犬に本を読み聞かせる活動で、子どもたちはこんなに変わる!

図書館でお姉ちゃんが読んでいる間、きょうだいも犬とふれあう
図書館でお姉ちゃんが読んでいる間、きょうだいも犬とふれあう

 子どもたちが犬(や猫)に本の読み聞かせをするR.E.A.D.(Reading Education Assistance Dog) プログラム。1999年にアメリカ・ユタ州にあるセラピー犬団体「インター・マウンテン・セラピー・アニマル」が地元の図書館の協力を得て始めたこのプログラムは、またたく間に全米とカナダに広まった。その後ヨーロッパ諸国や南アフリカにも広まり、2016年の秋からは、JAHA(動物病院協会)と三鷹市立図書館が連携し、日本で初めて公立図書館での取り組みが始まった。

 

(末尾に写真特集があります)

 

 私がアメリカのR.E.A.D.プログラムの取材を始めたのは10年ちょっと前のこと。シアトル近郊にある「リーディング・ウィズ・ローバー」(以下、ローバーと呼ぶ)という団体の活動を見に行ったのが最初だ。読書が苦手な子どもたちでも、犬になら読んでみようという気になるかもしれない。また、たとえ間違ってもけっして直したり、批判したりしない犬には安心して読み聞かせができる。なんていいアイデアなのだろうと感心した。


 R.E.A.D.プログラムはAAA(動物介在活動)として図書館などで、AAT(動物介在療法)として学校でおこなわれたりしているが、ローバーではどちらもやっている。


 犬に本を読んであげたい子どもなら誰でも参加できる開かれた場所である図書館は、読書のきっかけ作りにはぴったりだ。小学生が多いが、お母さんが幼いきょうだいもいっしょに連れてくるなど、家族みんなで犬とのふれあいを楽しめる場にもなっている。


 一方、学校でのプログラムの多くは、学習障害などで読書に困難がある、英語を母語としない、あるいは読書が苦手で読解力が弱いなど、読むことに支援を必要とする子どもたちが対象だ。参加する生徒は先生たちが選ぶのだが、ただでさえセルフ・エスティーム(自己肯定感)の低い子たちが、「自分は読むのが下手だから選ばれた」と思ってしまわないよう、読書が苦手な子だけではなく、ただ犬に本を読んであげたい子も参加できるようにするなど気を使っている。


 読み聞かせの授業の様子を見ていると、本を犬のほうに向け、ほんとうに犬に向かって読んでいる子が多いのに驚く。その姿からは、子どもたちが犬に本を読んであげることで大きな満足感を得ていること、まるで自分が先生になったような気持ちを味わうことができて、セルフ・エスティームを高めるのにもつながっていることがうかがえる。

 

犬のほうに本を向け、真剣に読み聞かせる
犬のほうに本を向け、真剣に読み聞かせる

 飼い主である人間のハンドラーの役割も重要だ。子どもが理解できない言葉が出てきたら、「その言葉、タイラー(犬)も初めて聞くと思うよ。どんな意味か、タイラーに教えてあげて」という風に話しかけ、いっしょに辞書を引くなどして調べる。もしこのときハンドラーが「この言葉はなんという意味かな?」と、子どもに直接聞いたら、子どもはおそらくプレッシャーを感じてしまうだろう。それが、犬を介在させ、「犬に教えてあげる」ことによって、子どもは自分が試されているとか押しつけられていると感じずに、学習を続けることができる。

 

読み聞かせのあいだに犬がうとうとしても、子どもは気にせず、体にもたれて読み続ける
読み聞かせのあいだに犬がうとうとしても、子どもは気にせず、体にもたれて読み続ける

 読書というのは、まさに学びの基礎となるものだ。読むことが困難だと知的発達にも影響し、生涯にわたって不利になると言われている。そんな大切な学びの基礎をつくるお手伝いをしてくれる動物たち。なんてありがたい存在かとしみじみ思う。


◆大塚敦子さんのHPや関連書籍はこちら


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第6回 子どもが犬に読み聞かせ 「R.E.A.D プログラム」日本でも始まる

大塚敦子
フォトジャーナリスト、写真絵本・ノンフィクション作家。 上智大学文学部英文学学科卒業。紛争地取材を経て、死と向きあう人びとの生き方、人がよりよく生きることを助ける動物たちについて執筆。近著に「〈刑務所〉で盲導犬を育てる」「犬が来る病院 命に向き合う子どもたちが教えてくれたこと」「いつか帰りたい ぼくのふるさと 福島第一原発20キロ圏内から来たねこ」「ギヴ・ミー・ア・チャンス 犬と少年の再出発」など。

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この特集について
人と生きる動物たち
セラピーアニマルや動物介在教育の現場などを取材するフォトジャーナリスト・大塚敦子さんが、人と生きる犬や猫の姿を描きます。
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