殺処分ワースト上位の千葉県 小さな命はどこへ

収容された犬。飼い主が現れるのを待っていた=千葉県動物愛護センター
収容された犬。飼い主が現れるのを待っていた=千葉県動物愛護センター

 そこには、あと10日間の命が待っていた。

 千葉県動物愛護センター(富里市御料)の収容棟。薄暗いガラス部屋に、飼い主に捨てられるなどした犬が数匹ずつ入れられ、鳴き声を上げていた。ビーグル、ミニチュアダックスフント、コーギー……。人気の種類の犬も目立つ。

 収容された犬は、引き取り手が現れず、新たな飼い主に譲渡可能かどうかの選定試験に通らなければ、処分機の中に追い込み、炭酸ガスを充満させて致死処分される。施設にいる期間は短ければ10日間だ。

 センターでは2013年度、犬959匹、猫2806匹が致死処分された(千葉、船橋、柏市は除く)。全国ワースト上位が続く。犬の処分数は03~05年度、猫は過去10年間に5回、全国最多を記録した。

 だが、このところ減少傾向にあるのも事実だ=グラフ参照。不妊・去勢手術の普及など適正飼育が周知されてきたことに加え、むやみに捨てさせないような環境づくりを進めていることが背景にある。

 千葉県公衆衛生獣医班の可世木(かせき)仁哉班長は「蛇口を閉めるように引き取り数を減らすとともに、生かす方向でどんどん施設から出していくことが大切だ」と語る。

 千葉県は05年に県内の引き取り窓口を80カ所から19カ所に減らし、窓口でも捨てる理由を何度も問いただすなど飼い主の倫理観を呼び覚ましている。06年から引き取りを有料化し、成犬・成猫で1匹あたり3080円を徴収。また13年の動物愛護管理法改正を受け、「犬が年をとり寝たきりになった」「鳴き声がうるさい」など身勝手な引き取り要請は拒否している。

 その一方で定期的に譲渡会を開き、個人やボランティア団体に引き渡している。収容された犬や猫の写真をホームページに掲載し、飼い主を随時募集するなどした結果、譲渡件数はこの10年間で犬が3倍、猫は6倍以上に増えた。

 7日、センターが毎月開く飼い主さがしの会があり、譲りたい側が6組、もらいたい側が23組集まった。飼い主の責任や義務、しつけ方など30分の講習を受けた後、子犬を引き取った富里市内の10代の女性は「大切に育てたい」とやさしく腕に抱いた。この日持ち込まれた犬と猫計15匹のうち12匹が譲渡された。

譲渡が決まった犬を新しい飼い主が抱いた=千葉県動物愛護センター
譲渡が決まった犬を新しい飼い主が抱いた=千葉県動物愛護センター


 それでもなお、毎日のように犬や猫が収容されている。「殺処分ゼロ」を目指し、千葉県は昨年10月、県動物愛護管理条例を制定した。適正な飼い方の普及や正しく飼うことができる人への譲渡など、県が取り組む施策を明文化。県民や飼い主の責務も規定した。

 センターの浦野圭司次長は「飼い主の意識の問題が重要だ。動物たちの命をよく考え、最後まで面倒をみる責任があることを認識してほしい」と話す。

 動物に癒やしを求めるペットブームの一方、多くの犬や猫が捨てられて致死処分となっている。小さな動物の運命を決めるのは、私たち人間だ。4月の県条例施行を機に、動物愛護ということを考えてみたい。(石平道典)

(朝日新聞2015年2月14日掲載)

朝日新聞
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