犬や猫の殺処分の現場 毎日一歩ずつ近づく「ガス室」

動物指導センターに収容され、「譲渡」されるのを待つ猫=熊谷市
動物指導センターに収容され、「譲渡」されるのを待つ猫=熊谷市

 飼い主がいない、野良犬や野良猫。自治体に保護されても、新たな飼い主が見つからない場合は、命を奪われる。その「殺処分」をゼロにすることを目標とする自治体も出てきたが、課題も指摘されている。殺処分の現場を訪ねた。


 熊谷市郊外。山林に囲まれ、人里離れた場所に、県の「動物指導センター」がある。県内で保護された犬や猫が収容される。


 平屋建ての建物の中に入ると、薄暗い中に、ステンレス製の格子戸がはまった15平方メートルほどの部屋が五つ、横一列に並んでいる。一番左の部屋に大型犬がいた。顔を伏せて元気のない様子だ。


「原則として一番右の部屋に収容し、毎日一つずつ、左の部屋に移します」と担当者。この犬は収容5日目ということになる。翌日までに飼い主が見つからなければ、部屋のさらに左にある通路へ運ばれる。


 通路は「処分機」と呼ばれるガス室へつながる。職員が操作盤のボタンを押すと通路の奥の壁が電動で前へせり出し、空間が狭まる。犬や猫は逃れようとしてガス室に誘導される。下から二酸化炭素が噴き出し、窒息死に至るという。


 センターに来た犬猫はまず、病気やしつけの状態、大きさなどを検査され、元の飼い主に返す「返還」や、新しい飼い主に渡す「譲渡」ができるか判断される。いずれもできないと判断されると、この建物で殺処分を待つことになる。


 同センターによると、殺処分数は毎年減っている。ピークだった1985年度に比べ、2016年度は犬が約0・7%に、猫はピークの86年度の1割以下になった。


 動物愛護の観点から「殺処分ゼロ」を目指す自治体も出てきた。方法は主に二つ。新しい飼い主への「譲渡」を増やすか、施設への「収容」を減らすかだ。


 神奈川県は譲渡を増やし14年度までに犬猫殺処分ゼロを達成した。同県動物保護センターによると、犬猫を引き取るボランティアの数が増えたことが大きな理由。昨年度同センターが譲渡した犬169頭のうち155頭が、猫571匹のうち560匹がボランティアに引き取られた。ボランティア間の連係を深め、負担集中を防ぐという。


 埼玉県は収容数を減らす方法をとる。猫や飼い主から持ち込まれた犬は、健康であれば基本的に引き取らない方針だ。


 ただ、収容数を減らすことには問題点もある。13年の改正動物愛護法で、自治体は業者などからの犬猫の引き取りを拒否できるようになった。東京都議として殺処分の問題に取り組んできた塩村文夏氏は「断られた飼い主の中には、(ペットを大量に引き取り劣悪な環境に置く)『引き取り屋』に連絡する人もいる。引き取り屋の需要が高まってしまった」と指摘する。


 県もそうした指摘は把握している。県動物指導センターの大沢浩一次長は「引き取りをやめれば一時的に殺処分はゼロになる。だが繁殖能力のある犬猫を野放しにすることで、長い目で見れば殺処分は増えてしまうのではないか」と話す。


 そこで県が特に力を入れるのが、人に慣れておらず、引き取り先が見つかりづらい子猫を減らそうというもの。野良猫が子猫を産まないよう、不妊・去勢手術の普及に努める。野良猫を「捕まえ(Trap)」「不妊・去勢し(Neuter)」「元の場所に戻す(Return)」という「TNR活動」を進めている。23年度には殺処分数を犬猫合わせて500頭未満に減らすのが目標だ。(平野尚紀)

 

 

 ■県内の犬猫の収容数、譲渡数、殺処分数の推移


<犬>
年度     収容   譲渡   殺処分
1985 42402 制度なし 41139
1986 39481 制度なし 38649
2012  2471  669   908
2013  2109  595   636
2014  1725  522   473
2015  1427  351   379
2016  1313  375   290

 

<猫>
年度     収容   譲渡   殺処分
1985 10978 制度なし 10233
1986 11346 制度なし 11323
2012  3691  691  2536
2013  2673  724  1794
2014  2259  564  1452
2015  2022  560  1324
2016  1489  437   880
※県まとめ。

朝日新聞
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