迷いネコの「ムクニャン」、不思議な縁で文学館のアイドルに!

気持ちよさそうにひなたぼっこをするムクニャン=長野県喬木村の椋鳩十記念館・記念図書館
気持ちよさそうにひなたぼっこをするムクニャン=長野県喬木村の椋鳩十記念館・記念図書館

 長野県喬木村出身の児童文学作家・椋鳩十(むくはとじゅう)(1905~87)をたたえるため設立した「椋鳩十記念館・記念図書館」に約2年前、一匹の茶トラのネコが迷い込んできた。「ムクニャン」と名付けられた、このネコには椋や同館と「不思議な縁」があり、いまや同館のアイドル的存在になっている。


 2016年1月22日朝、大原文男館長(65)が同館の駐車場に止まっていた車の下で「ニャー、ニャー」と鳴き声を上げるネコを見つけた。おびえずに人の後をついてくる姿に「飼い猫だろうな」と思ったという。


 村内の有線放送などで飼い主を捜したが、現れず。夜は大原館長が自宅に連れ帰り、昼間は、大原館長が段ボール箱で手作りの「家」を作り、館内で世話をした。すると、穏やかな性格が功を奏し、地元の子どもたちの人気者に。「世話をしていると、情が移った」と、そのまま大原館長が飼うことになった。

 

ムクニャンを抱く大原文男館長
ムクニャンを抱く大原文男館長

「私たちや椋先生と、多くのつながりがあって。とても不思議なんです」と大原館長。三つの「偶然」がそう感じる理由だという。


 一つ目は、同館にすでに存在していた「ムクニャン」という名前のネコのキャラクターと同様の「茶トラ」模様だったこと。「子どもたちがネコを見てすぐに『ムクニャンだ』ってうれしそうに話していて。すぐに名前は決まりました」と大原館長はいう。


 二つ目の偶然は、椋が生前、嫁ぐ長女のあかねさんに贈った「モモちゃんとあかね」という児童文学書との縁。モモは、あかねさんが幼少の頃に愛したネコ。そこに描かれたネコは白かったが、あかねさんが実際にかわいがっていたネコは、実は、茶トラ模様だったことが、あかねさんから大原館長へ伝えられた。昔の写真に写るモモは、ムクニャンそっくりだ。


 大原館長は「椋先生が白いネコを飼っていたのは知っていたが、茶トラ模様のネコを飼っていたことは知らなかった」と驚く。


 そして「決定的な」三つ目は、ムクニャンが同館に姿を現した1月22日が、椋の誕生日だったことだ。「『椋先生の生まれ変わりだ』なんて言う人もいます。そう信じたくなるほど、偶然が重なりすぎていますよね」

 

館内のお気に入りスペースでひなたぼっこをするムクニャン
館内のお気に入りスペースでひなたぼっこをするムクニャン

 ムクニャンは16年4月に「ネコ館長」に就任し、現在2期目。館内の見回りや、イベント出演、来館者とのふれあいが主な「仕事」だ。夏休みには、例年の2倍以上の来館者を記録するなど「ムクニャン効果」は絶大だという。


 大原館長は「ムクニャンがきっかけで、椋先生に興味を持っていただいた方も多い。これからも村全体で大切にしていきたいと思います」と話している。


(辻隆徳)

朝日新聞
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