散歩ができない愛犬「福」 悩んだとーさん強いリーダーを目指す

 月刊誌『天然生活』『ESSE』で編集長をつとめ、数多くのヒット書籍をつくり続けている編集者の小林孝延さんは、3年前に困り顔の保護犬「福」を迎えました。外が怖い福が散歩を楽しめるよう、ある作戦を実行します。

(末尾に写真特集があります)

「お外は楽しいよ作戦」で少し前進

 外が苦手で、散歩ができない保護犬の福。トレーナーの先生からのアドバイスでスタートした「お外は楽しいよ大作戦」。朝晩のごはんを家の外で食べさせて、「外=怖いところ」の記憶を「外=楽しいところ」に塗り替える計画、最初は口すらつけてくれなかったフードも、時間はずいぶんかかるものの少しだけ食べてくれるようになりました。

 一口食べるたび、大げさに

「おおおおおーーーーおりこーさんだねーーー!!食べたねーーー!おいしいねーーー!!福ちゃーーーーん!!」

 とーさんの声にびっくりしてせっかく食べていたフードから離れていってしまうこともありました。とーさん興奮しすぎですから…

 だけど進歩したのは残念ながらここまで。悲しいことにその後、2週間たっても、3週間たっても、それ以上、福は外が好きにはなってくれない。あいかわらず首輪やリードもいやがる。

行きたくないんですけど。歩きたくないんですけど
行きたくないんですけど。歩きたくないんですけど

 外でフードを食べるのときも、ちょっとでも人の気配や物音がしようものなら、ピタリと口にするのをやめて逃げ出そうとする。この繰り返し…。やれやれ…神経質すぎる…なんでがつがつ食べてくれないのかなあ。朝晩の餌やりだけで心が折れそうになる日々が続きました。

 今になって思えばそれは野犬として育った福にとって当たり前の本能。DNAに刻み込まれた生き抜くための知恵。周囲への過剰なまでの警戒心があったからこそ、生き残り、こうして福まで遺伝子が引き継がれているのですから。そう理解して接することができるにはとーさんには知識も経験も不足していましたね。

愛犬「福」、あいかわらず散歩で大暴れ

 悩むとーさんにトレーナーの先生からは「人間は犬を飼うと散歩に行くのが当たり前で、散歩に行かない犬は幸せではないと考えがちだけどそれは間違っているんですよ。福ちゃんにとっての幸せを考えましょう。福ちゃんにとっては安心していられるおうちにいられるのが幸せなのかもしれませんよ」とアドバイスをいただきました。

だいたいこんな感じでぐいぐい引っ張って逃走しようとします
だいたいこんな感じでぐいぐい引っ張って逃走しようとします

 確かにその通りだよなーと、その言葉をかみしめつつ、それでも、もう少しだけがんばってみようと、散歩に連れ出す日々。そして連日の大暴れ。逃げ出そうとして力任せに走るから肉球から血がにじむ。

 毎日、毎日、あまりの嫌がりようにとーさんの心もだんだんしおれてきて…、散歩もドッグランも、うちの福には無理だなあとほぼ諦めかけていました。

散歩中に薦められた1冊の本

 そんなある日、とーさんが公園で嫌がる福を引っ張って四苦八苦していると、その様子を見ていた自称ドッグトレーナーの女性が声をかけてきました。

「この子は保護犬かしら?まだ人が怖いのね。辛い思いをしたのよきっと。よしよしがんばったのねー」と。そして、女性は矢継ぎ早に質問してきます。「どこから来た子?」「何カ月?」「フードはなにを与えているの」それらに答えつつ、今、とーさんが抱えている悩みをぽつぽつと話すと、まずはとーさんの意識を変えなければだめだと。

 そのために「シーザー・ミランの本を読んでみたらどうかしら」と一冊の本を薦めてくれたのです。

だーかーらー、歩きたくないんです、とーさん聞いてる?
だーかーらー、歩きたくないんです、とーさん聞いてる?

「犬と幸せに暮らす方法55」。アメリカの動物行動学者シーザー・ミランは様々な問題犬の行動を解決してきたドッグトレーナーのカリスマ。それが、まじですごいんです。

 検索してシーザーの動画を見てみたところ飼い主の言うことをまったく聞かず、人にがんがん飛びついてしまうゴールデンをあっという間におとなしいおりこうさんに変えてしまったり、無駄吠えがやまない小型犬をあっという間に黙らせしまったり。

 なんなんこの人!!!しかもそこにはしっかりとした理屈とハウツーがある。いやもう、とーさんびっくり仰天でした。この人の本なら絶対信頼できるはずです。

 本の中でシーザーは「問題は犬ではなく飼い主にある」と言っています。

 犬は群れで生きる動物で必ずやリーダーが必要です。つまり福にとってとーさんはリーダーとして不適格で、リーダー不在の群れの中で困っているというわけです。解決するにはとーさんがリーダーらしくふるまい、体全体から頼りになるエネルギーを出すことが大切だと(犬は言葉や触れることでコミュニケーションはとらない、全身からにじみ出るエネルギーで感じ取るというのがシーザーの理論)。

愛犬「福」との関係が劇的に変化

 わらにもすがる思いでむさぼるように本を読んだとーさんは、シーザーの教えを何度も頭の中で反芻しました。

「決して犬の目を見ない」

「自分から近づかない」

「リーダーらしい態度とエネルギー」

 とにもかくにも実践です!

 まず、仕事から帰ってきたとき、本当は「福ちゃーーーーん、とーさん会いたかったよーーん」と駆け寄りたいところですがグッとがまん。まるで、犬なんかこの家にいないよな?って感じで「すん」と無視。ちらりとも見もしません。こうすると福は「おや??」となるんですよね、不思議…。

 そして、エネルギーです。「わが輩はリーダーであるぞ。強くて偉い。頼りになるリーダーであるぞ、エッヘン」とばかりに胸を張り、大きく構えてみます。するとどうでしょう、なんだか福ばかりか、ほかの家族までとーさんを少し尊敬してみてくるような気がするではありませんか(それは気のせいかもしれないけど)。

 そして驚いたことにその日から、なんと福との関係が劇的に変わったのです。自分からは絶対に近づいてこなかったあの福が、むしろ興味を示して欲しそうに、とーさんにむかってアクションしてくるのでした!!感動のこの続きは次回へと続きます。

小林さんが発行人を務める月刊誌『天然生活のサイトはこちら

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小林 孝延
編集者・文筆家。出版社在籍中は『天然生活』『ESSE』の元編集長、『ハニオ日記』石田ゆり子著ほか、ライフスタイル系の雑誌・書籍を多数手がける。2023年10月に著書『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(鳴風舎)を刊行

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この連載について
とーさんの保護犬日記
困り顔の元保護犬「福」の「とーさん」になった編集者の小林孝延さんが、いとおしくも前途多難な保護犬ライフを語ります。
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