真幸駅の猫、満腹でうとうと 無人駅を支える住民が世話
宮崎県内で最初にできた鉄道の駅、真幸(まさき)駅(JR肥薩線、えびの市)に現れる野良猫たちを、地域の人たちがねぐらを用意したり、えさをやったりして世話をしている。えさを食べ終えると、どこかに行ってしまう。駅名の通り「真に幸せ」な猫たちに見える。
土曜日の朝。JR九州から「名誉駅長」を委嘱されている上熊須康(かみくますやす)さん(78)が、山あいの小さな駅にやって来ると、どこからともなく現れた2匹の猫が「ニャーニャー」と声高に鳴きながら近付いてきた。「ご飯ちょうだい!」と言っているようだ。
「友の会」が世話
肥薩線(熊本県・八代―鹿児島県・隼人)の全線開通の2年後、1911(明治44)年に開設された真幸駅には、当時の面影を伝える木造の駅舎がある。現在は1日に上下線3本ずつしか停車しない無人駅だが、駅舎の雰囲気や折り返し式の線路「スイッチバック」などで鉄道ファンには人気がある。えびの市内の住民らがボランティア団体「真幸駅友の会」をつくって、駅舎の掃除をしたり、土日祝日に駅で地元産品の売店を開いたりしている。
その会長の上熊須さんが、猫用の食器にカリカリのえさとカツオ節を盛ると、2匹はガツガツと食べた。満腹になると、いすの下でうとうとし始めた。
いずれもオスで、「クロ」「ミー」と名付けられている。2年ほど前から現れ、上熊須さんが火曜と木曜にえさやりに来るほか、土日祝日には友の会のメンバーがえさを食べさせる。もう1匹、「チャチャ」という名の猫も時折、姿を見せる。えさ代は観光客らの寄付で賄っている。
駅舎の軒下には、ねぐら用の段ボールや毛布が置いてある。猫が自由に出入りできるよう駅舎の入り口は常に少しだけ開けてある。
「駅長」猫もいた
真幸駅には、かつて「タマ」という「駅長」猫が居着いていた。人なつっこく、観光客に愛されていたが、数年前、姿を消したという。上熊須さんは「クロちゃんとミーちゃんにも『駅長』になってほしいのですが、この子たちは自由すぎて、あまり居着かない」と苦笑いする。
居眠りを終えると、2匹はどこかに去ってしまった。友の会の人には慣れているが、観光客に体をなでさせることはほとんどないという。
(神谷裕司)
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