大病を克服した保護猫「ばくてん」、犬と同居を始め「犬化」

 大抵の家猫はこちらの様子を伺っていて、すぐに近づこうとするならば、はばかれるもの。しかし、この家の猫は違った。目と目が合う前からグググと私を目掛けてやってくる。そしてスリスリ&ゴロゴロ、こんなにも猫から大歓迎を受けたのは初めてではなかろうか? 近寄りすぎて写真が撮れない! のもうれしい悲鳴ってことで取材を始めます。

(末尾に写真特集があります)

 客人が大好きな「ばくてん」は1歳10ヶ月の男の子。名まえの由来は背中(バック)に「点」の模様があったことから保護主さんが命名したものを飼い主の加藤京子さん(53歳・東京都在住)がそのままが良いと引き継ぎました。

 遊びが大好き! 獲物を仕留めてドヤ顔のばくてん。 (テクニック1)
遊びが大好き! 獲物を仕留めてドヤ顔のばくてん。 (テクニック1)

 ばくてんの命は一本の電話から救われました。「トラックの荷台で母猫に見離された子猫たちがいる」と連絡を受けた保護主さんがレスキューに行くと、生まれて間もないずぶ濡れの4匹の子猫がいました。すぐに保護し、動物病院へ。その後、保護主さん宅で育てられるも、1匹は力尽き、虹の橋を渡ってしまいました。

 やがて離乳食が始まり、「亡くなったきょうだいの分まで頑張ろう!」と思った矢先、ばくてんにも同じような症状、陰部に難が見つかりおしっこがうまく出せなくなるように……。手術は必須でそれに耐えうる体力、体重が増えるのをただただ待つというもどかしい日々が続く中、とうとうばくてんの容体が悪化、膀胱がパンパンに腫れ上がり即入院、緊急手術となったのです。

 手術は成功、ばくてんを保護してから約2ヶ月が経過していました。術後も良好でおしっこを流すカテーテル付きで退院も許されました。やがてカテーテルが外れ、ついにばくてんの新しい家族の募集が開始されるのです。

 京子さんは保護主さんと友人関係で、ばくてんが保護された時から状況を把握し、応援してきた間柄です。またハンデのある猫になかなかお声が掛からないこともなんとなく察していました。そして、「獣医さんが頑張って友人も頑張った、次は私の番だ」と、大手術を乗り越え懸命に生きようと一番頑張ったばくてんとこれからずっと一緒に歩んで行きたいという気持ちが自然に湧き上がるのでした。京子さんは、ばくてんの新しい飼い主として申し出ることにしたのです。

 躍動するばくてん! すごいジャンプ力だー! (テクニック2)
躍動するばくてん! すごいジャンプ力だー! (テクニック2)

 ばくてんは完全に完治した状態で京子さんの家にやってきました。保護してから5ヶ月が経過していました(その間2匹のきょうだい猫も新しい家族の元へ)。

 ばくてんと京子さんの日常。お互いの匂いを共有するのだ。 (テクニック3)
ばくてんと京子さんの日常。お互いの匂いを共有するのだ。 (テクニック3)

 京子さんの家には大きなラブラドールレトリバーとゴールデンレトリバーのミックス犬、小型犬がいて、たまにこちらの様子を伺いにくる猫らしい猫の姿も。犬3匹、猫3匹の総勢6匹の大所帯を京子さん夫婦と京子さんのお父さんの3人でワンワニャガニャガ過ごしているとのことです。犬との生活が随分長かったという京子さん、猫歴は意外と浅く5年ほど。はじめは猫とどう接していいのかわからなかったというのですが、犬と同じような接し方をするうちに「猫が犬化」し、犬と同じ行動を取るように。ばくてんは先住犬、先住猫に対しても友好的で、人間に対しても恐れることはありません。人間を信頼してくれてありがとう。

 ばくてんを受け入れてくれた先住猫の「うり坊」(5歳)。
毛づくろいをする姿にほっこり。
ばくてんを受け入れてくれた先住猫の「うり坊」(5歳)。 毛づくろいをする姿にほっこり。

 この日もばくてんの大歓迎から始まり、帰り際のお見送りではドアノブに手を掛けて、「まだ帰らないで!」とまっすぐな目で私を見る犬化ぶり! 「もう!」完全に犬社会に馴染んでいるばくてんがワンワンいう日も近いかも!?

【撮影テクニックの説明】
テクニック1「サイド光」
右から差し込む光で被写体左に影を落とし陰影をつける。立体感のある写真に。

テクニック2「連写」
遊びのシーンは連写+高速シャッタースピードで動きを止める。
(シャッタースピード1/1000秒、絞りF2.8、ISO800)

テクニック3
飼い主さんと愛猫の写真は関係性を探る上でも必須。「撮って欲しい」とリクエストされることも多々あります。
背景をシンプルにすると、被写体が浮き上がるよ!
ケニア・ドイ
写真家。人物、商品撮影を得意としながら、犬猫カメラマンとしても活躍。雑誌「ねこのきもち」「いぬのきもち」掲載多数。長寿猫をテーマにしたフェリシモ猫部「猫又トリップ」の連載は100回を超える。著書に「ぽちゃ猫ワンダー」「ご長寿猫がくれた、しあわせな日々」。現在、黒を背景にしたペット撮影会「ドイブラック」(Instagram:@doi_black)で全国行脚中。

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この連載について
ツンデレラたちの撮りセツ
美しい猫の写真で知られる写真家ケニア・ドイさんが保護猫たちを取材します。ストーリーに加え、猫写真の撮影テクニックも解説します。
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