し緊張していたという。

「ボクはよそ者ですから…、という感じで出しゃばらない。私に近づきたいけど、他の猫がいるから近づけないという感じでした。いつも先住猫の後ろにいました」

引き取り手が現れた

 長く外で暮らした6~7歳の猫。譲渡には子猫の人気が高いので、前澤さんは「もらい手はないだろうな」と案じていた。

 ちょうどその頃、前澤さん夫妻が営むイタリアンレストランの近くで、自社ブランドのTシャツを作っている長谷川さんのお母さんが新しい猫を探していた。高齢のため、あちこちの譲渡会で断られ、半ばあきらめかけたとき、「保護猫カフェ 和風桶猫喫茶」に相談して紹介されたのが、マルコだった。

まん丸な顔がかわいい

「長年飼われていた猫を亡くされて、新しい猫を飼いたいと探していらしたんです。でも、67歳。万が一の時は、いまも猫を飼われている息子さんが引き取ってくださるということになったんです。子猫じゃなくて、落ち着いている子がいいとおっしゃってくださったので譲渡しました」

 2019年2月、長谷川さんのお母さんは、前の猫のグッズをすべて処分していたので、何から何まで新調してマルコくんを迎えてくれた。直前まで猫を飼っていただけあって、ブラッシングや耳掃除も手慣れたものだった。

 おだやかな高齢者とシニア猫。長谷川さんのお母さんのように後見人がいれば、高齢でも安心して飼うことができる。マルコは最も良い飼い主にめぐり逢えたようだ。

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渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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この特集について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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