引退した盲導犬を世話するボランティア 労ねぎらい最期まで
盲導犬や介助犬は高齢になると引退する。その引退した犬を引き取って労をねぎらい、最期まで添い遂げる家族のことを「リタイア犬飼育ボランティア」という。訓練された元補助犬は従順で飼いやすいと思われがちだが、現実には健康面など難しい側面もある。
落ち着いた引退犬を引き取る
大阪在住のAさんは、かつては3匹の犬を飼っていたが、順に老化と病気で亡くなってしまった。その数カ月後にリタイア犬飼育ボランティアに登録したという。登録しておくと、リタイア犬が出た時に連絡があり、実際に引き取るかどうか話を進めることができる。登録してもなかなかリタイア犬に巡り会えない人もいれば、すぐに見つかる人もいるそうだ。
Aさんが子犬や若い犬ではなく、あえて引退したシニア犬を引き取ることにしたのには理由があった。
「盲導犬の試験に受からず不合格になった犬は、キャリアチェンジといって、一般家庭のペットになることがあるのですが、そういう子をもらうことは考えませんでした。引退したシニア犬は、性格が落ち着いているし、室内で生活することに慣れていると考えたのです。いままで仕事をしてきた労をねぎらいたいという思いもありました」
病気を持っている犬も
元盲導犬や元介助犬というと、よく訓練されており、大人しくて賢く、品行方正、誰でも飼いやすいと考えられがちだが、彼らも生き物だ。引退した時、すでに病気を抱えている犬もいるという。
「リタイア犬飼育ボランティアに登録してから、しばらくして1匹の元盲導犬を紹介されました。電話で話を聞くと、毎日薬を飲んでいるというのです。正直、ちょっと大変じゃないかなと思いました。次に紹介されたのがダリアでした。この時は、京都の亀岡にある関西盲導犬協会まで話を聞きに行ったのです。すると、耳血腫と皮膚病があるし、尿管結石も溜まりやすいというではありませんか。状況を聞くと不安になりましたが、この時、振り向くとダリアがいました。可愛いとか可愛くないとか、病気があるとかないとか関係ない、縁で結ばれていると思えました。のんびり余生を過ごしてほしいと、引き取る決心したのです。仕事をやめたらストレスがなくなるんじゃないかとも思ったのですが、実際、のんびり暮らすうちに、皮膚病や尿管結石は、だんだん良くなっていきました」
老犬介護に備えて
通常、盲導犬が引退するのは、10歳くらいだが、ラブラドール・レトリーバ-のダリアは7歳で引退した。まだまだ元気いっぱいで、リタイア犬というような落ち着いた雰囲気は感じさせなかった。他の犬と遊ぶようには育てられていないので、興味は示しても、犬と遊ぶことはなかった。しかし、人のことは大好きで、新しい環境にもすぐに慣れたという。
Aさんは老犬介護の資格を持っており、介護が必要なペットのシッターもしている。ダリアはまだ体力もあり、足腰もしっかりしているが、介護が必要になった時のことも考えて、「日本サービスドッグ協会」にも登録したそうだ。
「シーツや車椅子を貸与してもらえるし、手作りの補助具を借りることもできます。みんなで老犬介護に関するアイデアを持ち寄れるので、心強いんです」
関西盲導犬協会の場合、リタイア犬の所有権は、ボランティアではなく協会にある。そのためフィラリアの予防薬や混合ワクチンの費用など、医療費面で、さまざまな補助が用意されている。
盲導犬にもいつか必ず老いが訪れる。病気になるかもしれないし、介護が必要になるかもしれない。長年の労をねぎらって、温かく暮らす家庭が必要だ。Aさんの夫は、しばしばダリアに「ご苦労さん!」と声をかけるという。
![私って可愛い?](http://p.potaufeu.asahi.com/ee59-p/picture/13541690/9b64bc32a4b82e9a01bb4bab1801562b.jpg)
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