ペットは家族「一緒にいたい」 西日本豪雨で同伴専用の避難所

総社市役所西庁舎に避難する犬・ベッキーと飼い主。生活環境の変化は犬にも負担がかかるという=18日、岡山県総社市、角野貴之撮影
総社市役所西庁舎に避難する犬・ベッキーと飼い主。生活環境の変化は犬にも負担がかかるという=18日、岡山県総社市、角野貴之撮影

 西日本豪雨で多くの家屋が浸水被害にあった岡山県倉敷市真備(まび)町などの住民の避難生活が続く中、ペットと一緒にすごせる避難所を作る動きがある。飼う人には「家族」でも、動物が苦手な人もいる。自治体は工夫をこらしつつ、被災者の「心のケア」も期待する。

 倉敷市に隣接する総社(そうじゃ)市。散歩から帰った犬が市庁舎に入っていく。3階の会議室はじゅうたんが敷きつめられ、飼い主のそばで犬や猫がくつろいでいた。

 愛犬ベッキーを抱いた倉敷市真備町の女性(74)は市内の避難所で犬の同伴を断られ、やってきたという。「犬も人間も一緒にクーラーがきいた所におれて幸せ。本当に感謝です」

 7月10日以降、最大で21世帯、犬20匹と猫5匹が避難した。19日朝現在、13世帯、犬13匹と猫4匹がいる。全員が真備町民だ。近くの公園の管理棟や公民館も同伴専用の避難所として提供している。

動物好きの市長、市役所開放「心のケアに」

 場所を提供するよう指示した片岡聡一市長は、以前犬や鳥を飼っていたことがあり、動物好き。「ペットは家族であり魂。なるべくいい環境を提供したい」。当初、避難所として使われた体育施設きびじアリーナにはペットを連れた避難者も多く詰めかけ、サブアリーナがペット同伴専用の避難所として使われた。だがクーラーが使えないため閉鎖。空調の整った環境でペットと一緒に過ごしてもらうため、10日から市役所のスペースを提供している。

 2011年の東日本大震災の後、環境省はペットの避難についてのガイドラインを作り、自治体も検討を進めてきた。総社市が作成途中だった避難所運営マニュアルでは「屋外にペット専用スペースを設ける」としていたが市の担当者は「避難所を転々としてきた人が多い。いまペットと避難者を分けると、双方のストレスになる」と判断。獣医師が定期的に来てノミやダニのケアなどにあたる。

 市の担当者は「被災者がペットと一緒にいることが心のケアにもなる」と説明する。真備町の佐藤富男さん(81)は足が不自由で片付けに参加できず、日中も避難所で過ごし、長女夫婦の愛犬ココアの面倒をみる。「お守りができるだけでずいぶん気が楽になる」

総社市役所西庁舎に避難するココア(雌、8歳)と見守る倉敷市真備町の佐藤富男さん(81)=18日、岡山県総社市、角野貴之撮影
総社市役所西庁舎に避難するココア(雌、8歳)と見守る倉敷市真備町の佐藤富男さん(81)=18日、岡山県総社市、角野貴之撮影

ペットとともに生活 学校の教室も利用

 倉敷市でも、複数の避難所で学校の教室をペット同伴専用の避難所として使用している。避難所運営マニュアルには「アレルギーや感染症予防のため、ペットは避難者の生活の場とは別の場所に受け入れる」とあるが、「施設に余裕がある場合はともに生活できる部屋を別に設けることも検討」と補足されている。

 藤原心一さん(42)、明美さん(43)夫婦は、愛犬ちゃー助とボートで救助され、市立二万(にま)小学校に運ばれた。「室内犬だから一緒にいたい」と、1週間ほど廊下で寝泊まりした。「暑いし、全身を羽アリに刺されてつらかった」。運営スタッフから総社市役所への移動を勧められたが、「車が水没して移動手段がなく、家の片付けもあるから近くにいたい」ととどまった。

 15日から教室に入れるようになり、2世帯2匹で暮らす。明美さんは「今は快適。もっと早く対応してもらいたかった」と話した。(河崎優子)

熱中症、ペットも注意 散歩でケガ・感染の恐れ

 猛暑の続く西日本豪雨災害の被災地でペットと過ごす際、どんな注意が必要なのか。

 岡山県獣医師会などによると、ペットも熱中症対策が重要だ。体が熱い、よだれが大量に出ているなどの様子があったら、日陰にすぐに連れて行って水をかける。首元や脇、股の内側をぬらしてあおぐのも効果的で、体温を下げる努力をして獣医師に連絡する。

 散歩にも注意がいるという。水害の被害地域では釘やガラスなど、肉球を傷つける危険物が落ちている恐れがある。また、犬の肝臓や腎臓に障害を引き起こす、レプトスピラという細菌への感染の恐れもある。気温が高く湿った環境で特に危険性が高まるという。

 岡山県獣医師会(086・243・1879)は被災ペットの一時預かり支援を実施。広島市にも「緊急ペット相談窓口」(082・243・6058)がある。(沢木香織)

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