猫は本当に魚好き? 食に敏感な猫の「ごちそう」とは

お魚は好きですか?
お魚は好きですか?

 「猫は魚が好き」「ちくわをあげると喜ぶ」というのは、多くの方の共通認識でしょう。しかし、魚やちくわを食べている猫は、本当に「おいしい」と思っているのでしょうか。研究や実験を重ねることで、猫が味を感じるシステムが少しずつわかってきました。猫にとっての「ごちそう」とはいったいどんなものなのか、考えてみましょう。

猫は「味」を理解しているの?

 人間が食事をするときは、目で食べ物の外観を楽しみ、鼻で香りを感じて、舌で味わいます。実際に食べなくても、料理の写真を見るだけで「おいしそう!」と楽しい気分になるのは、食事を目や耳も使って味わっているからでしょう。それでは、猫はどうなのでしょうか。

■猫にとっての味わい方
 猫はまず、「鼻」で食事をチェックします。もっとも猫の場合は、「おいしそうかどうか」よりも、「安全な食べ物かどうか」ということがチェックのポイントになります。腐った食べ物や毒のある食べ物を敏感に察知できなければ、野生の中で生き残ることはできないからです。
 鼻が「合格」と判断したら、次に舌の先で食べ物をチェックします。鼻と舌で「大丈夫」と判断してから、ようやく本格的に食事を始めるというのが、猫のやり方なのです。

■猫の舌、その働き
「猫の舌の先」は食べ物のチェックに使われるくらいですから、当然、味を感知できます。同様に、舌の根元と両脇にも、味を感じるための味細胞があります。
 ところが、舌の中央の「ザラザラした部分」には、味細胞はありません。水を飲んだり、食事をしやすくしたりするために突起がついているのですが、ここで味を感じることはできないのです。

■猫が舌で感じている味
 猫は、舌先や根元、両脇で味を感じ取れるとご紹介しましたが、人間と同じように味を認識しているわけではないと考えられています。危険な食べ物を判別する判断基準になる、「酸っぱさ」「苦さ」「塩辛さ」については強く感じているものの、そのほかについては「詳細はまだよくわからない」というのが現状です。

 そんな中、研究を重ねることで、だんだんとわかってきたこともあります。それが、「猫は体を構成するために必要なたんぱく質に敏感である」ということです。ですから、猫はたんぱく質を多く含む肉の味に敏感なのです。

猫は魚好き?好物って本当は何?

「魚好き」というのは、昔から多くの方がイメージしている猫の姿です。しかし、これは本当なのでしょうか?

 猫は肉食動物ですから、魚を食べることもあるでしょう。しかし、「ネズミを捕る」という習性からもわかるように、すべての猫が特別魚を好んで食べているというわけではありません。猫が何を好んで食べるかは、その猫がどのような環境下で育ってきたかということに左右されます。

 例えば、漁村で育った猫は魚好きになりますし、肉を与えられて育った猫は肉好きになります。これは、単純な好みというよりは、「これは安心して食べられる」と幼いころに教わった食べ物が、そのまま好物になったということでしょう。

猫は人間より嗅覚が優れている
猫は人間より嗅覚が優れている

■猫は「スイーツ」に興味がない
 猫は、「甘味」に鈍感だといわれています。甘い水と普通の水を区別させる実験でも、「猫は両者の違いがよくわかっていない」という結果が出ています。
 人間にとって、ブドウ糖は活動のために必要なエネルギーです。人間は、このブドウ糖を炭水化物から摂取しています。一方、猫はブドウ糖をアミノ酸から作り出していますので、炭水化物を感知する能力がいらないのです。
 とはいえ、最近では、甘味をつけた牛乳や、甘いフルーツヨーグルトを喜ぶ猫がいることもわかってきました。「母乳の味に似ているから」とも考えられますが、実際の猫の母乳は牛乳や乳製品よりもずっと濃いため、同じ味というわけではありません。猫の味覚や嗜好もまた、まだまだ謎が多いのです。

■気を付けたい!猫の食生活
 ここまで、猫が食事に敏感ということについてご紹介してきました。実際、何かを理由にしてフードを食べなくなったり、好きだからといって食べさせすぎて病気になったりということがありえるのです。
 飼い主は猫の食生活について、どんなことに気を付けなければいけないのでしょうか?

■いつものフードを食べないとき
「いつもと同じフードを出しているのに、食べなくなってしまった」というときは、猫の鼻や舌先によるチェックで「不合格」が出てしまったからかもしれません。ドライフードが湿気ていたり、食器が汚れていたりしたことで、いつもと違う香りになっている可能性があるでしょう。猫は人間よりも嗅覚が優れているので、飼い主が気付かない「異変」に気付いているのかもしれないのです。

■新しいフードに切り替えたいとき
 新しいフードに切り替えたいときにも注意が必要です。急にまったく違う匂いのフードにしてしまうと、警戒心からフードを食べなくなるおそれがあります。
 フードを切り替えるときは、なるべくこれまでのフードと匂いや味が似ている物を選びましょう。猫が好むウェットフードといっしょに与えることで、嗜好性を高めることもできます。

■注意すべき食べ物
 猫に「おやつ」と称して、人間の食べ物を与えることもあるのではないでしょうか。「魚の干物」「ちくわ」「塩鮭」「カニ」などは、猫が喜んで食べることも多い魚介類ですから、つい、食べさせる飼い主もいるでしょう。
 しかし、このような食べ物は、猫の体に対して多すぎるミネラル類を含んでいる「注意すべき食べ物」なのです。
 前述のとおり、猫はたんぱく質の良し悪しには敏感ですが、「塩分」には鈍感で、十分に察知することができません。つまり、猫自身が、「これは自分にはしょっぱすぎる」などと判断することはできないのです。
 このような食べ物を摂取しすぎると、膀胱結石などになってしまうこともあります。喜ぶからといって、与えすぎないように注意しましょう。

「飼い猫のひみつ」
著者:今泉忠明/発行:イースト・プレス/価格:800円+税/新書判、212ページ
「猫はふしぎ」
著者:今泉忠明/発行:イースト・プレス/価格:760円+税/新書判、192ページ
監修:今泉忠明
動物学者。日本動物科学研究所所長。1944年、東京都生まれ。上野動物園の動物解説員、「ねこの博物館」館長などをへて、現在は奥多摩や富士山の自然調査に取り組んでいる。監修に『おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』(高橋書店)など、ほか著書多数。

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