サファリパーク視察報告 動物福祉の面で問題多数

 2015年4月上旬ごろ、以前から度々国内外から動物の展示環境について苦情の電話のあったサファリパークを視察しました。


【問題点】

●草食動物放し飼いコーナー

・車から餌付けをすることができるが、多数いる動物達の栄養管理が行き届かないなどの懸念がある。

・小型の草食動物は、車の陰に隠れてしまうことがあるため、轢かれてしまう危険性がある。

●サルのふれあい楽園(ワオキツネザル・エリマキキツネザル・モルモット・ひよこ)

・サルとのふれあいについては、人獣共通感染症などの公衆衛生上の問題と、咬傷などの危険性ある。

・また、ふれあいコーナーには、スタッフが一人もおらず注意する人がいないため、観光客によりモルモットやひよこが乱雑に扱われていた。

●チンパンジー展示コーナー

・コンクリートのケージの中には、身を隠す場所がなかった。

・遊具もなくエンリッチメントが不十分であった。

●コンドル

・羽を広げて飛べるスペースがない

●クマ、ライオン、トラ

・身を隠す場所がなく、ほぼすべての動物に常同行動(同じ行動を繰り返すこと)が認められた。

●ゾウ

・1m弱の鎖に繋がれっぱなしで、身動きがとれない。

【総評】

 視察訪問したのが4月初めの閑散期ということもあり、観光客よりスタッフの数の方が多い印象でした。しかし、パーク内で見かけた多くのスタッフは、動物のいる場所にはほとんどみられず、動物福祉の面と公衆衛生の面からも、数多くの問題点が認められました。

 改善案としては、まず、スタッフ教育の充実を図り、スタッフ一人一人がプロ意識を持つこと。例えば、担当コーナーを決め、担当者は責任をもって、担当動物の生理生態習性を学ぶこと、そして、担当コーナーに常駐し、ソフト面の充実を図る。そのことによって、担当動物への理解が深まり、よりよい環境とは何か、肉体的・精神的健康であるかなど、気が付くポイントが多くなれば、今後の具体的な改善に繋がっていくと考えています。

 また、ハード面では、身を隠す場所を設け、必要最低限の充実をまず図ることが最優先事項と考えます。特に高等知能動物のチンパンジーには、身を隠す場所だけでなく、遊具などのエンリッチメントの充実が必要不可欠です。

 そして、何より、ふれあいコーナーの動物がいるスペースにスタッフがいないということは、動物福祉だけでなく、公衆衛生上問題であるため、こちらは特に早急な改善指導を管轄行政にお願いし帰京しました。

  その後すぐに、所轄保健所職員が立ち入り調査・指導を実施し、その内容についてご報告いただいております。改善には、時間のかかるところもありますので、継続的な視察及び指導を要望しております。

 最後に、日本の動物園のいる展示動物はストレス等による常同行動がよくみられます。しかし、それは異常な行動であり、そのような行動を引き起こす環境で飼養することは動物虐待であることを一般の方々にも知ってもらいたいと考えています。

この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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