沢尻エリカを支えて「今を生きる」猫 しなやかに演じた吉沢亮

猫の良男を演じる吉沢亮さん。映画は6月23日公開予定 ©2018『猫は抱くもの』製作委員会
猫の良男を演じる吉沢亮さん。映画は6月23日公開予定 ©2018『猫は抱くもの』製作委員会

 私の新作猫映画「猫は抱くもの」では、猫ものを何度か手がけてきた私にしても、かつてなく多くの猫が出演している。それに加え、猫の擬人化にも挑戦。人が猫を当たり前のように演じるシーンが頻発する。


 主役の沢尻エリカ扮する沙織は元アイドル。今は流れ流れて地方でスーパーの店員をしている。彼女のうまくいかない、置いてきぼりのつらい日々に寄り添い、支えとなってくれるのがロシアンブルーの良男。この良男はほとんどのシーンで人として登場する。


 演じるのは今をときめく吉沢亮。ロシアンブルーのしなやかさ、美しさ、運動神経を自然と感じさせる若手俳優、しかもこんな猫と一緒だったら最高じゃんと思わせるルックス。そんな欲張ったキャスティングを目指したので苦労するかと思ったら、「吉沢亮が良いんじゃない?」とすぐにアイデアが出て、脚本を送ったら快くOKしてくれたのだった。なんという幸運。


 吉沢に、猫を演じる上でどんなところを気にしたのか尋ねてみた。


「形から入るってことですかね。目つきとか、動き方とか」。吉沢の瞳の輝き、瞬発力、しなやかな動きは本当に美しく、セクシーで、撮っていて心躍らされた。「あと、前のことに引きずられないっていうか、先のことも考え過ぎないっていうか」。そう言われて、「ああ」と腑(ふ)に落ちた。そう、猫は過去を人間のようにいつまでも抱え込まない。


「未来のために、なんて考えないで、目の前にいる沙織の表情ですぐにころっと心持ちが変わるみたいな、そんな感じでやってました」。聞いた私は応えた。「今を生きる。今を一番大切にするみたいなことだよね」。吉沢はにっこり笑って頷(うなず)いた。


 人は過去に囚(とら)われ、未来のためについ今を犠牲にしてしまうところがある。
猫は、いや動物たちは、常に「今を生きる」から、人にはキラキラと見え、目が離せないのだろうか?

犬童一心
1960年東京生まれ。映画監督。主な監督作品に「金魚の一生」「二人が喋ってる。」「金髪の草原」「ジョゼと虎と魚たち」「メゾン・ド・ヒミコ」「のぼうの城」など

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この連載について
遠い目をした猫
「グーグーだって猫である」などを撮った映画監督で、愛猫家の犬童一心さんがつづる猫にまつわるコラムです。
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