目と耳が不自由な高齢犬がまっすぐ前に進めない 多くは原因不明

(写真は本文と関係ありません)
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Q:失明し、耳も聞こえにくくなっていた14歳の柴犬(しばいぬ)が、最近になってまっすぐ前に進めず、時計回りに回り続けるようになりました。リードで軽く引っ張ってあげると、前に進みます。(三重県・女性)

A:多くは原因不明、数週間かけ回復する

 意識や知能に問題がなく、四肢の運動機能にも異常がないのに、正常な動きができなくなることを運動失調と言います。まっすぐに歩こうとするのに曲がってしまうような状態は、その典型的な症状です。

 原因によって大きく三つにわけられます。何らかの傷や腫瘍(しゅよう)によって、筋肉や関節の動きに障害が出るのが脊髄(せきずい)性。小脳の機能に異常があるため、脚をそろえて立つことができなくなったりする小脳性。そして比較的よく見られるのが、はっきりした原因のわからない前庭性で、特に「特発性前庭障害」と呼びます。

 10歳を超えた、高齢の犬で発症することが多いとされています。内耳にある感覚器官の前庭には、頭や体を重力に対して正しい位置に保つ機能があります。

 前庭に障害が出ると、頭が傾いたり、ぐるぐる回り続けたりという行動を取るようになります。目が無意識のうちに上下左右に動く症状のほか、嘔吐(おうと)や食欲不振が見られる場合もあります。

 猫でも見られる病気で、猫の場合は年齢に関係なく、夏と初秋に発症する傾向があります。

 原因がわからないため、有効な治療法はありません。ただ通常は、数週間かけて徐々に回復します。症状が出ている間はしっかりと介護してあげ、食欲不振が深刻な場合には補液などを検討しましょう。いずれにしても、なるべく早めに動物病院に行き、獣医師に相談することが大切です。

山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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この連載について
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動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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