「継続」から生まれる「連鎖」
~一頭でも多くの迷子犬が飼い主の元に帰れるように、との想いで始まった
「迷子の犬を家に帰そうプロジェクト」レポート~
行政・動物愛護団体・個人ボランティアのご協力あってのプロジェクト
2009年9月に「動物愛護週間キャンペーン2009「安心だワン!ホルダーセット無料配布キャンペーン(実施:NPO法人 地球生物会議 ALIVE)」として出発した「迷子の犬を家に帰そうプロジェクト」(以下、プロジェクト)は、本プロジェクトにご賛同くださる行政・動物愛護団体・個人ボランティアの方々のご理解・ご協力のもと、今年6年目を迎えました。行政機関以外の動物愛護団体や個人ボランティアからのお問合せも着実に増えてきています。
返還率は向上しているが、より一層の取り組みは欠かせない
2007年度、全国で捕獲・収容された犬は8・9万頭、そのうち返還された犬は約1・7万頭、返還率の全国平均は約18・8%でした。この翌年(2008年度)のデータでは、捕獲・収容された犬は8・2万頭、返還された犬は約1・8万頭、返還率の全国平均は約21・9%。そして5年後の2012年度では、捕獲・収容された犬は5・7万頭、返還された犬は約1・7万頭、全国平均は約29・7%となり、プロジェクト発足当初より返還率が約11%向上(平均で約2%/年)していました。
しかしながら、2013年度のデータ(5月現在において最新のデータ)では、捕獲・収容された犬は5・2万頭、返還された犬は約1・6万頭、全国平均約29・7%(前年度と同率)と、返還率の向上は頭打ちとなった状況です。
本プロジェクトの取材として行政収容施設(動物愛護センター、保健所など)を訪ね、行政職員やボランティアの方々にお話を伺うと、異口同音に「収容される犬の数が多すぎる」との意見が挙がります。収容数が少なければ、飼い主との再会を待つ時間も増え、譲渡の可能性を上げることもできるはずです。
犬(や猫)が迷子になった場合、当の動物たちや飼い主が不幸なのはもちろんですが、その周囲で関わりあう人々、行政職員、動物愛護団体、ボランティアの方々にも多くの負担が派生します。
何より、あきらかに迷子犬(飼われていたであろう犬)と見受けられても、飼い主に返還される、もしくは新しい飼い主が見つからなければ悲しい運命を辿ることになり、その辛さや喪失感は関わり合った方々のすべてに降りかかることになりますので、2013年度の結果を受け、プロジェクトとしてより一層の取り組みの必要性を改めて感じています。
嬉しい連鎖―隣接市に広がったプロジェクトの取り組み
4月11日、プロジェクト発足当時よりご賛同いただき、「安心だワン!ホルダーセット」の配布にご協力いただいている茨城県牛久市の「狂犬病予防集合注射」会場へ取材に伺いました。(セット同梱のパンフレットも当初より同市オリジナルのものをご使用いただいています。)
茨城県牛久市同市は、市の条例として「迷い犬(猫)の一時保護や里親捜しなどの規定」を制定し(地元ボランティアさんの強い要望の上に成立しました)、市庁舎の建物を使っての譲渡会の開催、市のホームページ上での迷子犬の情報発信等、動物行政にとても熱心な行政のひとつです。
同市の集合注射会場では「安心だワン!ホルダー」を付けた犬に出会うことができ、大変嬉しい取材になるのですが、この日は同市に隣接した取手市の市議会議員の方が視察のために来場されており、お話を伺うことができました。「安心だワン!ホルダー」にも関心をお寄せくださり、牛久市の職員や地元ボランティアの方々のお話に熱心に耳を傾けていらっしゃいましたが、ボランティアの方も長い時間をかけ、地元の現状について説明されるなど、本プロジェクトの取り組みが広がろうとする瞬間に立ち会うことができ、大変喜ばしく感じました。
さらに、取材後日、取手市から「安心だワン!ホルダーセット」のご発注をいただくことができ、継続することの大切さ、そこから生まれる「連鎖」を実感し、こうした連鎖をもっと派生できるよう尽力しなければならないと、身が引き締まる気持ちでした。
「対話」の積み重ねを
牛久市と取手市の例のように、立場は関係なく、気持ちを持った方々がアクションを起こしてくださることで、少しずつではありますが、プロジェクトの取り組みの広がりを実感する機会もでてきました。しかし、先にも示した返還率の数値をみても、やはりまだまだ手放しで喜ぶことはできません。何より、今なお毎年多くの所有者不明の犬が収容されており、飼い主に迎えにきてもらえなかった犬は悲しい運命を辿ることもあるのが現実です。
(※捨てられたり迷子の可能性がある所有者不明の犬を第三者が発見・保護して動物愛護センター、保健所などに持ち込まれたり、行政が捕獲した犬のうち、飼い主さんから連絡又はお迎えがあった場合に「迷子犬」だったと判明します。飼い主さんが犬を探さなかったり、所有者明示がなければ、収容期限後に殺処分となる可能性もあるのです。)
プロジェクトの取り組みを通して強く感じているのは、こうした現状を改善するためには、行政職員とボランティアの方との協力、信頼関係の構築が必須であり、その上では「対話」が欠かせない、ということです。時間もかかることで、時には対立したり、様々な苦労や壁が立ちはだかることは免れないかもしれません。しかし、そうした対話の積み重ねが、いつか、どこかで実を結ぶかもしれません。
今回、牛久市の継続的な取り組み、それによる取手市への連鎖を実際に目の当りにし、全国の行政職員とボランティアの方々が実りある対話を通じて力を合わせ、その地域に合ったやり方・進め方を考えていくことの大切さを改めて実感しています。
(NPO法人 地球生物会議会報「ALIVE」No.115号より)
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