「愛、生、死…学んだ」 「猫が教えてくれたこと」監督が語る
トルコ・イスタンブールの街で生きる猫と人々の優しい関係を猫の目線で描いたドキュメンタリー映画「猫が教えてくれたこと」が、11月18日(土)から、東京のシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAを皮切りに、全国で順次公開される。イスタンブールに生まれ、子どもの頃は野良猫と過ごす時間が何よりの楽しみだったというジェイダ・トルン監督に制作の裏話を聞いた。
――映画制作にあたり、野良猫のリサーチはどのように行ったのですか?
私はアメリカに住んでいるので、イスタンブール在住の3人に野良猫探しの協力をお願いしていました。街の人に「あなたのお気に入りの猫は?」と聞いてもらったりね。私も何度かイスタンブールに行き、最終的に35匹分の猫のストーリーが集まったんです。
私が子どもの頃は、野良猫がどこに行くのか、よく後を追っていましたが、暇だったからなんですね(笑)。この映画で猫の後を追う手法は、まるで子どものやり方です。だから、かわいらしい作品に出来上がったんだと思います。
――撮影は思い通りに進みましたか?
実際に撮影を始めると、確認できた猫は19匹でした。でも、かなりの猫のストーリーが撮れたし、予定していなかった猫も撮れたので、とてもラッキーでした。映画に登場する7匹の猫は、そのエリアでは人気者の猫ばかりです。
映画の冒頭に出てくる“サリ”は、他の猫を待っているときに、たまたま出会えた猫でした。彼女に子猫がいることは知らなかったんです。すごくかわいらしい発見でした。
――地面すれすれの猫目線の撮影はどのように行われたのですか?
人間を撮るのと同じように猫を撮りたかったので、今回のために、人間の足首くらいの高さで撮影できるカメラ道具のようなものを作りました。フォーカスは手元でして、猫と一緒に歩いて撮影するんです。街の人に「何してるの?」とよく声をかけられました(笑)。
リモコンで動く車にカメラをつけて撮影すると、猫は嫌がったのですが、私たちが撮っているときは喜んでくれたんですよ。
――撮影で印象に残っていることは何ですか?
一番は、撮影した人々との関係です。普通ならあいさつ程度しか言葉を交わさない人たちのことを、猫のおかげで深く知ることができました。それは、特別な経験でした。
――子どもの頃、イスタンブールではいつも猫がそばにいたのですか?
猫が大好きで、人間より猫と一緒にいました。姉と母が猫好きではなかったので、飼い猫はいませんでしたが、裏庭で猫と過ごすことが多かったです。
近所の猫が子猫をたくさん産んだときは、育っていなくなった猫もいれば、生まれた時から病気の猫もいたし、車にひかれてしまった子もいます。
猫たちにとって悲劇もありましたが、それで人生のサイクルのようなものが見えました。愛があるとか、死があるとか、生があるとか……。そういうものに対して、自分と折り合いをつけることは大事ですよね。猫からはたくさんのことを学びました。
――猫と良い関係を保つために気を付けていたことはありますか?
まずは、食べ物(笑)。第一は、追いかけるのではなく、向こうからこっちに来させることです。今は、娘にそれを教えています。
――日本の方々にメッセージをお願いします。
家族で映画を観に来てください。私が試写会に行ったときは、80歳から8歳の観客までいました。たくさんの人と一緒に見ると、もっと楽しいと思います。そして猫を飼っている人は、ずっと大事にし続けてください。
(安田有希子)
11月18日(土)より、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAにて公開。その他の地域の公開日は公式HP(http://neko-eiga.com/)参照。
配給:アンプラグド
2016年/79分/原題:Kedi/アメリカ/5.1ch/ビスタ/カラー ©2016 Nine Cats LLC
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