動物販売業者への環境省令 数値規制導入で犬猫の環境改善なるか

 金属製の小さなケージが、ぎっしりと積み重ねられていた。広さ30平方メートルほどの建物の中で飼育されていた繁殖犬は約150匹。昨年の冬、取材で見た光景だ。

 一つのケージに1、2匹ずつ入れられ、ほとんど身動きが取れない。犬たちが外に出られるのは、交配や出産時を除くと1カ月に1度程度という。

「狭いスペースでなるべく多くの犬を飼育しようとするのがブリーダーの常識です」。関東地方南部で繁殖業を営む女性はそう話した。すし詰め状態での飼育を改める考えはないという。

 こうした状態を規制できる法律がこれまではなかった。環境省は、ペットショップや繁殖業者の飼育施設について、「日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間を有するものとする」などと告示で定めている。違反状態が続けば改善勧告などの対象になるが、「容易に」や「十分な」という定義があいまいで、業者の監視・指導にあたる自治体の現場では、空文化しているのが実情だ。

 6月に参院本会議で可決、成立した改正動物愛護法では、飼育施設の広さや従業員1人あたりの上限飼育数を環境省令によって数値で規制するよう定めた。これで、あいまいさの問題が解消される。

 自治体が数値を示して業者を指導できるようになれば、犬猫の飼育環境は大きく改善するとみられる。問題業者に改善勧告や業務停止命令も出しやすくなる。

 ただ、具体的にどういう数値を入れるかの議論はこれからだ。改正を主導した超党派の「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」は「国際的な動物福祉にかなった厳しい数値」を求めている。一方で、環境省の検討会では、一部の委員から「やりすぎると(動物の)値段が上がってしまう」という意見が出ている。環境省が用意する資料からは、なるべく数値を用いず、抽象的な表現の規制に誘導したい意図もうかがえる。

 低水準な数値や抽象的な表現の省令になってしまえば、かえって劣悪な環境での飼育が固定化されかねない。環境省は来春、骨子案を示す予定だが、状況を注視していきたい。
(特別報道部 太田匡彦)

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