もの言えぬ動物の代弁者として 適切な情報発信で動物虐待の抑止につなげていく
動物たちを虐待から守るために、2022年に立ち上がった「どうぶつ弁護団」(Animal Defense Team)。当連載では、どうぶつ弁護団に所属する弁護士・獣医師メンバーからの便りを紹介します。第1回は、細川敦史弁護士です。
規模の大小にかかわらず取り組んでいく
動物虐待の予防を目的とするNPO法人どうぶつ弁護団(Animal Defense Team)で理事長をつとめている、細川敦史です。
普段は兵庫県内で弁護士をしていますが、長年、ペットをはじめ動物の法律問題に関心を持っており、動物に関する事件や裁判をするなど、継続的に取り組んできました。そして、sippo内の『おしえて ペットの弁護士さん』の連載を通じて、ペットや動物の法律に関するさまざまな情報を発信しています。
今月から、個人の連載とは別に、新連載『どうぶつ弁護団からの便り』を始めさせていただくことになりました。今後、どうぶつ弁護団に所属する20名以上の弁護士・獣医師メンバーから、動物虐待に関する情報や、どうぶつ弁護団に対するそれぞれの熱い思い、ときにはかかわった事件の話などをお届けできるかと思います。
さて、どうぶつ弁護団は、2022年9月に法人設立、同年12月にホームページを通じて全国からの動物虐待情報の受付を開始し、実質的な活動をスタートしました。それからおよそ1年半が経過し、今年4月から活動3期目に入りました。
4月11日には、奈良地裁葛城支部において、どうぶつ弁護団の告発事案として初めて、有罪判決が出ました。
事案としては外猫1匹に対する傷害事件であり、社会的耳目を集める事件とまではいえないかもしれません。しかしながら、どうぶつ弁護団として、刑事告発を「必要かつ相当」と判断した事案については、規模の大小にかかわらず、これからも取り組んでいく方針です。
動物虐待抑止のための適切な発信
一般的に、刑事告訴・告発をした当事者の多くは、その事実を社会的に公表しません。被害者自身のプライバシーに関わる事柄であり、公表を望まないことが通常でしょうし、また、被疑者本人がその情報を見たとしたら、慌てて証拠隠滅などをしてしまうかもしれず、警察の捜査に支障が出る可能性があるからです。
同様に、どうぶつ弁護団も、告発した動物虐待事件について秘密にするという方針も考えられることです。しかしながら、どうぶつ弁護団の活動が誰にも知られていなければ、将来の動物虐待に対する抑止力にはならないでしょう。「ここでこのような動物虐待事件が発生した。どうぶつ弁護団が告発した。結果として適切な刑事処分につながった」という情報を広く周知することによって、動物虐待を予防するために一定の効果があるはずです。
また、どうぶつ弁護団の活動は、会員の皆様からの賛助会費に支えられています。そのため、刑事告発をするとは言っているけれど、実際には何をしているのか一切言えません、というのであれば、活動に賛同しにくいでしょうし、一旦は理念や趣旨に賛同して賛助会員になってくれたとしても、やめてしまうかもしれません。
どうぶつ弁護団が取り組んだ事件についてどのように情報発信するかは、なかなか難しい問題ではあります。ただ、動物は声をあげられないことや、被害動物のプライバシーというものは基本的に問題にならないと思われることから、動物の代弁者として、社会的に公表する意義がある場面が多いだろうと考えています。
具体的な事案ごとに、公表するか否か、また、公表するとした場合でもどこまでの情報を出すか、あるいはどのタイミングで出すかをよく検討したうえで、適切に発信していけるよう努めてまいります。
今年度は、メイン事業である虐待事件の告発に加え、賛助会員向けのセミナー配信を予定しています。また、秋にはシンポジウムを開催する方向で企画を進めています。sippoの新連載も、今年度からの新たな取り組みの一つであり、どうぶつ弁護団からの重要な情報発信の場として活用してまいりたいと思います。
sippo読者のみなさまにおかれては、今後もどうぶつ弁護団の活動を見守っていただきたく、また、引き続き、多くのご支援ご協力をお願い申し上げます。
(次回は5月22日公開予定です)
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