おしゃれな紙製のキャットウォーク ヒントは実家の猫だった

 軽い段ボール紙でできたキャットウォーク。簡単に組み立てられ、環境にもやさしいと「ニャンダフルシェルフ」が注目を集めている。商品を企画したのは、秋田市にあるデザイン会社。開発のヒントは、実家から引き取った猫たちだった。

(末尾に写真特集があります)

 開発したのは、(株)コンセプトの社長、斎藤邦幸さん(63)だ。会社は2007年創業で、もとはグラフィックデザインやウエブデザイン、広告制作などを手がける会社だった。猫の遊具の企画開発を始めたのは、2年ほど前とまだ日が浅い。

ニャンダフルシェルフで遊ぶ猫たち (コンセプト提供)
ニャンダフルシェルフで遊ぶ猫たち (コンセプト提供)

軽く、組み立ても簡単

 評判の商品は、組み立て式のキャットウォーク「ニャンダフルシェルフ」。床と天井の間に支柱となる紙の管を建て、棚をわたして、隠れ家になる箱や爪研ぎを配置する。材料は国産の強化段ボールで、釘やネジを使わずにパーツを組み立てる方式。支柱はバネで支えており、壁や天井を傷つける心配もないという。見た目もおしゃれな印象だ。

 ほかに、箱やステージを2個備えたキャットタワー「CATS」や、狭いところが好きな猫向きの「かまくらハウス」など、ユニークな商品を10アイテム以上そろえている。

 段ボール製のため、軽いのも特徴。「地震が起きて、仮に倒れたとしても、安全」という。

キャットタワー「CATS」で遊ぶこまち 
(コンセプト提供)
キャットタワー「CATS」で遊ぶこまち  (コンセプト提供)

 発売当初から「環境にやさしい」などとテレビ、雑誌で取り上げられたが、斎藤さんは「試行錯誤の連続、楽々きたわけではない」という。猫の商品の開発をしたのは、60歳近くなってからで、時代の流れもあった、という。

「印刷物のデザインを仕事にしてきたけど、世の中がデジタル化して紙媒体がだんだん読まれなくなって…。できることはないか、と仕事の幅を広げていきました」

 東日本大震災の後には、復興支援のキャラクター「東北ずん子」の商品開発をしたり、東京のアニメイベントに関わったり、強化段ボールを使ったインテリアの開発をしたりした。

「さらに面白く、役立つものを出したい」と思っていた頃、大仙市の実家にいた猫を引き取ることになった。

実家から連れてきたレイチェル
 (コンセプト提供)
実家から連れてきたレイチェル  (コンセプト提供)

実家の猫を室内飼いに

「実家は農家。親が近所の猫を可愛がって母屋にも入れていた。お腹すくから可哀そうだと言って。でも、両親とも病気で倒れ、空き家になって猫が残ってしまった。それで私が秋田市から1時間以上かけて世話に通ってね。人に慣れずにいなくなった猫もいたんですが…。幸い数匹が納屋に住みついて残り、その子たちを車で家に連れ帰ったんです」

 連れてこられた猫は、街の中で完全室内飼いとなった。レイチェル、クレオパトラ、ガリレオという洒落た名前をもらって。

「ガリは頭のいい猫だったんだけど、3年くらい前に脳腫瘍になって、助からなくて…。猫たちと過ごしていると、『室内で遊べるこんな商品があったらな』と考えることが増えました。猫は段ボールで遊ぶので、工業用の紙管と合わせたら何か作れないかと」

 そうして考案したのは、マンションのような狭い空間でも、壁につければ部屋を広々使えるデザイン。猫が嘔吐や粗相をしても、すぐにへたれない耐久性、女性1人でも組み立てられるシンプルさ…。実用化に工夫を重ねた。

 自宅には「Catpia(キャットピア)」という体験型モデルルームも作った。そこには今、3匹の猫がいる。実家から連れてきたレイチェルと、秋田の愛護団体から譲り受けたジョブズとこまち。その猫たちの遊び方や喜び方が開発のヒントにもなるという。

「この距離を飛ぶんだな、とか、あそこに喜んで隠れるんだ、とか猫が教えてくれる。昔から猫は好きだけど、以前は愛玩という感じではなく、そこらに自然にいるという意識だった。今は室内で大事に育てるのがいい、と思うし、そのためのいい玩具があればと思う。それも時代の変化ですね」

キャットタワー「ポール&ボウル」で爪を研ぐジョブズ 
キャットタワー「ポール&ボウル」で爪を研ぐジョブズ 

部屋に合わせてセミオーダー

 ただし、部屋の大きさに合わせてサイズを決めるセミオーダーのため、価格は一般の猫柱やタワーに比べると、やや割高だ。

 大型サイズの「ニャンダフルシエルフ」(高さ2300~2700ミリ×幅2520~2920ミリ)は6万円台、中型サイズでも3万円台。オプションで収納ボックスやハンモックを付ければさらに値段があがる。専門の塗り師が赤や黒に塗装したカラーバージョーンは、値段も10万円越えとゴージャズだ。

「材料、デザインとすべてオリジナル。セミオーダーなので、一度に大量に作れないため、どうしてもコストがかかります。でも、保護猫を飼う方へのサービスをすることもあるんですよ」

 これからも猫と飼い主に喜んでもらえる商品を提案したいと話している。

コンセプト
Cat pia  

藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は19歳の黒猫イヌオと、5歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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