原発被災地で犬や猫を保護する元作業員 今も捨てられる動物たち

保護した秋田犬と赤間さん(太田康介撮影)
保護した秋田犬と赤間さん(太田康介撮影)

 東日本大震災による福島第一原発事故から間もなく7年。昨年春に一部の避難指示が解除された福島県双葉郡浪江町に、自宅を開放し、犬や猫の保護活動を続けている元原発作業員の赤間徹さん(54)を訪ねた。

 

(末尾に写真特集があります)

 

「猫は全体で57匹、犬は22匹(12月の取材当時)。世話に明け暮れて、現在仕事はしていません」


 浪江町加倉の国道114号沿いに、赤間さんの保護犬・保護猫“私設シェルター”がある。赤間さんがかつて経営していた建設会社と、同じ敷地内にある自宅を、震災の後、動物たちに開放したのだ。

 

震災前から飼っている「ビザンツ」
震災前から飼っている「ビザンツ」

 案内されて「赤間工業」と書かれた建物に入ると、猫がニャーッと出迎えてくれた。会社で使っていたソファに、猫が2匹、3匹くつろいでいる。どの猫もふくよかだ。


「15畳ほどのスペースですが、震災後に生まれた若猫から年齢不詳の老猫まで、この部屋にいるのは14匹。いろいろあったけれど、みな落ち着いて人懐こいですよ……」


 2011年3月11日午後2時46分。あの大地震が起きた時、赤間さんは福島第二原発にいた。


 海のすぐ側、地下10メートルの所で、溶接の仕事をしていたのだ。仲間と地上に上がり、裏道を車で走って自宅に戻ると、家がめちゃくちゃになり、犬が騒いでいた。

 

手作りのドッグランで喜んで遊ぶ保護犬(太田康介撮影)
手作りのドッグランで喜んで遊ぶ保護犬(太田康介撮影)

 実はその頃も10数匹の犬を飼っていた。


「うちの子どもが通う小学校に捨てられた犬で、先生に『飼う人がいないと保健所にいく運命です』と相談されて。好きと言うか、可哀そうで、全部引き取った。女房が外で拾った『ビザンツ』という子猫もいて、当時も賑やかだったんです。そこへ震災が起きたからねえ」


 赤間さん宅は海からは6キロ。津波の心配はなく、家族も無事だったが、停電になっていた。翌日、スピーカーで「(町西北部の津島に)避難するように」と町民に伝えられたが、赤間さんは家に留まって妻とともに、家の片づけと動物の世話をした。3日目になると、逃げていた犬が表を歩くようになり、餌をあげ始めたという。


「震災4日目、(一時避難していた津島から)バスで二本松市に避難することになったが、犬は乗車できない。それで皆が放したわけですが、犬たちが一斉に住んでいた町に向かって群れをなして戻っていった。チワワから大型犬まで道幅いっぱいになってダーッと……衝撃的でした」


 その光景を目の当たりにした赤間さんは、1匹でも多く助けてあげようと思ったという。約10日間で数十頭を保護したが、やがて約70キロ西に離れた郡山市に避難をせざるをえなくなった。


 だが赤間さんの活動がそこで終わったわけではない。その後、原発で仕事をしながら、浪江町に取り残された犬や猫の保護を続けたのだ。


「震災からの2年間は、F1(第一原発)とF2(第二原発)で仕事をしました。F1の2号機の燃料が入った場所に、初めてカメラを入れる作業をしたり……。夜中のうちに犬を保護して車に置いて、仕事が終わったら浪江の家に連れていくというのを繰り返しました」


 赤間さんによれば、ほとんどの犬が保護された後に、猫がひょっこり姿を見せるようになったという。2013年9月からは、浪江町の豊田動物病院の豊田正院長と猫のTNRを始めた。地元の人が戻ってきた時、猫が増えていて困らないように のべ700匹の避妊去勢手術をし、ボランティアの手を借りながら、譲渡先を探した。仙台市の空港から遠く離れた岡山県の猫カフェまで保護猫を送ったこともあった。

 

昨秋シェルター前に置き去りにされた甘えん坊の「アイリス」
昨秋シェルター前に置き去りにされた甘えん坊の「アイリス」

 昨年3月末、避難指示が解除されたため、赤間さんは郡山市に家族を残し、1人で浪江町の自宅に戻って寝泊まりをするようになった。


「最近になって捨てられた犬や猫もいるんですよ」


 棚の上にいた長毛猫の頭を撫でて、赤間さんがいう。


「このアイリスは昨年10月、事務所の外(餌を置いた捕獲器)にいました。べたべたな甘えん坊なので、人に飼われていたとしか思えない」


 震災で犬や猫と別れて悲しむ人がいた一方、赤間さんがレスキューするのを見て、「人の飼っていた犬や猫になぜお金をかけられるのか」と不思議がる地元の人もいたという。


「被災者も動物への対応はそれぞれ。避難先でチワワを飼ったのに、新居を建てたら飼えないといって保健所に持ち込んだ人もいる。保健所とは震災時から情報交換をしているので、『赤間さんところ空いてる?』と相談され、犬を受け入れることもしばしばあります」

 

猫シェルターで最長老の「一二三」を抱く赤間さん
猫シェルターで最長老の「一二三」を抱く赤間さん

 昨秋、自宅から少し離れた畑に大きなドッグランも手作りした。シベリアン・ハスキーや秋田犬など大型犬を運動させるためだ。ハスキーはまだ3歳、震災後にブリーダーに遺棄されて、保健所に収容されていた。秋田犬は、2015年まで活動していた福島県動物救護本部(福島県、郡山市などが構成)の三春シェルターに最後まで残っていて赤間さんが譲り受けた。


「今も浪江町で保護活動をしているのは、自分と町職員の奥さんくらい。あとは他市や他県からいろいろな方が手伝いにきてくれます……地元の人が動物に関心を示さないのはさみしいですが、これからも自分に出来ることをしていきます」


 赤間さんは3月まで原発事故の賠償金を受けとっているが、精神的苦痛を対象とした賠償金(月10万円)は、郡山から毎日往復2時間かけて通った際のガソリン代など保護活動にほとんど費やしたそうだ。


 赤間さんにこの先の夢を尋ねると、「うちにいる犬や猫に新しい家族を見つけてあげたいね」と答えが返ってきた。


「飼い主とはぐれたり離れたりした過去を持つからこそ、あるいは人との生活を知らないからこそ、幸福にしたいと思い、自分なりの譲渡の条件を考えています。できれば家族がいて、健康を気遣って、すぐ動物病院に連れていってくれること。お年寄り(60歳過ぎ)の場合はサポートしてくれる人が必ず周囲にいてくれることが大事ですね」


 ブログ「3.11レスキュー日誌」ではハンドルネーム「おやじ」として動物との日々を発信している赤間さん。頼もしく献身的な動物たちの“父親”の活動は、まだまだ続く。

 

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  • 「大型犬を走らせたい」と赤間さんが昨年、手作りしたドッグラン (太田康介撮影)

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  • 旅立った子たちの亡骸はいつか郡山の家に連れていくと決めている

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  • ふっくらしたシェルターの猫

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  • 震災前に家の外で保護した「ビサンツ」は保護猫の接待係

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  • 赤間さんが昨年、手作りしたドッグラン (太田康介撮影)

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  • 楽しそうに走るシベリアンハスキーは元捨て犬だ(太田康介撮影)

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  • 被災者から預かり中の犬をあやす赤間さん

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  • 気持ちよさそうな秋田犬と赤間さん(太田康介撮影)

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  • 取材に同行したカメラマンの太田康介さんと保護された秋田犬

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  • 実家の敷地内に作った大型犬施設 約10頭いて散歩だけでも大変だ

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  • 一二三(ひふみ)は保護猫の最長老(推定15,6歳)

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  • シェルターのソファで猫を抱く赤間さん

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  • 壁に猫の写真と名前が貼ってある(一部)

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  • どの犬にも手をやさしい眼差しで手を差し伸べている

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  • 「よい縁があれば猫たちに新たしい家を見つけてあげたい」と赤間さん

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  • ドッグランで犬と遊ぶ赤間さん(太田康介撮影)
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藤村かおり
ペットライター。小説等の創作活動を経て90年代後半から、ペットの取材を手掛ける。2011年~2017年週刊朝日記者、2017年からsippoメインライター。丹念な取材と独自の目線から、動物と人の絆、動物と共に生きる人の心をすくい取る記事に定評がある。ペット関連の著書に『長寿猫』『明日にアクセス』など。現在は保護した黒猫、キジ猫と暮らす。
この特集について
ペットと人のものがたり
ペットはかけがえのない「家族」。飼い主との間には、それぞれにドラマがあります。犬・猫と人の心温まる物語をつづっています。
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