1年越しにやってきた念願のコイケル 警戒心が強くほえまくり、散歩がままならない!

スクスク成長し、すっかり美コイケルに。でも警戒心ギンギンで……(お母さん提供)

 愛犬は、時の人ならぬ「時のワンコ」として話題のコーイケルホンディエ(通称:コイケル)。日本では比較的珍しい犬種だ。ずっと犬をほしがっていた娘が本を見て一目ぼれし、お迎えを決めた。娘とは姉妹のように仲良く育ったが、お散歩がうまくできない、ほかの犬にほえるなど悩みも尽きず……。

 激アツ店長こと、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長、駅前で問いかける。

「オヤツがなければ歩かない。そんなお散歩、楽しいですか?」

(末尾に写真特集があります)

コイケルの子犬を迎えたい

「あたし、このワンちゃんがいい!」

 幼いころから犬と暮らすことを夢見て、おねだりしてきた女の子。お父さんの仕事は転勤が多いため、両親はずっと娘をなだめてきた。しかし、海外赴任から日本に戻って入居した集合住宅はペットを飼う環境が充実していた。「家族でたくさん話し合い、この機会にワンちゃんをお迎えしようと決めました」とお母さん。

「おそらくこれからも海外への転勤があるので、飛行機に乗れない短頭種は除き、どの犬種がいいかを図鑑を見ながら娘が選びました」

 冒頭の言葉とともに娘さんが指さしたのが、コイケル。MLB ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手の愛犬デコピンの登場で一躍有名になった、オランダ原産の中型犬だ。16世紀ごろには猟犬として活躍していたといわれている。とはいえ、自ら狩猟するわけではなく、長くフサフサの尻尾でカモをおびき寄せる役目を担ってきたそうだ。

 インターネットで探し、東京郊外のブリーダーに見学へ。「運動量はまあまあ必要で、少し警戒心が強いところがあるけれど、家族には従順な犬」と説明を受けた。娘さんがすっかり気に入ったこともあり、これから生まれる子犬の順番を待つことに。

 ようやく連絡が来たのは、それから1年ほどが過ぎたころだった。はやる気持ちを抑えきれずに会いに行くと、同じ母犬から生まれた子犬が2匹待っていた。「体格のいい子は娘が『おいで』と呼ぶと逃げてしまったのですが、小さい子は寄ってきて、甘えてひざの上で寝始めたのです。家がマンションということもあって小さい方が飼いやすいかなと、その子に決めました」とお母さん。

 当初男の子が来ると思っていたが、子犬は女の子だった。「男の子ならジェスにしようと考えていたのですが、女の子だったので『ジェシー』にしました」

きょうだいの中で一番小柄だったジェシーちゃん(お母さん提供)

初めての育犬は戸惑いの連続

 おうちにやってきたジェシーちゃん。初めての犬育てということもあり、お母さんは事前に色々と調べていた。「『子犬は怖いもの知らず』と思っていたのですが、ジェシーは月齢2カ月にもかかわらず警戒心が強く、物音や知らないものによくほえて……。思っていた子犬の感じとちょっと違う?と」とお母さんは当時の戸惑いを振り返る。

 また、トイレトレーニングもなかなかうまくいかなかった。一日中つきっきりでお世話をするお母さんは「初めてでどうしたらいいのかわからないことも多く、ジェシーのことでいっぱいいっぱいになり、ちょっと育犬ノイローゼのようになってしまいました」

 それでも娘さんは念願の「妹分」ができたことに喜び、毎日楽しそうに遊んでいた。ジェシーちゃんは甘がみもあり、かまれても痛くないよう娘さんは分厚いスキーウエアを着て遊んでいたという。ブリーダーから引き取るときに、「かんだら顔に息を吹きかけるとやめる」とアドバイスされた。そこで娘さんがやってみたところ、なんとジェシーちゃんは娘さんの鼻をガブっ! 

「驚いたみたいですが、それでジェシーをいやがったり怖がったりすることはありませんでした」

「おねーちゃん、遊んでー!」。仲良し姉妹(お母さん提供)

ほえることが増え、散歩がままならない

 成長とともに甘がみはしなくなっていったが、ほえるシーンが増えていった。「要求吠えと、見慣れないものを怖がってほえることが多かったですね」。道端の花、ゴミ袋、電柱、帽子をかぶった人……。お散歩の道中、ジェシーちゃんは辺り構わずにほえまくった。

 困ったお母さんは、出張トレーナーに来てもらうことに。「ほえたらおやつを使って気をそらす」とアドバイスされた。やってみたが「ジェシーはおやつをあげてもほえ続けていました」とお母さんは苦笑い。さらに数カ月後、今度は犬の幼稚園へ。ここでも「おやつを使って、お散歩中に飼い主の方に注意を引くように」と指導される。が、賢いジェシーちゃんは「おやつくれないなら歩かないもん!」と座り込んでしまう始末。

 それでもマジメなお母さんは、お散歩にはおやつ代わりのフードを大量に持参し、必死にジェシーちゃんの気を引きながら歩こうと頑張った。「ずっとかがんでおやつをあげながら中腰で歩くので、ものすごく疲れてしまって……。想像していた『犬のお散歩』のイメージとはかけ離れていました」

 ジェシーちゃんは、お父さんや娘さんが一緒のときや近所の仲良しのワンコたちがいると比較的上手に歩けるものの、お母さんだけだと歩いてくれない。「どうしても平日は私一人で連れ出すことが多く、困りました。正直、お散歩が楽しいと思えなくて」

 さらに月齢10カ月を過ぎ自我が目覚めたころから、ほかの犬に向かってほえかかるように。

「パピーのころからよく知っている人や仲良しのワンちゃんにはフレンドリーで、ワンプロも大好きなのですが、知らない犬やちょっと顔見知り程度だと激しくほえるようになってしまいました」。旅行先のドッグランでもほかの犬が入ってくるとほえ、貸し切りでないと遊べない状態に。

警戒レーダー発信中!? (お母さん提供)

 そうこうしている矢先、お父さんの海外転勤が決まる。「新しい環境で激しくほえるようになったら大変。どうにかしないと」と慌てたお母さんは、以前近所のワン友さんから聞いていたUGのことを思い出す。

「海外渡航まで3カ月。タイムリミットは迫っているけれど、思い切って高橋店長に相談しようと心を決めました」

後編につづく(6月24日公開予定) 

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高橋信行店長 プロフィール
物心がつく頃から動物関係の仕事に就きたいと考え、動物系の専門学校を卒業後、ペットショップに就職。いくつかの転職を経て、現在はUG DOGSアトラスタワー中目黒店店長。これまでカウンセリングは1300件以上、お泊まりで預かった犬は1000匹を超える。愛犬は、ジャック・ラッセル・テリア「ロイス」。
UG DOGS アトラスタワー中目黒店
住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/
店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。UGでは基本的に保護犬を預かる活動はしていません。

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中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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この連載について
だから犬って最高だ!
「育犬ノイローゼ」に陥った飼い主が藁をもつかむ思いで全国からやってくる「駆け込み寺」=UG DOGSアトラスタワー中目黒店。ハイパーな子犬たちと悩める飼い主を相手に日々奮闘する店長・高橋信行さんの実録ルポ。
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