ふるさとの動物園でボランティアガイド 命のぬくもり伝える
「生後4日目なんよ。そっと包み込むようにね」
今月上旬、岡山市北区の「池田動物園」。モルモットやヒヨコなどと触れあえるコーナーで、藤沢悦治(えつじ)さん(66)は、髪をふたつに結んだ女の子(3)にヒヨコの抱き方を助言していた。「あったかい。やわらかい」と女の子は顔をほころばせた。藤沢さんは「このぬくもりを体のどこかに残してくれたならうれしい」と笑顔で話した。
愛媛大を卒業後、食品会社に就職。製品管理の仕事で、栃木、新潟などの工場に勤務し、単身赴任も経験した。「子育ては妻に任せきり。後悔があった」
動物好きをいかして、「地域の子どもに関われる活動をしたい」と、60歳で定年後、東京・多摩動物公園のボランティアになった。
半年間の研修で知識や話す経験を積み、動物ガイドを任されるように。「幅広く人と話ができ、うれしくてね」
2年前に故郷岡山に転居し、両親、妻との4人暮らしだ。平日は畑仕事と読書。週末は動物園で過ごす。
地方の動物園経営の難しさも知った。
藤沢さんが活動していた当時の多摩動物公園のボランティアは100人超。入園者も年間100万人前後にのぼった。自然に近い飼育環境で、ライオンも群れで生活する様子を伝えることができた。
一方、1953年に開園した民間の池田動物園。交通アクセスの問題もあり、来園者が年12万人を切った1998年から赤字が続く。施設改修もできず、ライオンならば、ぽつんと1頭がおりの中にいる昔ながらの動物園だ。
動物園と市民の有志は、市に公営化を求めながら、藤沢さんらボランティア20人が園と一緒に、ナイトズー(夜間開園)やクリスマスのリース作りなどを手伝っている。「状況は厳しいけれど、子どもに命の大切さを伝える場所を残せるよう、仲間を増やしたい」
(山内深紗子)
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