「世界でたった一つの動物園」 渋川動物公園の誕生秘話、出版
ヤギやヒツジが放し飼いにされ、山あいを散歩しながら動物に触れあうことができる。そんな渋川動物公園(岡山県玉野市渋川3丁目)の宮本純男園長(79)が、園への思いをまとめた書籍「世界でたったひとつの動物園 渋川動物公園ができるまで」を自費出版した。
山の起伏に沿った3万坪ほどの敷地には、約80種600頭・羽の動物がいる。キリンやゾウはいないが、乳を飲む子ヤギ、草をはむヒツジ、生まれたばかりのポニーと触れあえる。犬の散歩をしながら園内を巡り、途中の森では自然繁殖したクワガタやカブトムシなどの昆虫採集も楽しめる。
「動物のありのままの姿に出会える動物園」がテーマ。来園者は年々増え、昨年は4万人超が訪れた。
この園を一人で作り上げた宮本さんは1937年、韓国・釜山に生まれた。終戦直後に家族で玉野市の宇野港に引き揚げた。魚捕り、ヤギの飼育、マツタケ狩り……。不足する食糧を確保するため、幼い頃から熱心に観察した。自然や動物の魅力に夢中になった。
20代前半で渡米し、カリフォルニア州の農場で働きながらハトレースやシカ猟を経験。東京五輪があった64年に帰国の途につき、翌年、玉野市でペットショップを開いた。カブトムシが電池で動くと信じていた子どもやニワトリの絵を四つ足で描いた大学生がいた。
「動物はさわって初めてぬくもりや感触を感じ、血が通っているとわかる」
動物園を作ることに決めた。パワーショベルで山を切り開くところから始め、動物の小屋や猿山をほぼ一人で全て手作りした。6年越しの89年3月にオープンさせた。
宮本さんは、これまで園を作った経緯や思いを語ることはなかったが、3年前に脳血栓を患い、「自分の動物への思いを後世に残したい」と思うようになった。本は約40時間の口述筆記の形で、園の歩みについて外部のライターにまとめてもらった。
宮本さんは「自分も自然の中の一匹。動物の本当の気持ちを知りたい、と思ってやってきた。子どもたちにも動物の本当の姿を教えたい」と思いを込める。
359ページ。税込み2500円。園で発売中で、岡山県内の書店でも販売している。問い合わせは同園(0863・81・3030)。
(村上友里)
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