犬猫はこの病気で死に至る 心臓病 犬で第2位、猫で第3位

原因と対処法を学ぶ

犬や猫の死因の多くを占めるがん、心臓病、腎臓病。
ほとんどの飼い主が直面することになる、死に至る病――。
原因と対処法を知っておけば、予防や症状を抑えることも可能だ。
長く健康寿命を保つために。いざという時の覚悟をするために。
それぞれの病気の専門家から、学んでおこう。
文=石原美紀子


 

「心雑音」を聞き逃すな 早期の発見・治療が鉄則

 東京都墨田区に住む女性(68)が飼うシーズーの小太郎。7歳になった今年、体調の変化に気づいた。大好きだったはずの散歩の途中でべたっと座りこみ、歩くのを拒否するようになった。何より、夜中2時くらいに「ガー! ガー! ガー!」という咳をするようになった。

 今春、狂犬病予防接種のために久しぶりに動物病院を訪れたとき、獣医師から意外な事実を告げられた。

「心雑音があります。『僧帽弁閉鎖不全症』かもしれませんね」

 心臓に疾患があるから咳が出るのだという。つまりは「心臓病」にかかったのだと理解した。

 心臓疾患は、犬の死因の第2位(12%)、猫の死因の第3位(9%)となっている。対処法を誤れば、死に直結する可能性がある疾患。その心臓疾患のうち75〜85%を僧帽弁閉鎖不全症が占めるとされている。

かかりやすい犬種は定期的に心エコーを

 正常な心臓の血液の流れは、左心房から左心室へついで左心室が収縮し、大動脈へと流れる。ところが僧帽弁閉鎖不全症を患うと、弁が完全に閉じず、血液が逆流してしまう(図4)。進行すると、最終的には心不全を引き起こして死に至る。

(図4)僧帽弁閉鎖不全症(逆流)の心エコー
心臓の収縮時に左心室から左心房への血液逆流が生じるため、左心室は拡張性肥大を示し、肺水腫を合併することになる。心エコー(カラドプラー)で赤く変色しているところが逆流している箇所

 

 この病気には、犬種による傾向の違いが見られる。動物臨床医学研究所理事長で獣医師の山根義久氏はこう解説する。

「僧帽弁閉鎖不全症は純血種の小型犬に多く見られます。特にキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルでは4〜5歳でほぼ半数が、マルチーズでは7〜8歳で70〜80%が僧帽弁閉鎖不全症になるというデータもあります」

 では飼い主は、自分の犬の病気に、どうすれば早いタイミングで気づいてあげることができるのか。僧帽弁閉鎖不全症は4段階に分類され、第1段階ではなんの症状もない。そのため、この病気にかかりやすい犬を飼っている場合は、5歳前後になったころから、定期的に心エコーなどによる検査を受けておいたほうがいい。

 第2段階に進むと、心音に雑音が混じるようになる(図5)。犬の左胸あたりに耳をつければ、飼い主でも聞き分けられる。この段階になると、疲れやすくなったり、食欲がなくなったりする。

(図5)心臓の動きを心電図で記録すると、一定の拍動につきひとつの波形が記録される。ひとつひとつの波形には異常が認められず、1分間の心拍数が正常範囲より少ない場合を徐脈性整脈、多い場合を頻脈性整脈という。安静時でも徐脈や頻脈を示すときは、何らかの病気が関係している場合が多い。洞不全症候群は心臓のペースメーカーの役目をする洞房結節が原因で徐脈を起こす疾患で、普段から心拍数が少なく、運動しても上昇しないので、脳の虚血により失神発作などを生じることがある。ミニチュア・シュナウザーや、ジャーマン・シェパード・ドッグなどに多い。洞不全症候群の診断は心電図の解析などが必要で、治療は投薬による内科的治療が主となる

 

 さらに第3段階まで進行すると、深夜に咳をし始める。水を飲んだときのむせるような咳、興奮時の何かがのどにひっかかったかのような咳なども特徴の一つ。第4段階まで進むと、咳が一日中止まらなくなり、えづくような症状も見せる。

「以前は発症後2〜3年の命といわれていましたが、内服薬の種類や新しい投与法が開発されたことにより、予後がかなり長くなっています。症状がなくても小型犬の飼い主さんは6歳を過ぎたら、半年に1回は動物病院に連れていって聴診器で心音を診てもらってください」(山根氏)

むせるような咳は心筋症の可能性も

 ゴールデン・レトリバーやニューファンドランド、ジャーマン・シェパード・ドッグなど大型犬の場合、大動脈狭窄症がよく見られる。遺伝性の疾患と考えられており、多くの場合は無症状。だが、重くなると、肥大した心臓に十分な酸素を運搬できなくなるため、突然死を起こすこともあるという。

 一方、猫の場合は、普段より行動力が低下した場合、「心筋症」の可能性が高いと山根氏は指摘する。原因はよくわかっていないが、アメリカン・ショートヘアやメインクーン、ペルシャなどで発生が多く、遺伝性の可能性も指摘されている。

 心筋症になると、肺に水がたまって呼吸が困難になり、突然むせるような咳をする。病気が進むと運動をしたがらなくなり、同じところにとどまって動こうとしなくなる。これも、加齢のせい、と見過ごされがち。猫の後ろ脚が突然麻痺し、悲鳴をあげながら前脚だけで体を引きずって移動するなどの症状が出て初めて異変に気づき、あわてて動物病院にやってくる飼い主が多いという。

「この状態になってからだと、予後が非常に悪いケースが見られる。可能な限り早期に発見するため、猫がおかしな咳をしたら、すぐかかりつけの動物病院に相談したほうがいい。完治は望めないので、投薬による内科的治療が主となります」(山根氏)

 早期発見、早期治療が心臓疾患の鉄則。普段の様子を見ていて心配な症状があれば、病院での検査を、かかりつけの獣医師に相談してみるといいだろう。

(図6)心臓カテーテル検査のX線写真
肺動脈狭窄症を起こしている犬に対する、心臓カテーテル検査。右心室にカテーテルが挿入されている。X線写真からは、肺動脈弁の後部が大きくふくれあがっていることがわかる

(図4〜6は山根義久氏提供)

猫の死因

1位 がん32%

2位 腎・泌尿器系疾患 23%

3位 心臓疾患 9%

4位 糖尿病 6%

 中年齢以降の発症が多いが、若齢時に見られることもある。病状が進むと、様々な合併症を起こすことがある。初期には症状があまりないが、多飲多尿が見られるようになる。食欲があるのに体重が減少する場合もある。

5位 伝染性腹膜炎 5%

痛みを示すことが多く、進行するとショック状態から虚脱状態に陥る。対症療法として輸液、抗生物質の投与、ショックの治療を行う。

犬の死因

1位 がん 47%

2位 心臓疾患 12%

3位 腎臓疾患 7%

4位 肝臓疾患 4%

 慢性肝炎や肝硬変などの慢性肝臓病、急に肝臓の機能が維持できなくなる急性肝不全などがある。症状は原因や進行の程度によって異なるが、共通して、食欲不振や抑鬱などが見られる。急性肝不全の場合はさらに嘔吐や下痢、発熱なども。

4位 てんかん 4%

 発作的に繰り返される全身のけいれんや意識障害を主な症状とする脳疾患。前兆として、落ち着きがなくなる、一点を見つめる、口をもぐもぐとさせる、感情が不安定になるなどの症状が見られる。抗てんかん薬を毎日投与することで発生を抑えることができる。

各疾患の説明は『イヌ・ネコ 家庭動物の医学大百科 改訂版』を基に作成。
死因データの出典はMorris Animal Foundation

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