雨の中でブルブル震えていた子猫 放っておけず家に連れ帰った

 雨が降り続くオフィス街で、1匹の子猫がずぶ濡れになって鳴いていた。見つけた女性は、放っておけず、すでに先住猫2匹がいる家に連れ帰った。

(末尾に写真特集があります)

 大阪市内のテナントビルの軒先。黒い子猫が1匹、雨の中でブルブルと身体を震わせていた。2010年4月のこと。春とはいえ、雨が降るとまだまだ肌寒い頃だった。

 その小さな黒猫を見つけたのは、大阪市で古書店を営む綿瀬さんの妻だった。

「妻が買い物に行く時にちょうど近くを通りかかって、鳴き声に気づいたんです。私は店にいたのですが、妻から電話がかかってきて『商店街に買い物に行く途中なんだけど、雨にぬれた子猫がいる。どうしよう?』と相談されたんです」

子猫の時から人懐っこかった
子猫の時から人懐っこかった

自分から寄ってきた子猫

 その日はビル全体が休みのようで、柵も下ろされていたという。そこで妻に「買い物から帰って来ても、まだいるようだったら考えようか」と伝えた。

 実は綿瀬さん宅では、すでに2匹の猫を保護して飼っていた。妻と電話で話しながら「うちにはもう2匹いる。かわいそうだけど、これ以上は無理だな……」という言葉も頭をよぎったそうだ。

 だが、受話器から「あっ! 猫がこっちに出て来た! 足元に登ってきた! とりあえず連れて帰る」という声が聞こえてきた。

 妻はそのまま子猫を抱きかかえて連れ帰ってきた。子猫は喉をゴロゴロ鳴らしていたという。

美人猫に成長した
美人猫に成長した

飼い猫のような人懐っこさ

 家に帰り着き、子猫の体を拭いて、ごはんと水をあげると「ムガムガムガー」と鳴きながらむさぼったという。とてもお腹がすいていたようだった。

「人懐っこいし、あまり汚れているわけでもなく、翌日、動物病院に連れて行っても、特に病気もなく健康でした。もしかしたら飼い猫だったのかもしれないと、動物病院に探している人がいたら連絡をくださいと伝えました。私たちも掲示板などで探してみたのですが、情報はありませんでした。引っ越しシーズンだったので、誰かが捨てたのかもしれません」

 動物病院からは「連絡してくる人もありませんし、黒猫がほしいと言っている人は結構多いので、飼わないのなら誰かに譲渡しますよ」と言われた。しかし、綿瀬さん夫妻はその時すでに、黒猫をアンと名付け、自分たちで飼うことを決めていた。

なぜか夫には返事もせず

 最初こそアンをケージに入れて、ほかの猫とは別の部屋で馴らし、その後、ケージごとリビングに移して、少しずつ外に出して互いになじませていったという。

 当のアンは食べ物こそ好き嫌いがはっきりしているが、性格は天真爛漫。先住猫がイライラしてもどこ吹く風というように気にしなかった。もう一匹の先住猫は当初から友好的だったそうだ。

 面白いことに、妻が「アンちゃ~ん」と呼ぶと、必ず「ニャーン!」と元気に返事をするが、夫が「アンちゃ~ん」と呼んでもほとんど返事をしない。15回に1回くらいは声を返すが、「ナ~ン」とテンションの低い声なのだという。

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渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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