ペットの病、どの動物病院へ連れて行く?
安心したい
かわいがっているペットの具合が悪くなった時、連れて行く病院は決めていますか?動物は、どこが痛いのか、何がつらいのか、話すことができません。そんな動物たちを、ドクターはどう診ているのでしょうか。大学の病院と個人病院を訪ねてみました。
内視鏡で異物発見
犬や猫が元気を無くし、吐いたり、やせてきたりした場合、大きな原因の一つになっているのが異物ののみ込み。薬で良くならなければ、外科的な治療が必要になる。
一般の動物病院では治療が難しいペットを診る二次診療機関、鳥取大(鳥取市)のキャンパス内にある農学部付属動物医療センター。
人間の患者と違って、動物からは症状について聞き出せないため、まず、どこに異常があるかを、内視鏡検査で突き止める。
内視鏡は、グラスファイバーの両端にレンズがついている。人間用と同じように、口から入れて、胃や十二指腸を、モニターに表示される映像で観察。異常が認められた部分の組織を採取することもできる。
検査の際、内臓の様子が見えやすいように、胃や十二指腸にガスを入れる。それで胸腔(きょうくう)が圧迫されないよう、検査中、気管チューブも入れるが、嫌がって動物が動く可能性があるため、全身麻酔をするという。
画像診断が専門の柄(つか)武志准教授(43)は「食道内の異物には特に注意してほしい」と話す。食道は心臓の上で細くなっている部分があり、壁も繊細なため、異物が引っかかると、粘膜に穴があきやすい。そこから感染が起こると、死につながることもある。
ジャーキーをのみ込んで5日後に運ばれてきた小型犬の治療で、食道にあいた穴が血管と癒着し、大量出血で死亡した事例があった。「食べたものをそのまますぐ吐くという症状が出たら、一刻も早い診断と治療が必要」
センターが2014年5月までの4年間で、内視鏡検査をしたのは犬80例、猫12例。多くは消化管内部の観察や組織採取のためだったが、食道や胃に異物を確認した事例も、若い犬猫を中心に20例あった。
異物は、クリップ、骨片、ビニール、釣り針など。カテーテルや注射針など、他の動物病院でのみ込んだと思われる物もあったという。ほとんどは内視鏡で除去が可能だったが、中には洗車用スポンジをのみ込んでいて、外科手術で除去した例もあった。
内視鏡検査は通常30分ほど。異物を除去する場合は1時間くらいかかる。病理検査費用も含め、内視鏡検査には5万~8万円ほどかかるという。
犬猫以外も歓迎
家庭で飼われるペットは、犬と猫だけではない。ウサギやハムスター、鳥、カメ、トカゲ――。獣医師の間では、「エキゾチック動物」と呼ばれている。病気について未知の部分が多いためだ。手がける獣医師は限られるが、中には積極的な開業医もいる。
広島市東区にある「はちペットクリニック」の秋田征豪(まさひで)さん(39)と妻咲樹子さん(38)は、ともに獣医師。「サル以外は何でも受け入れる」という方針だ。
扱う症例として少なくないのが、年間50例ほどに上る小鳥の卵塞(らんそく)症。1~2歳のメスに多い病気だ。産卵機能の未発達が原因で、産もうとした卵が詰まり、体内で臓器が圧迫されて呼吸が荒くなる。カメやトカゲ、ヘビでも、同様の症状が起きるという。
小鳥は、カルシウムを注射し、30度の温室に入れれば、無事に産卵する場合がある。体外から圧迫して卵を出すこともあるが、体内で卵の殻が砕けて卵管を傷つけると、卵管炎など別の病気につながる危険性がある。
卵塞症は繰り返しやすい。数日間うずくまったまま、という重篤なケースでは、卵管の病気になるのを防ぐため、手術で卵管を摘出する。
犬や猫と違って、体の小さい鳥は、手術中に呼吸が止まっても、気管に挿管できない。採血の負担が大きく、血液検査もできないため、手術は困難だ。
ただ、「子孫を残すのが目的でないなら、卵管はとった方がいい」と秋田さんが判断した事例では、手術後に元気を取り戻し、数日で退院した。費用は4万円くらいだという。
秋田さんは「他の病院で診てもらえない動物を診ることで、診療例を重ねて、少しでも役に立てたら」と話す。
■追伸 記者より
獣医師学会で動物医療の発表を聞いて印象的だったのが、「その後、オーナー(飼い主)の来院がなく、予後(経過)は不明」という締めくくりがいくつかあったことだ。動物の治療は、あくまで飼い主次第。だが、少しでも楽に、という思いで病院に連れて行った飼い主の気持ちがしのばれた。(木脇みのり)
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