子犬の問題行動! しつけがうまくいかなくても叱らないのがコツ

ドアを破壊しちゃった犬
ドアを破壊しちゃった犬

「子犬が家にやってきたら、しつけをがんばろう!」とは、多くの方が思うものです。ところが、実際にやってみると、なかなか思いどおりにいかず、ストレスが溜まってしまうという例も少なくありません。子犬を初めて迎えた方の中には、「育児ノイローゼになりそう!」と頭を抱えている方もいるのではないでしょうか。


 そこで、子犬の問題行動の原因や、しつけがうまくいかないときはどうすればいいのかについて、ご紹介いたします。

 

 

しつけはうまくいかないこともある

 犬には個性があります。犬種による性格の違いはもちろん、同じ犬種であっても、犬によって特性は違うのです。そのため、同じように育てても、しつけがスムーズに身に付く子犬もいれば、そうでない子犬もいるということを理解しておきましょう。犬ごとの個性に合わせたスピードや方法で、しつけをしていくことが大切です。


 しつけ本を見ながら同じように教えようとしても、なかなかうまくいかないこともあります。例えば、トイレの教え方としてよくいわれるのが「定期的にトイレに連れていく」という方法。中には、トイレに連れていったときにはするけれど、それ以外のときは別の場所でしてしまうというケースもあります。これは「トイレで排泄する」ことは身に付いていても、「排泄したいときにはトイレに行かなければならない」ということが身に付いていないことが原因として考えられます。しつけがうまくいかないときは、何が原因であるのかを検討することが大切です。


 このように、犬の行動には何かしらの原因があります。犬は言葉を話すことができませんから、その子のリアクションをよく観察して、何を考えているのかをくみ取ってあげるようにしてください。

 

 

しつけは犬の心理を理解できていないとダメ

 人間が一生懸命しつけをしているつもりになっていても、犬はその意図を理解することはできません。


 例をあげると犬が人間のスリッパをかじっていたら、やめさせたいと思うでしょう。しかし、「何やってるの! 放しなさい!」と怒鳴りつけて、無理矢理スリッパを引っ張ろうとすると、犬は「自分の獲物を奪われる」と感じて、余計にスリッパに執着します。


 犬の世界ではいったん自分が口にしたら自分のものです。それを無理やり取り上げることを繰り返せば、飼い主に対して不信感を持ち、唸ったり咬んだりといった反撃に出ることもあります。また、犬によっては、スリッパをくわえると飼い主がかまってくれるという認識を持ち、ますます頻繁にスリッパをくわえるようになる場合もあります。


 このような問題対処の基本は、犬にしてほしくないことは、できないように環境整備することです。具体的には犬の口が届く場所にスリッパなど犬に噛んでほしくないものを置かないということです。


 ただし、いろいろなものを噛むのは子犬の習性なので、噛むものを取り上げるだけではフラストレーションが溜まります。噛んでほしくないものを片付ける代わりに、犬用のおもちゃやガムなど、噛んで良いものを毎日与えるようにしてください。

 

足にかじりつく子犬
足にかじりつく子犬

 同時に、うっかりして置きっぱなしになっていたものを取り上げる際に、すんなり渡してくれるように「ちょうだい」の練習をしておきましょう。


 練習方法はまず噛んでも良いものを与え、「ちょうだい」と言って取り上げ、「おりこう」とほめて好物を与え、すぐに取り上げたものを返します。こうすることで、「飼い主に取られたと思ったら、もっとおいしいものをくれて、また返してくれた」と犬が思うようにするのです。


 この際、注意してほしいのは最初に犬に好物を見せないようにすることです。犬に好物を見せながら取り上げると、好物欲しさに余計にいろいろなものを口にするようになったり、あわてて口にしているものを飲み込んだりといった問題が起こる場合があります。


 また、好物の持ち合わせがない場合にでも、必要な時に口にしているものを取り上げることができるようにするためにも、最初は好物を見せずに「ちょうだい」と言って、取り上げた後で、ほめて好物を与えるようにしてください。(すでに口にしているものを取り上げようとすると唸ったり、攻撃的になる犬の場合はこれとは別の対処法が必要です)


 噛んでも良いものを使って十分練習すれば、うっかり置いておいたものを口にしている時にも、問題なく取り上げることができます。この場合も犬が取り上げられたと感じないように、取り上げた後には必ず好物を与え、くわえていたもののことを忘れさせましょう。


 こんなふうに人間は、犬の立場になって気持ちを理解することはできますが、犬が人間の考えていることを理解することは困難です。しつけを行うときは必ず、「犬の目線に立って、理不尽に物を取り上げたり、怒鳴りつけたりしない」ということが大切です。人間から見れば当たり前の叱責も、犬にとっては意味のわからないものだということを覚えておきましょう。


 それと同時に、すべての犬が同じ方法でうまくいくわけではありません。犬の気質に合わせた対処法が必要な場合もありますので、根気良く犬が誤解しない方法でのしつけを続けていかなければいけません。


 さらに、犬と正しく信頼関係が結べていることも大切です。「いい子」というほめ言葉や、飼い主が笑顔であること、なでられることなどは、好物と同様に犬にとっての大切な「報酬」になります。


 ところが、そもそも信頼関係が結べていなければ、それらの行為は報酬にはなりません。信頼関係を築くために大切なことは、困った行動を叱って直すのではなく、出来ないように環境を整え、子犬のニーズをしっかり満たすこと、いっぱい遊んで楽しくふれあうことです。

 

吠えだしたら止まらない
吠えだしたら止まらない

飼い主のイライラは犬に伝わる

 しつけがうまくいかないと、ついイライラしたり、犬にあたったりすることもあるかもしれません。しかし、そういうときに犬は、「なぜこの人が怒っているのかわからない」「この人は怖い人だ」と感じているかもしれません。


 このような状況では、犬と信頼関係を築くことは到底できません。


 言葉が通じない相手にものを教えるためには、心の余裕が必要です。しつけ教室や子犬の幼稚園、パピークラスなどに参加して、同じ立場の方と話をしたり、プロのアドバイスを受けたりしてみてください。


 悩みを誰かに相談して受け止めてもらうだけでも、気持ちが軽くなるはずです。一人で悩みを抱え込んで、犬にあたることがないようにしましょう。


(監修:村田香織)

 

「こころのワクチン ――子犬に教える人としあわせに暮らす方法」

著者:村田香織
出版社:パレードブックス
定価:1,543円 (税込)
体裁:四六判・294頁(ソフトカバー)

監修:村田香織
獣医師、もみの木動物病院(神戸市)副院長。イン・クローバー代表取締役。日本動物病院協会(JAHA)の「パピーケアスタッフ養成講座」メイン講師でもある。「パピークラス」や「こねこ塾」などを主催、獣医学と動物行動学に基づいて人とペットが幸せに暮らすための知識を広めている。

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この連載について
子犬の飼い方・しつけ方
犬のしつけで大切なのは、子犬の時期。飼い方やしつけのポイントを、動物行動学に詳しい獣医師に解説してもらいます。
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