犬を“兄”と慕う子猫 飼い主はアニソンを歌って愛護活動
小さな犬を“兄”のように慕う子猫。飼い主はアニメソング(アニソン)のライブ活動を続けるカップル。ライブで手作りのグッズを売って収益を犬猫の保護団体に寄付もしている。だが、猫との出会いは予想外のものだった……。
(末尾に写真特集があります)
千葉県市川市の櫻木香奈さん(28)と井上和也さん(31)は、小型犬パピヨンの「ノア」(オス、2歳7カ月)と、白黒の猫「いろは」(オス、半年)と暮らしている。12月、会いに行くと、2匹と一緒に近くまで迎えに来てくれた。
香奈さんが「ノア」のリードを持ち、和也さんが「いろは」の入ったリュックを持っている。「外出する時は、必ず2匹と一緒なんです」
自宅は2階建てのメゾネットアパート。リビングに入ると、「ノア」が中心に座り、愛嬌たっぷりにこちらを見上げた。「いろは」はピョーンと棚にのって、興味ありげにこちらを眺めている。
「“4人家族”になって半年。目まぐるしかったわね」と香奈さん。和也さんが「番狂わせというか、思いもよらない年になったから」とうなづいた。
2人は9年前、神戸の音楽専門学校で知り合い、意気投合。交際を続けて、2年7か月前に上京し、一緒に暮らし始めた。アパートがペット可だったこともあり、すぐに犬を飼い始めた。
「私の実家では猫を、彼の実家では犬を飼っていました。2人で動物を飼うなら保護犬をと思ったんですが、自分は犬がまったく初めてなので、まずは飼いやすいパピヨンをブリーダーさんから迎えることにしたんです」(香奈さん)
◆2人に訪れた変化
2人は「ノア」をリーダーとしてしっかり育て、次に保護犬を迎えるつもりでいた。そんな2人に、ひとつ、ふたつと変化が訪れる。
たとえば、2人が“副業”として行っている音楽活動。
「僕たちはいま別の会社でそれぞれ働いていますが、“音楽をやりたい”という共通の夢を持って東京にきました。それで2人でヴォーカルユニットを組み、ライブハウスでアニソン等を歌い始めたんです。『ノア』を迎えてから、“歌と動物支援”を合わせて行うライブにしたんです」(和也さん)
ライブ会場では、手作りの肉球型のストラップや犬猫をモチーフにしたグッズを販売して、売上げの一部を犬猫の保護施設「わんにゃん小梅保育園」(埼玉県)に寄付している。
◆子猫との出会い
今年6月、ライブに出かける時に思いもよらないことが起きた。
「スーツケースに、ステージ衣装や販売用のグッズを詰め込み、準備万端、さあいこう、と2人して玄関を出たとたん、ニャーッと猫の声が聞こえたんです」
アパートの駐輪場と塀のすき間に、手のひらにのるほどの小さな子猫がいた。捨てられたのか、産み落とされたのか分からないが、蜘蛛の巣がついて汚れていた。和也さんに先にライブ会場に行ってもらい、香奈さんが残って子猫を保護した。
「動物病院に連れて行って、ひとまず預けて、ライブで歌い終わった後、どうしようと彼と一緒に考えました。獣医さんによると、生後10日くらいだったようです」
家の前で、しかもライブの日の出会い。運命と思わずにはいられず、家族に迎えることにした。
だが、2人ともフルタイムの仕事があり、普段は8時間以上留守にするため、生まれたての子猫に数時間置きにミルクを飲ませることはできない。香奈さんの会社の同僚のつてでミルクボランティアを頼んで預けた。
◆“兄”をまねる猫
同居を始める時には、階段に“つっぱり棒”で「ノア」2階に上れないようにして、「いろは」の逃げ場を用意した。「ノア」は子猫をすんなり受け入れ、犬を見るのが初めてだった「いろは」も3日もすると“シャーシャー”いわなくなった。
むしろ、仲良くなってからは、「いろは」は「ノア」のすることを何でも真似るようになったという。
たとえば、排泄時には猫砂ではなく、「ノア」と同じように“ペットシーツ”を好んで使い、水も「ノア」と同じ器から飲むようになった。
「ノア」もどんどん兄らしくなった。「いろは」がいたずらして和也さんに怒られると、“まあパパ落ち着いてよ”とでもいうように、間をとりなすようになったという。
2匹が遊ぶ様子を見ながら、香奈さんがしみじみいう。
「『ノア』は子犬の時に噛み癖があったけど落ち着きました。誤飲など大変で、最初は育児ノイローゼになりかけたけど、今は大丈夫。というより、2匹と離れると落ちるかない(笑)。みんなでいろんなとこに行ってみたいな」
この先、2人には、また新たな夢ができた、と和也さんが打ち明けてくれた。
「『ノア』や『いろは』を大事にすればするほど、動物全般への愛情が深まってきた。だから、いつか保護犬や保護猫に関する施設を経営してみたい。犬を飼いたいけど飼えない人が利用できるような空間もつくれないかな、なんて日々考えています、もちろん、好きな歌も続けながら」
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