飼い犬の抜け毛 深刻な病気の場合も

  • :季節の変わり目でもないのに、飼い犬の抜け毛が普段より激しいのですが。
    :山根 あまりかゆみがない状態で太ももや脚の付け根などが左右対称に脱毛していたり、毛を刈った後に発毛しなかったりするようであれば、副腎皮質機能亢進症か甲状腺機能低下症かもしれません。ほかにどんな症状が見られますか?
  • :よく水を飲み、おしっこが増えました。
    :山根 多飲多尿になっているということは副腎皮質機能亢進症の可能性が高いです。異常に食欲が旺盛になったり、おなかだけが目立ってふくらんだりするなどの症状も出てくるのですが、いかがでしょう?

     一方で、多飲多尿などの症状はないが、散歩を嫌がる、元気がない、寒そうにいつも震えている――などの場合は、甲状腺機能低下症を疑ったほうがいいでしょう。
  • :治る病気でしょうか?
    :山根 特に副腎皮質機能亢進症は、放っておくと徐々に進行し、場合によっては死に至る病気です。自然に発症する場合と、別のアレルギー疾患を治療するためにステロイドを長期間にわたり与えすぎている場合(医原性)とがあります。後者の場合、徐々にステロイドの投与をやめる必要があります。前者であれば、下垂体や副腎に腫瘍があるために発症しており、外科的な治療方法もありますが、内科的治療が一般的。投薬治療を一生続けることになります。

     甲状腺機能低下症だと症状が様々なため、診断がつきにくいです。投薬治療を行えばほとんどの症状が改善できますが、まずは甲状腺ホルモンを測定するなどして、総合的に判断する必要があります。
  • :アトピー性皮膚炎のため、かゆみが出ないようにステロイドをあげています。
    :山根 アトピー性皮膚炎は目や口の周り、脚の指の間、わきの下、外耳などさまざまなところがかゆくなります。かゆくてかきむしるために脱毛したり、皮膚が炎症を起こしたりする、とてもつらい病気です。飼い主はステロイドをあげたくなるのですが、そのまま続ければ、医原性の副腎皮質機能亢進症を合併します。

     アレルギー性皮膚炎は、その原因物質によって、ステロイド投与に頼らない様々な対処法があります。最近では減感作療法を採り入れている獣医師もいます。なかなか決め手が見つからない疾患ですが、獣医師に相談しながら、治療を進めていきましょう。
山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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この連載について
診察室から
動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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