犬猫同伴避難のトラブルどう解決? 熊本地震

ペット同伴者を中心に借りられるテントで家族3人、愛犬3匹と暮らしている宮崎律子さん(64)。当初、公園内の体育館で生活していたが、他の避難者の邪魔にならないように入居を決めた。近所のテントもペット同伴のため、鳴き声も気にせず生活できるという=2日、熊本県益城町、小宮路勝撮影
ペット同伴者を中心に借りられるテントで家族3人、愛犬3匹と暮らしている宮崎律子さん(64)。当初、公園内の体育館で生活していたが、他の避難者の邪魔にならないように入居を決めた。近所のテントもペット同伴のため、鳴き声も気にせず生活できるという=2日、熊本県益城町、小宮路勝撮影

 熊本県などでの一連の地震では、ペットが飼い主を癒やす一方で、トラブルの原因になる例が相次いでいる。周囲に遠慮して、車中で過ごす飼い主もいる。避難生活が長期化する中、ペット同伴専用スペースを設けるといった試みも出ている。

 

(末尾に写真特集があります)

 

 熊本市の拠点避難所の一つ、約150人が身を寄せる市総合体育館では、エントランス付近が段ボールで仕切られ、「ペット同伴専用スペース」になっている。15世帯ほどが犬や猫と一緒に過ごす。
 

 梶川陽子さん(64)は、猫の「きなこ」を連れて避難した。4月14日の前震以来、自宅近くの高校などに避難してきたが、周囲に気をつかってきた。「ここはある程度、他の避難者と距離があるので良い。きなこも表情が落ち着いてきた」
 

 益城(ましき)町は10日、避難所の町総合体育館の敷地内に、ペット専用のプレハブ3棟の搬入を始めた。高齢者や仕事で出かける人のため、有志にペットの世話も任せる。
 

 現在は町内で唯一、この体育館だけペットを同伴でき、館内に犬や猫計約30匹、館外にもNPOが管理するテントにペットがいるが、避難者らからの要望もあり、ペット専用棟を置くことを決めた。
 

 トイプードルとともに館内に避難する女性(65)は「気軽に預けられる施設ができれば、ようやく安心して買い物に行ける」と期待する。
 

 地震発生後、熊本市内のある避難所では、犬を連れていた男性が別の避難者に顔を殴られるトラブルもあり、この避難所では居住スペースへのペット同伴が禁止されたという。
 

 熊本市中央区の「竜之介動物病院」は、入居するビルをペットと飼い主の避難所として提供している。ピーク時には200人以上の飼い主とペットたちが身を寄せた。市内で猫カフェ「かごにゃん」を運営する西嶋智史さん(31)も、中央区の1店舗を「臨時災害シェルター」にして50匹余りを無料で預かる。「本来は行政が専用の避難所を設けるべきだ」と指摘する。

 

猫カフェ店内では、預かった猫が入るケージが並び、まわりでカフェの猫たちがくつろいでいた=4月26日、熊本市中央区 、福岡亜純撮影
猫カフェ店内では、預かった猫が入るケージが並び、まわりでカフェの猫たちがくつろいでいた=4月26日、熊本市中央区 、福岡亜純撮影

■マニュアル策定、他自治体で動き
 

 大災害を想定し、ペット連れ避難マニュアルの策定を進める自治体もある。
 

 東京都新宿区は2004年にマニュアルを作り、ペット同伴の避難所設営訓練を続けている。
 

 新潟市では04年の中越地震でペット同伴の被災者が車中泊を続け、エコノミークラス症候群で死亡した。その教訓から、避難所で屋内外にペット専用スペースを設ける計画を作った。
 

 熊本県も3月に災害時のペット避難の指針を完成させた。「ペットの臭い、鳴き声などが避難者のストレスとなる」とし、飼い主名簿の作成やペット専用スペースの設置、餌やりや衛生の管理分担を明確にすることを盛り込み、4月中に市町村へ配布予定だった。県の担当者は「あと1~2年早くできていれば、もっと効果的に対応できた」と話す。

 

(田中志乃、森本大貴、箱谷真司)

 

朝日新聞
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