RSPCA 動物福祉短期研修会(2014)を開催
前年も大変好評をいただきましたRSPCA短期研修会を2014年も11月26日から3日間、東京で開催しました。
講師は、昨年同様、国際部で世界各地の動物福祉研修を担当されているポール・リトルフェアー氏と動物虐待事例の豊富な経験を持つ訴訟担当シニアマネージャーのフィル・ウイルソン氏を招聘し、動物福祉・虐待の概念から事例を踏まえてのケーススタディをわかりやすくご講義いただきました。
研修会では、講義だけではなく、5つのグループに分かれて、実際に3カ所のペットショップを視察し、その後、グループディスカッションを実施、講義で学んだ動物福祉の評価ツールを基に各ショップの評価をしてもらいました。
以下に、グループによる評価と英国の動物福祉からみた評価を中心に報告いたします。
★5つ全てのグループが以下の「5つの自由」をベースに評価★
「5つの自由」
1、飢えと渇きからの自由
2、不快からの自由
3、痛み・負傷・病気からの自由
4、正常な行動を表現する自由
5、恐怖あるいは抑圧からの自由
●グループによる総評価
- ・糞尿処理が適切にされていて、匂いがない。
- ・ケージ内に、清潔な水、遊び道具がある。
- ・動物が落ち着いていてリラックスしている。
- ・小動物のケージが狭く蒸れやすい水槽
- ・自然光に触れない。
- ・糞尿放置され、店内が臭い。
- ・痩せていて、毛並みが悪い。
- ・子犬で常同行動がみられた。
- ・従業員数が少なすぎるため、管理が行き届いていない。
- ・動物が放し飼いされていて、危機管理がされていない。
- ・店内臭く、不衛生。水がない。
- ・子猫で目ヤニ・鼻水症状あり。
- ・トカゲで常同行動がみられた。
●英国の動物福祉からみた評価
英国法律では、動物取扱業者は、日本の「登録」より更に厳しい「免許」を取らなければならない。
1、ペットショップA- ・店内が清潔で、清掃も問題ない。
- ・動物頭数に対する店員数の比率がよい。
- ・スタッフの動物の扱い方が上手で、動物もスタッフになついていた。
- ・動物達はとてもリラックスしていた。
- ・小動物の管理は、改善点はいくつかあるが、こちら側の助言を聞きうけてくれるだろうという店の雰囲気がある。
- ・不衛生
- ・敷物がペーパータオルを引き裂いたもので、子犬が口にしてしまう危険性等を全く配慮していない。
- ・特に問題なのは、10週齢の子犬に常同行動がみられたこと。
- ・不衛生
- ・リクガメ、トカゲで常同行動がみられた。
- ・特に問題なのはフサオマキザル。フサオマキザルは、集団で暮らす動物にも関わらず、一頭で展示されており、飼養管理も決して行き届いているとはいえない。
- ・店員の動物への知識や関心が不足している。
「動物福祉は、科学的基礎で成り立つものである。」という定義を大前提に各グループともに、客観的かつ的確な評価をされていました。
今回は参加者のほとんどが動物行政に関わる自治体職員の方々でしたので、実際の日常業務に直結する内容だったためか、皆様、とても熱心に聴講・視察に取り組んでくださいました。また、講師への質疑でも、日々の仕事で感じている疑問や問題等を率直に忌憚なく述べられ、大変活気のある研修会となりました。研修会で、学んだことを現場に生かしていただくだけでなく、今回、知り合った研修会仲間との横のつながりを大切にしていただき、都道府県を超えた情報交換に繋がっていければ、それも一つの大きな成果となると考えています。
【参考】
RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)とは?
・1824年設立の世界最古の動物福祉団体で、寄付金だけで運営されている。
・すべての動物に対する虐待を防止し、福祉を推進して動物の苦痛を減らしていく活動をしている。
・伴侶動物、農業動物、実験動物、野生動物の4つの部局で30人の科学者を雇用。
・英国だけでなく、東ヨーロッパ・南アフリカ・東アジアでそれぞれの国の政府や獣医師会・動物福祉団体等と共に、動物福祉の推進活動をしている。
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