出会いはドラッグストア 保護猫「水丸さん」を引き受けた夜
モデルや女優として活躍する松田珠希さんが、行き場を失った猫と暮らす日々をつづります。新たな「家族」と初めて会ったのは、意外な場所でした。
水丸さん、11歳、メス猫──。彼女とは、ある里親募集サイトで出会った。女の子なのに水丸さんて……、と思われるかもしれないが、元の名前は「ケンちゃん」だったようなので、まぁいいだろう。
小さい頃から猫が好きだった私が、猫と暮らす日々を妄想しながら里親サイトをはしごしていたのは2年前。ある日、何やら誠実そうな目をした成猫の写真が目に留まった。
色はちょっとオシャレなミルクティー色(?)なのに対し、顔が完全に和顔。なんだかちょっと残念で可愛い。プロフィールを見ると「9歳、女の子。性格はおっとり」。要するに「落ち着いた大人の女性」←都合良く解釈。
本当に猫を飼えるのか? この子を幸せにできるのか? 私に全然慣れてくれないかもしれない、すぐに病気になるかもしれない、将来は介護で大変かもしれない。
さまざまな自問自答をひとつずつクリアにしたのち、思い切って飼い主さんに連絡をした。
里親になるにあたり、住環境など詳しく聞かれると思っていたが、すぐに譲渡が決まった。
聞けば、当時の飼い主さんにはどうしても猫を飼い続けられない理由があった。猫を手放さなくてはいけない日が迫り、焦っていたのかもしれない。あまりの呆気なさに拍子抜けしたが、これで念願の猫との暮らしが決まった。
水丸さんの受け渡しは、自宅から車で40分ほど行ったところにあるドラッグストアの駐車場だった。新しい「家族」を迎えると思うと、かなりシュールな場所だ。
待ち合わせは、夜の9時ぐらいだったと思う。そこには、私と同い年くらいの小柄で可愛らしい女性が待っていた。
手にしていたのは、ピアノのお教室にでも持っていきそうな、すこぶる女子力の高いバーバリー風ピンクチェックの小さな肩掛けバッグ。そこに水丸さんは入っていた。
私は急に、可愛らしさとは無縁のわが家へ来ることに、この子は引いてしまうんじゃないかと不安になった。
5分ほどの短い立ち話。水丸さんは当時、ほかに2匹の猫(うち1匹は水丸さんが産んだ子)といっしょに飼われていたが、水丸さん以外は若かったので応募が多く、すでに別々にもらわれたらしい。最後にひとり残ったいちばん年長の彼女は、次は自分だと分かっていたのか、いつもはかたくなに入らなかったキャリーバッグに、この日は自分から入ったと言う。
受け取ったバッグはずっしり重くて、とても温かかった。(続く)
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。