臆病な愛猫がベランダから脱走! 捜索は飼い主の声と半径100メートルがポイント
「大切なペットが脱走した!もう戻ってこないのでは……」そう感じている方に知ってほしい。逃げた犬や猫の帰還ストーリーと、経験者に聞く保護のアドバイスです。
夜中にベランダから
- 【逃げたペットについて】
- 名前:まろ
性別:メス
種類:白猫ミックス
年齢:1歳半
逃げた状況:2階のベランダにつながる窓が開いていて、夜中にベランダから脱走
保護までの日数:5日
オッドアイの白猫「まろ」(メス/7歳)は、生後間もなく飼い主のひとみさんが保護し、夫とともに大切に育てた“箱入り娘”だ。猫と暮らすのがはじめてだった夫婦は、まろが脱走してしまうことなど想像したこともなく、事件が起きた時にはパニック状態になったという。
ひとみさんは、脱走前日の夜のことをこう振り返る。
「姿を消した前日の夜、まろはいつものように、私と一緒に寝室に入ったんです。何も変わった様子はなく、ベッドで丸くなるまろにおやすみのあいさつをして眠ったことをよく覚えています」
ところが、朝になってみるとまろの姿が見えない……。
「夫と一緒に家中探したのですが、呼んでも出てきてくれません。30分ほど探したあと、『まさか!』と思い2階のベランダにつながる掃き出し窓を見に行くと、猫が通れるくらいの隙間が開いていたんです。おそらく、前日の夕方に洗濯物を干しに出たときに閉め忘れてしまい、夜中のうちにまろがベランダから外に出て行ってしまったのだと思います」
ベランダは隣家と距離があり、飛び移ることはできない。まろがすでにいなくなっているということは、そのまま2階から飛び降りていってしまったということを意味していた。
「たしかにまろは、ベランダで洗濯物を干していると、いつも一緒に出てきてベランダでくつろいでいました。でも、それまで一度もベランダから逃げるそぶりはなかったんです。おそらく、深夜のひとり運動会の勢いで飛び降りてしまったのだと思います」
ふだんは臆病で慎重なまろだが、深夜の運動会では、人が変わったかのように強気になることがあると、ひとみさんは明かす。
獣医師からのアドバイス
- 【いなくなった時にしたこと】
- ・警察、保健所への届け出
・迷子チラシを配りながら、目撃情報の聞き込み
・SNSで猫探しの情報収集
・半径100メートル以内の猫が行動するエリアを絞り込み捜索
「まろが逃げた!」その現実にパニックになったひとみさん夫婦は、まろの名前を呼びながら、近隣を探し回った。
「ちょうど通学中の小学生や散歩中の人が多い時間帯でした。2人で手あたりしだい猫を見ていないか聞いてまわりましたが、有力な情報は得られませんでした……。その日は2人とも仕事があったので、時間ギリギリまで捜索したのち、後ろ髪をひかれながら出社したんです。でも正直、仕事は手につきませんでしたね……」
まろ以外の猫と暮らしたことのないひとみさんは、「猫が脱走したときに何をすればいいのか」という知識がなく、インターネットで助けを求めた。
「SNSで通じていろんな方にアドバイスしてもらい、その日のうちに警察や保健所に届けを出すなど、猫探しの一般的な手順を踏みました。仕事から帰ったあとに迷子チラシも作って、聞き込みをしながら配りました」
かかりつけの動物病院にもチラシを持っていくと、獣医師がひとみさんに猫探しのアドバイスをくれた。
「脱走した猫は必ず家の近くに潜んでいて、危険な道は越えていないとおっしゃったので、地図を出し、家から半径100メートル以内で、水路と道路を越えないエリアを絞り込んで、毎日同じルートを朝と夕方と夜の3回、夫と探すことにしました」
ペット探偵の言葉
SNSでは、熱心にアドバイスをくれる人もいた。特に、自身も猫を捜索した経験がある人は、ひとみさんの気持ちに寄り添いながら、猫探しに役立つ情報をくれた。
「迷子になってから3日目に、ある方にペット探偵を紹介していただきました。人気の方で、予約は取れなかったけれど親切にいろいろ教えてくれたんです」
脱走から3日経ち、気落ちしていたひとみさんは、ペット探偵にかけてもらったある言葉で、心を持ち直すことができたという。
「それまでは、なんの手がかりも見つからず不安ばかりだったのですが、探偵の方に『家から出たことがない猫は、脱走しても5日〜10日は100メートル圏内にひそんで周囲の様子を伺っている。見つからないのは無事だということ』と、声をかけていただき、気持ちを落ち着けることができました」
ペット探偵は、捜索の際に心得るべき猫の習性についても詳しく教えてくれた。
「猫は鼻はあまり効かない代わりに耳がいいので、名前を呼びながら探しなさいと言われました。出てこなくても聞こえていれば、飼い主だと気づいて遠くに行かずにその場に留まっているのだそうです」
ひとみさん夫婦は、言われた通り名前を呼びながら、同じルートを探し続けた。しかし、まろの姿はどこにも見当たらなかった。
オッドアイの目が光り……
事態が収束したのは脱走から5日目の夜のことだった。その夜の捜索には、まろをかわいがっていたひとみさんの姉も駆けつけ、夫婦と姉の3人でいつものルートを回ったという。
「いつものようにまろの名前を呼びながら捜索していたところ、姉が赤と緑に光る猫の目に気づいたんです」
「まろだ!」ひとみさんの姉にはすぐにわかった。事前にひとみさんが、オッドアイの猫の目は、左右異なる色に光ることを伝えていたからだ。
「光る目があった民家の物置の陰にライトをかざしてみると、まろがこちらを見ていました。すぐにでも保護したかったのですが、民家の敷地はフェンスで囲われていたので、とり逃がしてしまうとかんたんには追いかけられません。そこで、まろを驚かさないように持ってきたごはんを見せながら少しずつ近づき、フェンスの隙間からまろに差し出したんです」
おなかが空いていたまろは、差し出されたごはんをひとみさんたちの前で食べ始めた。そのすきに、ひとみさんの夫が近づき、フェンスの上からそっと手を伸ばしてまろの体をつかんだという。
「夫が抱き上げると、まろは抵抗する様子もなく体をこわばらせて、じっとしていました。私たちは、まろが無事でとにかく安心しましたね」
まろを捕獲した民家は、ひとみさんの自宅から5分程度。獣医師やペット探偵が予想した通り、直線距離で50メートル以内の場所だった。
「おそらく、ずっと物置の陰に隠れていたのだけれど、私たちが呼ぶ声に気づいて出てきたのでしょうね。もしかしたら、捕まるのを待っていたのかもしれません。その日、家を出てから捕獲までは、たったの15分程度でしたから」
半径100メートルを重点的に
- 【今回の教訓】
- ・臆病な猫でも興奮して脱走することがある
・家猫は簡単に遠くには行かず、半径100メートル圏内にひそんでいる
・大きな道路や水路は超えない
・脱走から5日〜10日間は猫が行動範囲を広げるため見つけやすい
・夜の捜索には遠くまで照らせるライトがあると便利
・自分の家の猫の目が暗い場所で何色に光るのかを知っておくと、夜間も見つけやすい
5日ぶりにわが家に帰還したまろは、おなかを空かせ、疲れ果てた様子だったという。
「5日間、何も食べてなかったんでしょうね。体重は500グラムも減っていました。それでもケガや病気はなく、元気で帰ってきてくれてほっとしました。おなかいっぱいごはんを食べたあとは、迷子になっていた不安からか、たくさん私たちに甘えてきました。いつもは警戒している私の姉にもべったり甘えていたので、よっぽど心細かったんだと思います……」
まろが脱走してから5年半、あらためて当時の経験を振り返りながら、ひとみさんはこんな教訓を語ってくれた。
「まろがいなくなったときは『すぐに捕まえないと遠くへ行ってしまうかも』と焦ったけれど、『飼い猫は簡単に遠くに行かない』ということをあらかじめ知っていれば、もう少し落ち着いて探せたかもしれません。私が実践してよかったと思うのは、闇雲に探し回らず、猫が行動しそうなエリアに当たりをつけ、半径100メートル以内に絞って探すこと。名前を呼びかけながら探すことですね。それと、猫は夜行性なので夜に探す人も多いと思いますが、万が一脱走した時のため、自分のうちの子の目が暗い場所で何色に光るのかは知っておいたほうがいいと思います」
【前の回】マンションの4階から逃走、飛び降りて行方不明になった愛猫 11日間の大捜索
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