ホッキョクグマ32歳・ゴリラ47歳… 少子高齢化、動物園も
進み続ける高齢化、その一方で深刻な少子化――。そんな現象が、東北各地でも起きています。そんなの知っている? いえ、これは人間ではなく、動物園や水族館のお話です。
■「大型種で顕著」
仙台市太白区の八木山動物公園。「ズーパラダイス」との愛称がつけられる4月を前に、天国へ旅だつ動物たちが相次いでいる。
昨年10月に世を去ったのは、オスのライオン「カーティス」。享年19歳。今年1月には、メスのシロサイ「シンシア」が47歳で亡くなった。ともに天寿を全うした。
園ではほかに、メスのホッキョクグマ「ナナ」が32歳、オスのニシゴリラ「ドン」が47歳だ。いずれも国内最高齢。いまもお客を楽しませる現役とはいえ、寄る年波には勝てない。
元気者だったナナは、昼間も寝ていることが多くなった。飼育員がおやつのリンゴなどを投げ入れたプールに飛び込むのが得意だったが、直後に前脚を引きずったのが2年ほど前に確認され、以降は控えている。ドンは風邪をひくと、2カ月ほどは食欲が戻らない。胸をたたいて強さをアピールする「ドラミング」も、あまりしなくなった。
「希少な大型種で特に高齢化が進んでいる」と獣医師の釜谷大輔さん(45)は話す。
東北各県も事情は同じだ。40~50歳が寿命とされるシロサイだが、盛岡市動物公園にいるメスの「サイカ」は推定41歳。浅虫水族館(青森市)のカリフォルニアアシカ「ロク」は推定29歳。寿命はふつう、25歳ほどだ。
■繁殖成功難しく
なぜ高齢化が進んだのか。
まず、各地で30~50年前の開園から間もない時期に購入した若い動物たちが、年老いてきた。手厚く世話してもらえるので、早死にすることも少ない。一方で、若い動物はなかなか増えない。子どもを産ませるのが難しいためだ。
つがいをつくっても、気が合うとは限らない。施設に限りがある動物園では同じ動物を数多く飼うわけにいかないので、代わりのパートナーもなかなか見つからない。2007年に推定37歳で死んだドンのパートナー「ローラ」も、赤ちゃんは産まなかった。八木山では09年からアフリカゾウの人工授精にとりくんでいるが、まだ結果は出ていない。
よその園や海外などから若い個体をリクルートしてくるのも、簡単ではない。壁になるのが、価格の高騰だ。
静岡県の動物園「iZoo」園長で、著書「動物の値段」でも知られる動物商の白輪剛史さんによると、20年前に1頭400万円ほどで買えたホッキョクグマは、今や6千万円。1千万円台前半だったアフリカゾウも、3500万円になった。
中国やベトナム、ミャンマーなどで需要が高まっているためという。「日本では見慣れてしまった人が多いが、野生動物を生で見た人が少ない新興国では、動物園に行列ができる」
飼育担当者たちは、敵に「弱み」を見せられない動物たちの体調の変化を見落とすまいと、気を配る。
大森山動物園(秋田市)では16年末、オスのピューマ「ピュータ」が推定20歳で死んだ。獣医師の三浦匡哉さん(45)は、取り残された同年齢のパートナー「ピュー子」が落ち込むのではと注意深く見守った。
実際、直後は頻繁に鳴き、ピュータを探すようなそぶりを見せた。ところが2、3日たつと、吹っ切れた。背中を「瓦」のように覆っていた毛の固まりがはがれてキレイになり、食欲も増して、かえって元気になった。ネコ科の大型獣だと、オスよりメスが長生きするケースが多いという。
(小宮山亮磨)
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